第4回 高松国際ピアノコンクール 2次審査 第1日
【日時】
2018年3月17日(土) 開演 10:00
【会場】
サンポートホール高松 大ホール
【演奏・プログラム】
1. ダニイル・ツベトコフ Daniil TSVETKOV (Russia 1984- age: 33)
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第22番 ヘ長調 Op.54
ブラームス:ピアノ・ソナタ 第3番 ヘ短調 Op.5
2. チンホン・リ Jinhong LI (China 1994- age: 23)
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第28番 イ長調 Op.101
ショパン:アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ Op.22
3. 樋口 一朗 Ichiro HIGUCHI (Japan, Fukuoka 1996- age: 21)
モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第4番 変ホ長調 K.282
ショパン:ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調 Op.35 「葬送」
グノー/リスト:「ファウスト」のワルツ
4. サン・ジッタカーン San JITTAKARN (Thailand 1992- age: 26)
ショパン:前奏曲 変イ長調 遺作
ショパン:即興曲 第1番 変イ長調 Op.29
ショパン:即興曲 第2番 嬰ヘ長調 Op.36
ショパン:即興曲 第3番 変ト長調 Op.51
モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第1番 ハ長調 K.279
ショパン:スケルツォ 第4番 ホ長調 Op.54
5. ゲルマン・キトキン German KITKIN (Russia 1994- age: 23)
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第17番 ニ短調 Op.31-2 「テンペスト」
ブラームス:幻想曲集 Op.116
6. イレイ・ハオ Yilei HAO (China 1996- age: 21)
ハイドン:ピアノ・ソナタ 第6番 ト長調 Hob.XVI : 6
シューマン:ピアノ・ソナタ 第3番 ヘ短調 Op.14
7. ダリア・パルホーメンコ Daria PARKHOMENKO (Russia 1991- age: 26)
ハイドン:ピアノ・ソナタ 第48番 ハ長調 Hob.XVI : 48
シューベルト:ピアノ・ソナタ 第19番 ハ短調 D958
8. ツィーハン・グォ Zhiheng GUO (China 1997- age: 20)
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第11番 変ロ長調 Op.22
ショパン:バラード 第2番 ヘ長調 Op.38
リスト:バラード 第2番 ロ短調 S.171
9. 伏木 唯 Yui FUSHIKI (Japan, Hokkaido 1991- age: 27)
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第7番 ニ長調 Op.10-3
ブラームス:6つの小品 Op.118
10. 平間 今日志郎 Kyoshiro HIRAMA (Japan, Osaka 1998- age: 20)
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第21番 ハ長調 Op.53 「ワルトシュタイン」
シューベルト:即興曲 変イ長調 Op.142-2
リスト:ハンガリー狂詩曲 第2番 嬰ハ短調
11. 鐵 百合奈 Yurina TETSU (Japan, Kagawa 1992- age: 25)
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第27番 ホ短調 Op.90
シューマン:ピアノ・ソナタ 第3番 ヘ短調 Op.14
香川県の高松市で開催されている、第4回高松国際ピアノコンクール(公式サイトはこちら)。
1次審査はネット配信で聴いていたのだが(こちらのサイト)、2次審査は土日のため、ついに高松まで聴きに来てしまった。
もしドゥミトリ・マイボローダ(ドミトリー・メイボローダ)も古海行子も1次審査で落ちてしまったならば、高松はあきらめて小林愛実の岐阜公演か(その記事はこちら)、もしくは石井楓子の神奈川公演か(その記事はこちら)、どちらかのコンサートに行こうかと思っていた。
しかし、マイボローダも古海行子もめでたく1次審査を通過したので、高松に来ることにしたのだった(ただし2人の出番は翌日だけれど)。
ちなみに、これまでのネット配信を聴いての感想記事はこちら。
今回は、2次審査の第1日。
やっぱり、当然ながら生で聴くと音が良く、各奏者の演奏の違いも分かりやすい。
ダニイル・ツベトコフ。
力強い音が出ているけれど、フォルテ(強音)がやや頭打ちのような音色に聴こえることがある。
ピアノ(弱音)も、部分的には美しいのだが、それほど練られていない箇所もある。
チンホン・リ。
ベートーヴェンのこの後期ソナタ特有の繊細な情感、静謐な感動がほとんど感じられない。
第2楽章のリズムも甘い。
ただ、難所と思われる終楽章再現部の右手連続四度、ここの滑らかさは見事だった。
ショパンのほうも歌心に欠ける。
やはり彼には1次審査のバーバーのような曲のほうが合っている。
樋口一朗。
技術的にけっこう安定しているし、トリルの弾き方もきれいなのだが、いかんせん表現が少し平板に聴こえる。
リストなどなかなか充実した音が出ているのだが、惜しい。
サン・ジッタカーン。
クセの強いピアニストで、おどけたようなルバート(テンポの揺らし)がときに聴かれ、好みが分かれそう。
私としては、例えばショパンのスケルツォ第4番にしても、春の訪れを思わせるさわやかでまっすぐな演奏が好きである(山本貴志や齊藤一也のような)。
また、弱音部では美しく繊細なコントロールも聴かれるが、フォルテ部分は表情が硬く感じられることが多い。
ゲルマン・キトキン。
特に「テンペスト」のほうは、目の覚めるような演奏というわけではないにしても、ロシア風のしっとりしたメランコリックな味わいがあってなかなか良い。
ただ、細部では左手など詰めの甘い箇所もある。
イレイ・ハオ。
技巧的に優れており、表現に華もある。
シューマン風というよりは華麗な協奏曲風という感じではあるが、これはこれでありだと私は思う(このソナタ第3番はもともと「管弦楽のない協奏曲」だった)。
ダリア・パルホーメンコ。
超絶技巧曲ではない、彼女に合った曲をしっかり選べており、演奏も悪くない。
ただ、そのぶん技巧面以外で他を引き離すほどのプラスアルファの魅力を発揮できているかというと、どうか。
ハイドンでは軽やかさが、シューベルトではみずみずしい情感がもう少し欲しいところ。
ツィーハン・グォ。
技巧的に優れているし、うまいのだが、曲によってはしっくりこない部分もある。
表現にもう少ししなやかさがあると良いか。
伏木唯。
音色はやや硬質だが、表現力が素晴らしい。
ベートーヴェンもブラームスも、成熟した説得力のある表現となっている。
こういう演奏ができる人は少ないように思う。
例えばOp.118-6も、ペダルを決して濁さず各音を明瞭に分離しているのに、ぶつ切れになることなく、ブラームス特有の幻想を雄弁に表現している。
平間今日志郎。
やや乾いた音だが、ベートーヴェンやリストにふさわしい、充実した力強いフォルテが聴かれる。
特にリストにおいては、この「音」は重要だと思う。
また、速いパッセージも緻密にコントロールされていて、派手なだけの演奏にはなっていない。
リストのカデンツァで出てきた大きなグリッサンドも、見事だった。
鐵百合奈。
一曲入魂して真剣に音楽と対峙していることが演奏からも曲前・曲間の様子からも伝わるし、解釈も誠実な感じで良いのだが、あと一歩食い足りなさも感じる。
上記の伏木唯だとか、あるいは冒頭に書いた石井楓子のような、一皮むけた表現を今後期待したい。
そんなわけで、第1日の演奏者のうち、私が3次審査に進んでほしいと思うのは
ゲルマン・キトキン German KITKIN (Russia 1994- age: 23)
イレイ・ハオ Yilei HAO (China 1996- age: 21)
伏木 唯 Yui FUSHIKI (Japan, Hokkaido 1991- age: 27)
平間 今日志郎 Kyoshiro HIRAMA (Japan, Osaka 1998- age: 20)
あたりである。
そして、第2日にはついにマイボローダが聴ける。
彼の生演奏を聴くのは初めて。
楽しみである。
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