首都圏中学受験は、既に昨年から受験者数が前年比で減少していると言われています。
そして今年はその傾向が更に顕著です。
前年比で受験者が増える学校よりも、減る学校の方がはるかに多いと予測されています。
おそらくは来年以降もその傾向は続くと推測されます。
子どもの数が年々減少しているのですから、受験者総数が減るのは当たり前なのかもしれません。
子どもの総数に対する中学受験率が減ることはないのでしょうけど
大手塾の生徒数も減少しているそうです。
SAPIXには低学年から入れておかないと4年生からは入れない、などというのは過去の話です。
中学受験大手塾の生徒数が今後も大幅に増加するとは考えにくく、そうなると生産者(教育産業)よりも消費者(子どもと保護者)の方が立場が優位になります。
つまり、生産者(塾)が消費者(生徒と保護者)を誘導するのではなく、消費者が生産者を誘導するようになります。
難関中学への合格を熱望し、大学も東大か医学部、少なくとも早慶が最低ラインだと思うご家庭は、 とりあえず自分の子どもをSAPIXに入れておけばよい話なのかもしれません。
そしてS50以上(YN60)以上の成績がコンスタントに取れるのであれば、今の中受のあり方に異論を唱える必要もなかろうかと思います。
しかし、実際にはそうでないケースの方が圧倒的に多いはずです。
ほとんどの家庭は、少なくとも中学受験の検討段階においては、
- 小学校生活や稽古事と両立させながら可能な範囲で勉強させる
- 可能ならば中学受験をし、自分の子どもに中学受験が向いていないことが分かれば高校受験に切り替える
- (公立中進学はできれば避けたいと思っている場合でも)必ずしも難関校ありきではなく、自分の子どもの実力レベルに合った勉強をさせ、それ相応の中学に行ければそれでよい
と思っているはずです。
が、一旦大手塾に入れたが最後、ガチで勉強することを余儀なくされます。
- 少しでも高い偏差値の中学を目指すことを強要、つまり子どもには過剰な勉強を、 親には法外な支出を強要
- 少しでも高い偏差値を目指すように煽っておきながら、いざ入試本番になると「どんなに偏差値を下げてでも必ずどこかの中学には合格させるべき」「全敗したら親の責任」などと脅迫
- 疲弊しきった子どもは、受験結果に関係なく、どこかしら線が細く、何に対しても受け身になりがち
- 子どもだけでなく、毎月のクラス分けテストに親も翻弄されて疲れ切っている
中学受験を終えた多くのご家庭は、「もっと子どもに勉強させるべきだった」ではなく、「もっと子どもに小学生らしい生活を送らせながら、無理のない範囲で中学受験をさせてあげたかった」と思っているはずです。
これもずっと言い続けていることですが、所詮中学受験なんて、下記さえやれば、よほどの難関校以外は理論的には何とかなるはずです。
- 小5までは算数のみ中受用の勉強をし、他教科は小学校の勉強を1年先取り(それでも中学受験塾のカリキュラムよりは格段にゆるいはず)
- 小6に1年間で入試演習
しかし、実際にはそんな大手塾は存在しません。大手塾に通塾せずに中学受験に臨むのも、多くの家庭にとってはなかなか勇気の要る話です。
そんな状態が、子どもの数の減少のみならず、教育虐待の社会問題化、親の世代交代(「氷河期世代」から「ゆとり世代」へ)に伴い、変わる潮目に来ているのかな、と思います。
言葉を選ばずに言いますと、子どもに今中学受験をさせている親たちは、「氷河期世代の勝ち組」の人たちです。
就職難、結婚難の中で世帯を持ち、中学入試をさせられるだけの経済力を持ち、かつそれに値する学力レベルの子どもがいるわけなのですから。
ただし、今後は、中受親世代も「氷河期世代」から「ゆとり世代」へと世代交代し、考え方も変化していくことが予想されます。
厳しい競争をくぐり抜けてきた氷河期世代の親は、「組分けテスト」に子ども本人以上に一喜一憂し、シャカリキになる傾向があります。
しかし、ゆとり世代の親は、受験戦争でも就職戦線でも氷河期世代ほどは苦労していないため、子どもの「組分けテスト」に氷河期世代の親ほどは血眼にならないような気がします。
・今後子どもの数は減り、受験はそれほど厳しくなくなる
・年々減少していく一方の若手新卒を企業が奪い合う「売り手市場」になるので、就職も厳しくなくなる
・「売り手市場」になれば、学歴は今ほど重要視されなくなる
・以前にもまして「教育虐待」が問題視されている
・親世代も世代交代が進み、今ほど受験にエネルギーを注ぐ気にならない親が増加する
どう考えても、今や「ガチ受験」はオワコン化しつつあり、今後は「ゆる受験」を望む親が増加すると思われるのです。