マスコミの性接待が問題になっていますが、私がかつて勤務していた商社でも、さすがに女子社員を「上納」なんてことは(私の知る限り)なかったものの、セクハラまがいの性接待は当たり前のように行われていました。
飲み会で女性社員が胸や尻を触られるなんて当たり前のことでしたし、そんなことは文句を言うこと自体がおかしい、という雰囲気でした。
男性社員とて、飲み会で脱がされたり触られたり、潰れるまで飲まされるなんてことは当たり前でした。
お客さんを吉〇(今年の大河ドラマの舞台)や、海外出張時にそういう場所に連れて行くのは、商社マンとしての当たり前の仕事とみなされていました。
私も、あるメーカーの課長から、散々な目に合わされたことがあります。
例によって、先輩達が誰も担当したがらないクセのある顧客を私に押しつけてきたわけなのですが、とにかくすごかったです。
それ以降も、会社の人間関係とかパワハラ上司とのトラブルはありましたが、何とか耐えることができたのは、何が起こっても「この顧客よりはマシ」と思うことができたからです。
仕事上で意地悪をされるとか怒鳴られるとかなどというレベルではありませんでした。
とにかく酒癖が悪かったので、酒席で脱がされたり触られたり殴られたりなんてのも当たり前でした。
会計する時に領収書を発行してもらったところ、「会社のカネではなく、お前のカネで払え」と言われ、領収書を破り捨てられたこともあります。
この顧客と一緒に海外出張に行った時のことです。
空港で荷物をピックアップし、ポーターを呼んで荷物をタクシーで運ぼうとしたのですが、「お前が自分で運べ」と言われました。
仕方なく、私が自分と彼のスーツケースを両方運んだのですが、その間、他の観光客が見ている前で、遅いだの何だの言われて蹴飛ばされました。
そして夜の宴会の後は、例によって吉〇まがいの店(置屋)に行きました。
彼が休んでいる間、私は(現地駐在員の間で)「待合室」と言われる近くのバーに行きました。
「待合室」には、私と同じように客を待っている他の商社の駐在員や出張者が何人かいて、私は彼らと一緒に時間を潰していました。
すると、しばらくして、置屋の女将が物凄い形相をしてバーに飛び込んてきて、何やら現地の言葉でまくし立てています。
現地語が分かる方(その場にいた他社の駐在員)の話だと、公安と何やらトラブルになったそうです。
置屋に公安が来ること自体は決して珍しいことではなく、大抵の場合は女将が穏便に済ませてくれます。
しかし今回は違ったようです。
これも現地語の分かる方から聞いたのですが、事もあろうに、私と一緒に現地に来た顧客が同室の女性に暴力をふるい、その女性が大声を出し、たまたま居合わせた公安の耳に入ってしまった、とのことでした。
訳が分からないまま、私も公安から事情聴取を受けることになりました。
現地語が分かる方にも同席してもらい、通訳をお願いしました。
結局カネ(おそらくは罰金という名の賄賂)を払えば今回は見逃してくれるという話になり、私が持っていた現金数百ドルを渡して事なきを得ました。
翌日に、私の会社の駐在員から滅茶苦茶怒られたのは言うまでもありません。
もうこんな客は出張に連れてくるな、と言われました。
その顧客はと言えば、こんなことがあったにも関わらずまるで悪びれた様子もなく、日本に帰ってからも相変わらずの態度でした。
日本に帰ってからは、その顧客メーカーのロゴのついた便箋を手渡され、「俺の代わりに出張報告を書け」と言われました。
私が数百ドルを払うのを目の前で見ていたにもかかわらず、それを彼が私に払うことはありませんでした。
しかも、この件は全面的に私の粗相とされ、それ以降、私は海外出張に行くことを禁止されてしまいました。
その後に行った出張は、会社辞める直前に行ったパキスタン出張のみです。
商社で働いている間、私はこの件については考えないようにしてきましたが、むしろ転職した後に怒りがこみ上げてきて、日中突然体が震えたり、夜眠れなくなったりするようになりました。
私自身メーカーに転職し、商社の人を使って仕事をする立場になったわけですが、あんなひどいやり方で商社をこき使う人なんていませんでした。
やはりあれはおかしかったのだ、と思うと余計に腹が立ってきました。
転職して1年以上経ったある日の夜中、また怒りで体が震えて眠れなくなってしまいました。
これ以上我慢していたら頭がおかしくなると思いました。
既に件の海外出張からは何年も経過していましたが、彼からハラスメントを受けた旨を、彼が勤務するメーカーのホームページの問合せ窓口に投稿しました。
翌日に、そのメーカーの人事部から連絡があり、面談をすることになりました。
彼や前職の人たちと鉢合わせしたくなかったので、そのメーカーの(東京本社ではなく)横浜支社で面談することになりました。
彼からされてきたことを色々話しましたが、海外の置屋や公安の件の詳細は、数ある出来事の中で一番ひどかったにも関わらず、どうしても話せませんでした。
それでも、彼のやってきたことが明らかにコンプライアンス違反であることは、先方の人事も納得してくれたようです。
しばらくして彼は地方の工場に転属になりました。
私がこうすることで、前職の商社がこのメーカーからの商売を失うことはさすがに申し訳ないと思っていたのですが、幸いそういうことはなかったようです。