第4回高松国際ピアノコンクール 3次審査 第1日 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

香川県の高松市で開催されている、第4回高松国際ピアノコンクール(公式サイトはこちら)。

3月20日は、3次予選の第1日。

ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。

ちなみに、これまでの記事はこちら。

 

1次審査 第1日 (ネット配信)

1次審査 第2日 (ネット配信)

1次審査 第3日 (ネット配信)

2次審査 第1日 (実演)

2次審査 第2日 (実演)

 

 

樋口 一朗 Ichiro HIGUCHI (Japan, Fukuoka 1996-  age: 21)

 

W.A.モーツァルト アレグレットの主題による12の変奏曲 変ロ長調 K.500
小出稚子 委嘱作品 「うんぽこどんぽこ」
J.ブラームス ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 Op.25

 

1次、2次審査のソロ曲では表現力がいま一歩と感じた彼だが、室内楽では彼の細かすぎない素朴なおおらかさがそれなりに奏功している気がする。

ブラームスの四重奏曲、懐の深い表現とはいえないものの、元気があってなかなか悪くない。

 

 

ゲルマン・キトキン German KITKIN (Russia 1994-  age: 23)

 

W.A.モーツァルト デュポールの主題による9つの変奏曲 ニ長調 K.573
小出稚子 委嘱作品 「うんぽこどんぽこ」
R.シューマン ピアノ四重奏曲 変ホ長調 Op.47

 

1次、2次審査同様、タッチコントロールはきわめて緻密とはいえず甘さがあるが(フレージングの滑らかさや音量の配分、スタッカートの均質性などにややムラあり)、音色が美しく自然な歌心がある。

シューマンの感動的な四重奏曲、この曲の良さをよく出せているように思う。

 

 

イレイ・ハオ Yilei HAO (China 1996-  age: 21)

 

W.A.モーツァルト パイジェッロの「主に幸いあれ」による6つの変奏曲 ヘ長調 K.398
小出稚子 委嘱作品 「うんぽこどんぽこ」
J.ブラームス ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 Op.25

 

1次、2次審査では個性をしっかり発揮していた彼だが、今回のモーツァルトや委嘱作品、室内楽においては、彼得意のヴィルトゥオーゾ的華やかさを出し切ることができず、持て余している感がある。

ブラームスの四重奏曲も、先ほどの樋口一朗に比べ鈍重な印象の演奏になってしまっている。

 

 

伏木 唯 Yui FUSHIKI (Japan, Hokkaido 1991-  age: 27)

 

W.A.モーツァルト アレグレットの主題による12の変奏曲 変ロ長調 K.500
小出稚子 委嘱作品 「うんぽこどんぽこ」
G.フォーレ ピアノ四重奏曲 第1番 ハ短調 Op.15

 

彼女にはやはり表現力がある。

モーツァルトの変奏曲は、同曲を弾いた樋口一朗のような余裕のある音ではなくやや硬質だけれど、その表情付けはより繊細でニュアンスに富んでおり、タッチコントロールも緻密。

どちらを好むかは人それぞれだろうけれど、私はどちらかというとこちらのほうが好みである。

フォーレの四重奏曲でも、彼女の豊かな表現力がよく発揮されている。

 

 

鐵 百合奈 Yurina TETSU (Japan, Kagawa 1992-  age: 25)

 

W.A.モーツァルト グルックの「愚民が思うには」による10の変奏曲 ト長調 K.455
小出稚子 委嘱作品 「うんぽこどんぽこ」
R.シューマン ピアノ四重奏曲 変ホ長調 Op.47

 

こちらもよくコントロールされた良演だが、彼女の場合はやはり少し地味か。

シューマンの四重奏曲など、上記キトキンの同曲演奏よりも安定したタッチが聴けるのだが、真面目な演奏という印象であり、キトキンのようなパッとした華が感じられない。

アンサンブル曲では、こういった要素がより大事になってくるように思われる。

 

 

そんなわけで、第1日の演奏者のうち、私が本選に進んでほしいと思うのは

 

ゲルマン・キトキン German KITKIN (Russia 1994-  age: 23)

伏木 唯 Yui FUSHIKI (Japan, Hokkaido 1991-  age: 27)

 

あたりである。

次点で樋口一朗か。

1次、2次審査でかなりの存在感を示したイレイ・ハオは、ここへきて劣勢となってしまった。

室内楽があると、こうした番狂わせが起きやすいように思う。

 

 

ところで、小出稚子の委嘱作品「うんぽこどんぽこ」、ぶつぶつ不平を言うような不思議な曲想で、名曲かと言われるとよく分からないし、奏者による違いも出にくい音楽のような気がする。

ただ、うどんの生地をドンドンと勢いよく叩いてこねるような部分もあって、ちょっと面白い。

明日弾くマイボローダ(メイボローダ)は、2015年浜コン(浜松国際ピアノコンクール)では山根明季子の委嘱作品「イルミネイテッドベイビー」を大変個性的な解釈で演奏し、作曲者本人にも強い印象を残すほどだったため、今回の「うんぽこどんぽこ」でも独自の個性を見せてくれるかもしれない。

また、マイボローダの弾くシューマンのピアノ四重奏曲は、曲にぴったりの大変美しい演奏になりそう。

楽しみである。

そして、ぜひ本選に進んでほしい。

2015年浜コンでは、惜しくも3次審査で選に漏れ、本選に進めなかった彼。

3年前に聴きたくて仕方なかった本選での彼のラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を、今度こそ聴きたいものである。

 

 


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