こんばんは!まずは皆さん、乾杯っ!![]()
今回ご紹介するのは、神奈川県の日本酒「菊勇(きくゆう)雨降大山(あふりおおやま)純米酒」です。実はこの一本、私が自分から「飲んでみたい!」と手に取ったお酒ではないんです。
皆さんは「頒布会(はんぷかい)」という仕組みをご存じでしょうか。酒屋さんと数ヶ月分の契約を結んでおくと、そのお店のチョイスで毎月おまかせのお酒が定期的に届く、という制度です。プロの目利きが選んでくれるので、自分では絶対に選ばないような銘柄と出会えるのが面白いところ。そして、とある酒屋さんの頒布会で送られてきたのが、この「菊勇 雨降大山 純米酒」だったというわけです。
正直に白状すると、届いた瞬間は「うーん、これは自分ではちょっと選ばないタイプかも…」というのが本音でした。クラシックな佇まいの純米酒で、普段フルーティで華やかなお酒を好む私にとっては、少し渋く映ったんですよね。でも、こういう"思いがけない一本"こそ、頒布会の醍醐味。せっかくの出会いですから、大切に味わいたい。
とはいえ、思い返せば私が日本酒の奥深さに目覚めたのも、こうした"自分の好みの外側"との出会いがあったからこそなんです。甘くて華やかなお酒ばかりを追いかけていては、いつまでたっても世界は広がりません。プロが「まあ騙されたと思って飲んでみて」と背中を押してくれる頒布会は、そんな私の視野をぐっと広げてくれる、ありがたい存在。今回もきっと何か新しい発見があるはず——そう自分に言い聞かせながら、この一本と向き合うことにしました。
そこで思い出したのが、いつもお世話になっているワインダイニング「GALA BAR MIZUNO」のオーナーソムリエ・水野さん。花陽浴よりも藍の郷が好き、というちょっと通好みな水野さんなら、この骨太なクラシック純米酒をきっと気に入ってくれるはず。というわけで、一本まるごと持参して、水野さんと一緒に昼飲みで楽しむことにしたのでした。さて、自分では選ばなかったこの一本、どんな表情を見せてくれるのでしょうか![]()
菊勇 雨降大山 純米酒とは?
まずは造り手のお話から。「菊勇」を醸すのは、神奈川県伊勢原市にある吉川醸造(きっかわじょうぞう)株式会社です。創業は大正元年(1912年)という、100年以上の歴史を持つ蔵元。神奈川県内では希少な、昔ながらの造りを守り続けてきた老舗です。伝統銘柄が、今回いただく「菊勇(きくゆう)」ですね。
この蔵、実は近年とてもドラマチックな歩みを見せています。コロナ禍での経営の危機を経て、2020年に新たな体制での再スタートを切り、「古きよき伝統と、革新的な技術の融合」を掲げて生まれ変わったんです。2021年には、モダンで華やかな新ブランド「雨降(あふり/AFURI)」を立ち上げ、今や国内外のコンクール(フランスのFeminaliseや英IWCなど)で受賞を重ねる、注目の蔵へと大きく飛躍しています。まさに、伝統と革新が同居する蔵なんですね![]()
さて、この「雨降(あふり)」という印象的な名前。これは、伊勢原市にそびえる霊峰「大山(おおやま)」に由来しています。大山は別名を「雨降山(あふりやま)」とも呼ばれ、古くから雨乞い・山岳信仰の対象として崇められてきた、丹沢山地の名峰。「雨降大山」という銘柄名には、この霊峰への敬意がまっすぐに込められているわけです。
ちなみに大山は、江戸時代には「大山詣り(おおやまもうで)」として庶民の信仰を集め、多くの参拝客で大いに賑わった歴史ある霊山。その荘厳な山の恵みを一滴一滴に宿したお酒だと思うと、なんだかありがたみが増してきますよね。神奈川にこんな由緒あるお酒があったとは、恥ずかしながら今回初めて知りました。地元の名峰の名を冠したお酒というのは、それだけで物語を感じます。
そして、味を決定づける最大の特徴が仕込み水。この蔵では、雨降山(大山)から湧き出る地下伏流水を使っていて、これがなんと硬度150ほどという、国内では希少な「硬水」なんです。日本酒の仕込み水は軟水が主流ですが、ミネラル豊富な硬水で仕込むと、発酵が力強く進み、キリッと引き締まった、飲みごたえのある酒質になると言われています。灘の「男酒」が硬水で知られるように、硬水仕込みは骨格のあるお酒を生むんですね。軟水仕込みのやわらかな酒とはまったく違うアプローチで、飲む前からその個性がにじみ出ています。
今回の「菊勇 雨降大山 純米酒」は、そんな蔵の伝統ブランド「菊勇」のクラシックな純米酒。裏ラベルには「芳醇辛口の逸品」と記されています。原料米には山形県産の酒米「出羽燦々」を用い、精米歩合は65%、アルコール度数は16度としっかりめ。そして私がいただいたこの一本は、火入れをしていない「生酒」バージョン。フレッシュな生の魅力と、硬水仕込みの力強さ、その両方が楽しめる贅沢な一本というわけです。頒布会でなければ、きっと一生出会わなかったであろう硬水仕込みのクラシック純米。これはこれで、素敵な運命の巡り合わせかもしれません。飲む前の予習だけで、すっかり期待が高まってしまいました。
菊勇 雨降大山 純米酒をチェック!
緑瓶に金のラベル、「雨降大山 純米酒」の力強い筆文字と菊のマーク。
肩には青い「生酒」シールが光ります。
ワイングラスに注ぐと、ほぼ無色透明で澄んだ輝き。
生酒らしいみずみずしさが伝わってきます。
裏ラベルには純米酒・精米歩合65%・アルコール16度・720ml、製造者は吉川醸造(神奈川県伊勢原市)。
「芳醇辛口の逸品」「国内有数の硬水である雨降大山の地下伏流水で…」の一文が誇らしげです。
スペックは以下の通り。
| 銘柄 | 菊勇 雨降大山 純米酒(生酒) |
|---|---|
| タイプ | 日本酒(純米酒/芳醇辛口) |
| 蔵元/産地 | 吉川醸造株式会社/神奈川県伊勢原市(大正元年・1912年創業) |
| 原料米 | 山形県産「出羽燦々」/原材料:米・米麹(国産) |
| 精米歩合 | 65% |
| アルコール分 | 16度 |
| 仕込み水 | 雨降山(大山)の地下伏流水(硬度約150の硬水) |
| 内容量 | 720ml |
| 参考価格 | 720ml 税込1,700円前後 |
菊勇 雨降大山 純米酒を飲んでみての評価
正直、あまり期待していなかった…というと失礼ですが、自分では選ばない一本なだけに、どこか身構えていたのは事実です。クラシックな純米酒、しかも硬水仕込みで16度の芳醇辛口。フルーティで軽やかなお酒が好きな私にとっては、少し手強い相手かもしれない。
でも、目の前には水野さん、そしてこのあと出てくるという裏メニュー。期待と不安を半分ずつ抱えながら、まずはグラスにそっと注いで、ひと口いってみます。さあ、頒布会が選んでくれた縁の実力やいかに。
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重い一撃の奥に、山の気品。
まず香りは、意外にも穏やか。ツンとくるようなアルコール感はなく、ほんのりバナナを思わせる、やわらかな含み香が鼻をくすぐります。これは飲みやすそうかも…と油断したのも束の間、口に含んだ瞬間、印象はガラリと変わりました。
やってきたのは、「どしーん!」という旨辛さ。旨味と辛味が一体となって、口の中いっぱいにずっしりと広がっていきます。噛んで味わえるような、濃厚で芳醇なボディ。16度という度数も相まって、まさに飲みごたえ抜群です。軽やかな酒に慣れた身には、最初こそ「おっ、強いぞ」と身構えるほどの押しの強さ。これぞ硬水仕込みの実力なんだな、と実感しました。
ところが——ここからがこのお酒の真骨頂です。強くて重いだけかと思いきや、飲み込んだあとに残るのは、驚くほど上品で綺麗な余韻。硬水由来のミネラル感が、口の中をすっと整えてくれるおかげか、あれだけパワフルだったのに後味はどこまでも澄んでいるんです。
力強さと上品さ、豊潤さと綺麗さ。相反する要素が一杯の中で見事に同居している、この二面性にすっかりやられてしまいました。華やかさと品格を兼ね備えた、深い余韻。「渋いなぁ」と思っていた第一印象は、飲み進めるうちにすっかり「かっこいいなぁ」に変わっていました。隣で味わっていた水野さんも「これは旨いね」と何度も頷いていて、通好みの舌をしっかり唸らせていたのが印象的でした。
そして、この日の昼飲みを完璧なものにしてくれたのが、GALA BAR MIZUNOの裏メニュー・天ぷら! 水野さんが特別に揚げてくださったんです。
海老に椎茸、茄子、オクラ…サクサクの天ぷら盛り合わせ。これがまた、菊勇とドンピシャなんです。
天ぷらの油のコクとうまみを、この芳醇辛口の旨辛さが受け止めつつ、硬水仕込みならではのキレのある後味が、口の中の油をすっと洗い流してくれる。次の一口がまた進む、まさに理想的な食中酒でした。水と酒と料理、そのすべてが土地の恵みでつながっているかのようで、しみじみと幸せな気持ちになりました。強い料理にも負けない骨太さと、それでいて全体を上品にまとめる綺麗さ。この二面性が、食事の場面でこそ真価を発揮するんですね。自分では選ばなかったこの一本、まさかここまで惚れ込むとは。頒布会って、本当に侮れません![]()
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今日はアニメ映画でペアリング!
この、伝統と革新が同居し、力強さの奥に品格を秘めた一本に合わせたいのは、アニメーション映画『犬王(INU-OH)』(2022年/湯浅政明監督)です。古川日出男さんの小説『平家物語 犬王の巻』を原作に、脚本を野木亜紀子さん、音楽を大友良英さん、キャラクター原案を松本大洋さんが手がけた、異色のミュージカル・アニメーションなんです。
舞台は室町時代。生まれつき特異な姿を持つ能楽師・犬王と、盲目の琵琶法師・友魚(ともな)が出会い、二人でその時代のスターへと駆け上がっていく物語です。何がすごいって、この映画、能や平家物語という「伝統」芸能を、まるでロックコンサートのような「革新」的な演出で描き切っているところ。琵琶がエレキギターのように鳴り響き、能舞台がロックのステージへと姿を変える、その熱狂たるや圧巻で、初めて観たときは思わず前のめりになってしまいました。
この「古きよき伝統と、革新的な表現の融合」というテーマは、まさに吉川醸造が掲げるコンセプトそのもの。100年以上の伝統を守りながら、新体制で大胆に生まれ変わったあの蔵の姿と、犬王たちが古典を革新的に塗り替えていく熱量とが、真っ直ぐに響き合うんです。そして、力強く激しいロックの轟音の奥に、たしかな古典の品格と哀切が宿るこの作品の二面性は、どっしり旨辛なのに上品で綺麗な、あの硬水仕込みの味わいと見事に重なります。
さらに、この映画は「忘れられてしまった者たちが、鮮烈に蘇る」物語でもあります。歴史の陰に消えていった芸能者たちにもう一度光を当てるその眼差しは、"自分では選ばなかった渋い一本"が、味わってみたら大当たりだった——という、今回の私の頒布会体験とも、どこか通じるものがある気がするんです。先入観をいったん脇に置いて、まっさらな気持ちで浸ってほしい——お酒も映画も、そこは同じですね。骨太で品格のある一杯を片手に、この熱狂のロックオペラに身を委ねてみてください。きっと、鳥肌が立つはずですよ![]()
下戸の酒好き評価点
※下戸の酒好き評価は味の良し悪しを計るものではありません。
下戸で酒初心者の私があくまで個人的な感覚で評価したものになります。
★★☆
★★★ … 下戸にも酒初心者にもオススメしたい
★★☆ … 下戸、酒初心者に丁度良く幅が広がる
★☆☆ … 下戸、酒初心者には少し理解が難しい
菊勇 雨降大山 純米酒の価格&どこで買える?
気になるお値段ですが、この「菊勇 雨降大山 純米酒」は720mlで税込1,700円前後(一升瓶なら3,400円前後)と、純米酒としてはかなり良心的でお手頃な価格帯です。この飲みごたえと、霊峰・大山の硬水で丁寧に仕込まれたという背景を考えれば、コストパフォーマンスはかなり優秀。日常の晩酌で、ちょっと骨太なお酒を楽しみたいときに、気兼ねなく手が伸ばせる価格なのが嬉しいですね。デイリーに飲める価格帯で、これだけの飲みごたえと物語性まで味わえるのは、本当にお値打ちだと思います。
購入先についてですが、吉川醸造のお酒は、蔵と直接お付き合いのある全国の酒販店のほか、地元・伊勢原市のふるさと納税の返礼品としても取り扱われています。私のように酒屋さんの頒布会で思いがけず出会う、というのも一興。プロが選んでくれるからこそ、自分の好みの枠を飛び越えた一本と巡り会えるので、マンネリ気味の方にはぜひおすすめしたい仕組みです。
もし店頭で見当たらない場合は、楽天市場やAmazonといった通販でも、菊勇や、姉妹ブランドの華やかな「雨降(AFURI)」シリーズを探すことができます。生酒はデリケートなので、購入の際はできれば冷蔵便で、そして開封後は早めに楽しむのがおすすめです。下にリンクを貼っておきますので、気になった方はぜひチェックしてみてくださいね。伝統と革新が同居する、神奈川の実力蔵の味を、ぜひ体験してみてください![]()
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