最近仕事で労務関連のネット検索をしていると、「静かな解雇」「静かな退職」、あるいは「怒りの退職」という言葉に行き当たることがあります。
静かな解雇
- 「ステルス解雇」は長期的には逆効果 | Business Insider Japan
- 巧妙にあなたを退職に追い込む「静かな解雇」とは。知っておくべき5つのサイン | ハフポスト LIFE
- 静かな退職への企業の対抗策「ステルス解雇」、その大きすぎるリスク | Forbes JAPAN 公式サイト
怒りの退職
静かな退職
上記記事を参考に私なりの解釈を加えると、結局はこういうことなのかな、なんて思います。
静かな解雇(ステルス解雇):
- 直接解雇を言い渡すことはないが、次第に働くことが耐えがたい状況に誘導し、自主退職するように仕向ける(会社側もしくは上司側の)行為
静かな退職:
- 退職はしないが、会社に対して諦めの感情を抱きながら勤務し続けること
自らの中で「仕事」の占める割合を最低限に減らし、要求される最低限のことしかやらず、相応の対価(給料)すらもらえればそれでよしと自らを納得させることで、何とか感情の均衡を保っている状態
怒りの退職(リベンジ退職):
- 会社に対して怒りの感情を抱いて退職すること
- 退職はしないが、会社に対して慢性的に怒りの感情を抱きながら勤務し続けること
今の仕事を辞めたいとは思っているが、それより好条件の職場が見つからないので、(実際には潰れたら困るはずなのに)「こんな会社早く潰れろ」という怒りの感情を慢性的に抱きながら勤務し続けている状態
まずは「静かな解雇」ですが、これは解雇行為そのものではなく、退職させようと仕向ける手法を指します。
日本では当たり前のように行われているリストラ手法です。
先に挙げたハフポスト記事では、具体例として下記があげられています。
1. 上司に重要な会話を避けられている
2. 欲しかったチャンスに他のチームメンバーが指名される
3. 同僚が昇進・昇給しているのに自分はしていない理由を上司が明確に説明できない
4. 無理な「業績改善プログラム」を設定される
5. 相談なく、仕事量や仕事への期待値が変更される
程度の差こそあれ、サラリーマンをやっている以上、このような目に遭遇したことは結構多いかもしれません。
私も管理職になるかならないかのくらいの時期に、サイコパス上司にこのような嫌がらせを執拗に受け続け、昇進が遅れたことがあります。
その頃にも転職したいと思ったことはありましたが、
- 部署を転々としていた(JTCにありがちなローテーション)ので、転職時にアピールできるような専門性がなかった
- 当時は管理職経験がなく、管理職ポジションで転職するのはほぼ不可能だった
- 時期的にも妻の妊娠(切迫早産で入退院を繰り返していた)と重なり、本腰を入れた転職活動をする気になれなかった
ということもあり、踏み切れませんでした。
サイコパス上司が私の成果を横取りし、お気に入りの子飼い(私の後輩)の成果だと偽って管理職に登用した後は、私は完全に仕事への意欲を失くしていました。
かといって会社を辞めるわけにもいかない。
仕方なく私が取った対抗策は、究極の消極策でした。
つまり、「仕事をやらない」という選択です。
当時は毎月100時間近く残業していましたが、後輩に先を越されたのが判明した時点で突然毎日定時退社することにしたのです。
当時はそこまで露骨なリストラは実施されていなかったし、大手JTCメーカーは組合員を絶対に解雇できない。
それを逆手にとったわけです。
自らの中で「仕事」の占める割合を最低限に減らしてしまえば、後輩に先を越されても万年平社員であっても腹も立たない、というわけです。
受験少年院にいた時と同じく、理不尽な目に晒されても決して怒らず、ただひたすら般若心経を唱えてやり過ごせばよい、これも人生の修行の一部かな、と。
つまりは、「仕事のできないオジサン」としてのキャリアパスを自ら選択しようとしたわけです。
しばらくして、別の上司から呼出しを受けました。
叱責されるのかと思いきや、あと1年だけ我慢しろ、それまでは会社を辞めないでくれ、と言われました。
数か月後に、サイコパス上司は海外赴任になりました。
サイコパス上司が海外にいる間に、別の上司が私を管理職に登用してくれたため、私のキャリアは首の皮一枚でつながりました。
つまり、私自身の経験を挙げて何が言いたかったのは、 「静かな退職」への対抗策をしての「静かな解雇」は、退職を伴わない更なる「静かな退職」を生み出すだけで、会社にとっては何の利益にもならないわけです。
あるいは、ここで生み出されるのが「静かな退職」でないとしたら、あるいは退職を伴わない「怒りの退職」なのかもしれません。
「静かな解雇」によって、会社を辞めることのできる人材(優秀な人材)は、さっさと会社を辞めてしまいます。
そしてそうではない人間は、「静かな退職(要求される最低限のことしかやらない)」あるいはその裏番組である「怒りの退職(四六時中会社を呪い続ける)」のいずれかの選択をしつつも、結局は「退職」そのものはせずに会社に居座り続けるわけです。
そして、仕事への意欲を失くした人たちだけが会社に残ることになります。
解雇も退職も伴わない「静かな解雇」と「静かな退職」の応酬は、会社終焉シナリオの第2コーナーあたりなのかな、なんて思います。