ドイツのミュンヘンで開催された、2017年ARD国際音楽コンクールのピアノ部門が、終わった。
これまで、ネット配信を聴いて(こちらのサイト)感想を書いてきた(とは言っても、ファイナルの演奏動画がアップされた今でも、セミファイナルはまだアップされていないという残念さ…)。
とりわけ印象深かったピアニストについて、忘備録的に記載しておきたい。
ちなみに、これまでの記事はこちら。
Kazuya Saito, Japan
甘さを抑えた淡白な演奏ではありながらも、ほのかな情感が感じられる。
清冽、という言葉が似合う。
特に、ベートーヴェンの「ワルトシュタイン」ソナタの第2、3楽章、ブラームスの「ヘンデルの主題による変奏曲」が印象的。
Honggi Kim, Südkorea
スマート系技巧派。
かなりのレベルのテクニックを持ち、さらには情緒的な表現にも長けている。
彼が優勝してもおかしくなかっただろう。
ベートーヴェンのソナタ第28番、シューマンのソナタ第2番、ラヴェルの「鏡」、いずれも良かった(「道化師の朝の歌」はやや危なっかしかったが)。
JeungBeum Sohn, Südkorea
今大会の優勝者。
安定した技巧と、パワフルな音楽づくりが魅力。
パワフルといっても決して力んではおらず、常に余裕のある音を出しており、存在感がある。
特に協奏曲においては、これは強みだろう。
ベートーヴェンの「熱情」ソナタ、チャイコフスキーの協奏曲第1番が印象的。
Fabian Müller, Deutschland
今大会の第2位。
そして、私の中での、今大会の個人的なMVP。
きわめて端正でみずみずしい音楽性をもつピアニスト。
知と情のバランスが良く取れている。
美しく、それでいて甘ったるくはない、自然な音色。
細部までしっかりとコントロールされた表現。
テクニック的にはキレッキレというわけではなさそうだが、それでも大したものである。
ベートーヴェンのソナタ第30番、ブラームスの「3つの間奏曲」op.117、バルトークの「戸外にて」、そしてファイナルでのベートーヴェンの協奏曲第3番、いずれも素晴らしい演奏である。
Cheng Zhang, China
少しリヒテルを思わせるような、独特な存在感のある演奏をする彼。
完成度としてはまだまだの印象だが、細部の表現を詰めれば、2015年浜コンに出ていたドミトリー・マイボロダのような、魅力的な個性派ピアニストになりそうである。
ベートーヴェンの「テンペスト」ソナタ、シューマンの「フモレスケ」、いずれも個性的で面白かった。
Su Yeon Kim, Südkorea
端正で美しい演奏をするピアニストだが、やや優等生的なところがあり、強い個性を主張しないためか、クライバーンコンクールでも今回も、割と早い段階で落とされてしまった。
しかし、ベートーヴェンの「ワルトシュタイン」ソナタの第2、3楽章、シューマンの「フモレスケ」、プロコフィエフのソナタ第3番、いずれも良演である。
Junhyung Kim, Südkorea
パワフルなピアニスト。
テクニシャンでもある。
かっちり安定した演奏で、安心して聴ける。
プロコフィエフのソナタ第3番など、かなりの迫力。
ベートーヴェンの「告別」ソナタ、シューマンの「フモレスケ」も良い。
以上のようなピアニストが、印象に残った。
今回の聴衆賞はFabian Müllerとのことであり、私の個人的なMVPと同じである。
先日のクライバーンコンクールでも、聴衆賞と私の個人的なMVPとが同じであった(Rachel Cheung)。
私は、どうやら「一般的な聴き手」であるらしい。
ARD国際音楽コンクールは、2011年に、それまでメジャーなコンクールで奨励賞くらいまでしか取れていなかったClaire Huangci(クレア・フアンチ)を、第2位に選出してくれたコンクールである。
そして今回(2017年)も、審査結果は個人的におおむね納得のいくものだった(セミファイナルは未聴だが)。
もともと印象の良かったこのコンクール、今回さらに株が上がった(あくまで、私の中での勝手な印象)。
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