私はこのブログやツイッター等で、「依存症は病気」と言う時があります。


DSM-5という、世界基準の精神疾患診断統計マニュアルの中に依存性という項目があるように、位置付けは精神疾患になります。

 

そういう意味では病気なのですが、依存症という分野において、私が「病気」と言うとき、もっと厳密に言うと「病気」そのものの意味とは違う表現の意図で言っています。

 

そもそも依存症には、色々な原因の考え方があります。

 

①Moral Theory(モラル説)-依存症は弱さやモラルの逸脱によるものという考え方。

 

②Disease Model(病気モデル)-病気であるという考え方。AAの12ステップはこの考え方を採用。

 

③Psychological and Behavioral Theory(心理的、行動学的モデル)-トラウマなどの経験、環境に起因するという考え方。

 

④Epigenetics (エピジェネティクス)-遺伝子の働き方に起因するという考え方。

 

⑤Global Economics and System Structure Model-社会的構図や経済の影響によるという考え方。

 

⑥Neurobiology Model(神経生物学)-脳内のドーパミンシステムの機能不全という考え方。

 


この中で、現在、世界的に精神医療で広く採用されているのは⑥のNeurobiologyモデルです。


日本の精神科医やサポートワーカーが、依存症を「病気」と呼ぶのは②のDisease modelではなく、この⑥の脳の機能不全という意味で言っていると思われます。

 

私もそうです。

 

日本語だとわかりにくいのですよね。英語だと②と⑥の二つの差が明確なのですが、日本語はニュアンスがまた違う言語なので。

 

脳の機能不全という考え方をとっているので、医者は、その機能不全から来る「薬物の抑えられない渇望」や「離脱症状」にフォーカスして治療をします。私たちサポートワーカーも、渇望をどのように抑えるのか、脳の回路を変えるのを助ける、認知療法やピアサポート、多角的に支援しています。

 

また、Alcohol Anonymous (AA)に代表される自助会では、②のDisease modelを採用しています。病気である事、自分ではコントロールができない事、病気の前では無力である事を認識し、そこからスタートし回復しようとする考え方です。


一方で、司法の場では、依存症の人が犯罪に関わり被害者がいたり社会的損害をもたらしている場合、依存症を病気と位置付けて減刑することは少ないので、Disease modelは採用されにくいと言えます。



どのモデルを採用するかはそれぞれの場所の目的や役割によって違うといえるでしょう。