geezenstacの森 -19ページ目

geezenstacの森

音楽に映画たまに美術、そして読書三昧のブログです

ホルヘ・ボレット

リスト作品集

 

曲目/

1.愛の夢 第3番    S541/3    4:54

2.2つの演奏会用練習曲 第2曲 小人の踊り     S145/2    3:15

3.3つの演奏会用練習曲 第3番 “ため息”    S144/3    5:39

4.葬送曲    S173/7    11:32

5.ラ・カンパネラ    S141/3    4:51

6.2つの演奏会用練習曲 第1曲 森のささやき    S145/1    4:03

7.半音階的大ギャロップ    S219    4:18

8.スペイン狂詩曲    S254    13:51

9.ワーグナー~リスト タンホイザー序曲    S442 *   16:27

 

ピアノ/ホルヘ・ボレット

 

録音/1972/08/21-24

   1973/07/16*   RCAスタジオA、ニューヨーク

P:ジョン・ファイファー

E:ベルナルド・ケヴィル、エドウィン・ベグレイ*

 

仏SONY CLASSICAL  88883717462(RCA原盤)

 

 

 手元にあるのはフランスでリリースされた「PERFECT PIANO COLLECTION LA DISCO THEQUE IDEALE PIANO」と題されたボックスセットに収録されている一枚です。LP時代は発売されたことがなく、2001年に初めてCD化されました。そのため本来のタイトルは「Jorge Bolet – Rediscovered - Liszt Recital」というタイトルで発売されています。下がその時のジャケットです。

 

 

 このリストの作品集を収録した1973年には「ラフマニノフによるトランスクリプション集」というアルバムも録音されているのですが、そちらはレコードで発売されました。RCAはどうしてアルバム一枚分の録音を収録していたのに発売しなかったんでしょうかねぇ。不思議です。やがて1975年からボレットはデッカと録音契約を結びせっせとリストのアルバムを録音して次々と発売していきました。まあ、RCAは発売のタイミングを逸したともいえます。まあ、この時代はRCA自体が迷走していましたからさもありなんといったところでしょう。

 

 こういう響きはボレットの演奏するリストには適しているのでしょうか。シャープな立ち上がりと、強靭なアタックがリストに向いているからです。ボレットといえばデッカの専属のイメージがあったのですがRCAにも録音していたんですなぁ。知りませんでした。でもって、これが中々易しいタッチで最初の愛の夢からほれぼれする演奏になっています。そして驚きは、「ラ・カンパネラ」です。まあ、フジコ・ヘミングの演奏が話題になりましたが、あれはかなり個性的な演奏です。ボレットは正統派と言えるタッチの「ラ・カンパネラ」で、聴き惚れてしまいました。うーん、この一枚は掘り出し物です。

 

 

 

 

広重の三都めぐり

 京絵図大全・大坂細見図・御江戸大絵図で歩く 京・大坂・江戸・近江 (古地図ライブラリー)

 

出版:人文社

 

 

 江戸時代後期に活躍した浮世絵師、安藤(歌川)広重の「東都名所」から二十一景、「京都名所之内」から十景、「浪花名所国会」から十
景、「近江八景之内」から八景を紹介。作品が描かれた場所の歴史や文化、風俗等を交えて解りやすい解説が付いています。また、広重の絵図と絵図に描かれた界隈の現在の地図を記載。その地を訪れた際に役立つ見どころも紹介しているのでガイドとしてもご利用いただけます。 

古地図と広重の絵図で京都・大坂・江戸をめぐる旅をぜひ楽しんでください。---データベース---

 

 歌川広重といえば「東海道五十三次」なんでしょうが、少なからず肉筆画も書いていますし、「名所江戸百景」などの大作もあります。ただ押し並べて江戸近郊の作品が多く知られていますが、京都や大阪を描いた作品はあまり知られていないのではないでしようか。このブログでも数多く彼の作品を取り上げていますが、関西ものは多分「近江八景」ぐらいでしょう。

 

広重は生涯に東海道五十三次をはじめ、次のような作品を残しています。

 

『東海道五十三次』、 錦絵 55枚 (53の宿場と江戸と京都)複数版あり
『金沢の月夜』、『阿波の鳴門』、『木曽雪景』、それぞれ大錦3枚続
『金沢八景』、 8枚
『京都名所』、『浪花名所』、それぞれ 10枚揃物
『近江八景』
『江戸近郊八景』
『東都名所』
『不二三十六景』 『冨士三十六景』
『六十余州名所図会』、 70枚揃
『木曽街道六十九次』、 揃物
『甲陽猿橋之図』、『富士川雪景』
『名所江戸百景』

 

 これだけ全国各地を描いていながら、広重は生涯に旅行したのは武蔵、甲斐、相模、安房、上総ぐらいで、広重が旅をした記録を探しても、現存するのは天保12年4月の甲斐旅行、天保15年の上総旅行、嘉永5年の上総~安房旅行の僅か3点の日記のみで、東海道を旅した記録は一切残っていません。そういう意味では広重は空想の中で、全国を旅したといえます。

 

 広重の絵画の特徴は肉筆画はそんなことはないのですが、浮世絵の版画は鳥観図の画面が多いのが分かります。これは広重が参考にしている全国の名所図会がこの俯瞰の図で描かれているからでしょう。この本ではそれらの作品の中から

 

京都(十景)

大坂(十景)

江戸(二十一景)の三都に加えて

近江(八景)

の解説と共に周辺の現在の様子も紹介されています。そして下は広重が活躍した当時の京の地図です。ここから10景が選ばれています。京は北部3点、南部7点を描いています。

 

 

 南部の中でもにぎやかだったのは「島原出口之柳」です。言わずと知れた京の遊廓です。ここは今も当時の景観を感じる事が出来るようで、名所案内によく案内されています。

 

 

現在の島原大門と柳

 

 江戸時代の大阪については個人的にはあまり詳しくありません。下は収録されている大阪の図は弘化年間のもので、やはり広重マーの活躍していた茂大のものです。北は左側ですから頭の中で変換して眺める必要があります。

 

 

 商都大阪という事で下は堂島のコメ商いを描いたものを代表として取り上げました。図柄から「セッツ名所図会」を参考にしているのが分かります。

 

堂じま米あきない

 

 広重の絵の最大の魅力は何といっても描かれている人物の表情だと私は思っていて風景画に描かれている人々の華やいだ心情やおどけた表情などなど。それらが情景と相まって とても情緒的な処に心惹かれます。

 

 江戸については切絵図をはじめ様々な地図が残っていますから省略します。江戸は東都名所という事で東海道沿いと、江戸城の東側の名所が抜粋されています。面白く感じたのは「神田明神東坂」で、ドラマの「仁」を彷彿させる神田台地の「神田明神」を描いている図です。

 

 

 この本では各地の地名の由来を知ることもできます。

 

・京都島原・・移転の際の騒ぎが島原の乱のようだったとか

        廓の構えが島原の城塞のようだったとか。

・京都八瀬・・壬申の乱で天武天皇の背に矢が当たって

         傷を窯風呂で治した。

・浪花八軒屋・・その名の通り八軒の家(旅籠)があった。 

         八軒屋の古写真が広重の絵と同じ場所だろうと思われる

・浪花堂島・・・薬師堂の島が由来で米相場の役割を担っていた場所

・浪花道頓堀・・道頓って安井道頓さんという人から取った名前で

          あの川の開削をした人らしい

・東都浅草・・広くて草深い武蔵野の中にありながら

        そこまで草深くない場所だった。つまり、浅い草・・。

 

 広重が描いた場所と同じ風景が残っている所が少なくてそれは残念ではあるんですが同じ場所とみられる明治期に撮られた小沢健志さんという写真家個人所蔵の古写真が当時のリアルな風景を感じさせてくれて古写真好きとしては 絵とはまた別な感情が湧き上がってきて感慨深く見入ってしまいました。

 

 おまけのような形で「近江八景」も収録されています。この図も縦横変換が必要ですが、東海道の大津淑を中心に名所が描かれています。

 

 

 特に有名なのは「石山秋月」と題された一枚で、紫式部が「源氏物語」を執筆した寺としても有名です。

 

 

 現在でもこの地は景勝地として有名で、小生も今年はここを訪れています。

 

最近ではこの本、4バーゲン本としても販売されています。要するに再販指定から外れているんですな。そんなことで最初から半額で購入できます。

 

 

 

 

お気に入りの

マリアージュティー

 

 

 

 大手メーカーでは無いので、一般の店では売っていなかったと思いますが、小生はこのマリアージュティーがお好みでした。紅茶なんですが、チョコレートの香りのするスッキリとした無糖紅茶なのです。大手メーカーではこういう商品はありませんでした。今年は結構紅茶飲料のブームのようで、テレビでも盛んにコマーシャルされていますがなかなかお気に入りの紅茶は見つかりません。

 

 そんな中出会ったのがこの春菜プロデュースの紅茶です。原材料はインド産のアッサム100%これに香料が少々加わっています。この商品の特徴はアッサム茶葉の芳香性が味わえる紅茶ということです。ほんのりとチョコレートの香りを合わせてあり、フランスでお馴染みのマリアージュティーとなっています。大手メーカーではこういう風味の紅茶は出されていません。あまり冷やさずにそのまま飲むと1番香りが立ちます。ただしこの商品は既に製造中止になっています。残念。今は残してあるお茶を楽しんでいます。

 

 

 もともと紅茶好きということで、コーヒーはほとんど飲みません。やはりお茶が好きなんでしょう。今朝も朝はウバティを楽しみました。

 

橋口五葉のデザイン世界

夏目漱石本の装幀から新板画へー」

 

 

 本に関係する仕事をしている関係上、本の装幀には結構興味があります。そんな関係で今碧南市の藤井竜吉現代美術館で開催されている「橋口五葉のデザイン世界展」に出かけてきました。橋口五葉といえば、初期の夏目漱石の作品の装幀を担当したことぐらいは知っていました。でもそれ以上の詳しい事はほとんど知りませんでした。今回この展覧会のチラシを見つけ、そこに夏目漱石本の装幀から新版画へというサブタイトルがついていたので、興味を持った次第です。この碧南市へは同じ愛知県に住んでいながら、今まで1度も足を踏み入れたことがありませんでした。我が家からだと、愛知県の東の端にある豊橋市に出かけるのとほとんど時間的距離は一緒です。(^_^;)

 

 

 上が夏目漱石の「吾輩は猫である」の初版本の装丁です。この展覧会では旧字の装幀を使っています。初版は上、中、下と三部に分けて出版されていました。元々は上だけの内容で雑誌の「ホトトギス」に連載されていたものです。1905年(明治38年)1月、『ホトトギス』にて発表されたのだが、好評を博したため、翌1906年(明治39年)8月まで連載は継続しましたた。上、1905年10月刊、中、1906年11月刊、下、1907年5月刊が発行されたのです。『吾輩ハ猫デアル』は、装幀デザインの世界でも名作といわれています。漱石の「美しい本を作りたい」という意向を受け、趣向を凝らして作られた上編は、五葉の装幀家としての記念すべきデビュー作です。表紙の上部には魔よけの金箔、いわゆる「天金」が施されたほか、アンカットによる装幀のため、ペーパーナイフを使いながら読み進める必要があり、発売当時は不良品として返品された事例もあったようです。はじめは1巻で完結する予定であったためか、扉には上編の文字が見当たりません。
 

 上編の爆発的なヒットを受けて、中編と下編の追加刊行が決まりました。撫子の前に鎮座する猫とその両側に細い線でタイトルがレタリングされた中編の表紙を見た漱石は「落ち着きがある」と感じ、上編よりも高い評価を与えています。3冊の中ではこの中編のジャケットだけが紺地の紙に白で印刷されており、特に際立っています。また、下編のジャケットには猫とタンポポが描かれ、表紙にも円の中に猫が登場します。しかもその猫には、箔押し加工が施されています。3冊のジャケット、表紙、背表紙、扉、奥付それぞれが異なった意匠にもかかわらず、全体の統一感を意識したデザインに仕上げています。
3冊ともに変わらないのは、裏表紙に空押しされた漱石の文字です。しかし、この文字も円形にデザインされていて、細部に至るまで五葉の神経が行き渡っているのがわかります。

 

 

 

 

 

 

坊ちゃんは中編で最初は(単行本)の『鶉籠』に所収されています

 

 

 この橋口五葉は1881(明治14)年、鹿児島市に生まれています。1899(明治 32)年に上京、当初日本画家の橋本雅邦に人門しますが、同郷の黒田清輝の勧めで洋画に転じ、白馬会洋画研究所を経て翌年東京美術学校に入学します。長兄の貢は九州時代に夏目漱石の教え子であった関係から、その兄を介して夏目漱石と知り合い、「吾輩ハ猫デアル」の装禎を手がけることとなります。その後も日本近代文学を代表する作家の装禎を次々と手がけます。1907(明治40) 年東京勧業博覧会に油彩画による屏風絵《孔雀と印度女》を出品し二等賞、第一回文展に《羽衣》が入選。そして1911(明治44)年には三越呉服店の懸賞に応募し《此美人》が一等に選ばれます。その後、自身の浮世絵研究に基づき新板画の制作に取り組み、《髪梳ける女》などの傑作を生み出した。1921(大正10)年41歳で病没。装幀に見られる職人との協業や素材へのこだわり、画面を花々や小動物のモチーフで埋め尽くす華やかな装飾性は、その後の絵画や版画の仕事にも息づいていきます。同時代のヨーロッパの美術潮流であるアール・ヌーヴォーと、琳派や浮世絵などの日本の伝統。それらが、五葉の美意識のもとに融合し、唯一無二の作品世界を生み出しているのです。この展覧会では50点以上の装丁本が展示されています。


 装幀に見られる職人との協業や素材へのこだわり、画面を花々や小動物のモチーフで埋め尽くす華やかな装飾性は、その後の絵画や版画の仕事にも息づいていきます。同時代のヨーロッパの美術潮流であるアール・ヌーヴォーと、琳派や浮世絵などの日本の伝統。それらが、五葉の美意識のもとに融合し、唯一無二の作品世界を生み出しているのです。

 

 展覧会構成5章で構成されています。


第1章 『吾輩ハ猫デアル』
 夏目漱石は小説家としての出発点である『吾輩ハ猫デアル』を世に出すにあたり、美しい本を出したいとの願いを持っていました。五葉はこれまでになかった装幀でこの願いにこたえ、今でも日本の近代装幀史に大きな足跡を残す名作が誕生しました。

 

泉鏡花著作の装丁 

浮草-ツネゲーネフの装丁 1908



第2章 五葉と漱石
 五葉と漱石の交流は俳句雑誌『ホトトギス』から始まります。『ホトトギス』に新風を吹き込んだ五葉の挿絵の数々、さらに漱石との関わりから生まれた装幀の数々をご紹介します。青磁を思わせる色合いの表紙に鉄線の模様が浮かぶ『鶉籠』、表紙に漆塗りを施した『草合』から、スエードが装幀に用いられている『行人』まで、五葉が手掛けた漱石本が一堂に会します。

 



 

第3章 五葉装幀の世界
 五葉はブックデザインという言葉もまだない時代に先駆的な仕事を残しています。今見ても新しい、華やかなデザインで包まれた泉鏡花の著作の数々。表紙や見返しだけでなく、本文にまで装飾が施された『浮草』。本を立体としてとらえた五葉の装幀は、手のひらに収まる小さな世界に美しさが凝縮されたものとなっています。




 

第4章 五葉の画業
 鹿児島で日本画を、さらに東京美術学校で西洋画を学んだ五葉は、それらを吸収して新たな表現を追究していきます。油彩で描かれた衝立形式の《孔雀と印度女》や、装飾的な花鳥イメージあふれる《黄薔薇》などの絵画作品はそうした探求の成果が結実したものです。
石販を三十五度刷り重ねた非常に贅沢なポスター《此美人》、絵葉書や雑誌といったグラフィックの数々からは、五葉の華やかなデザインの世界が浮かび上がってきます。

 



此美人 1911

孔雀と印度女 1907

 

第5章 新板画へ
五葉は自ら浮世絵の研究を重ね、さらに九州・耶馬渓への旅を契機に自ら版画を手掛けることとなります。生前制作された作品は13点と僅かながら、今でも美しい輝きを放っています。スティーヴ・ジョブズも愛したと言われる珠玉の作品の数々をご紹介します。

 

髪梳ける女 1920

化粧の女 1918

 

黄薔薇 1912

 

 

橋口五葉(はしぐち・ごよう、1881-1921)

 

 

 会場では五葉のデザインの用紙とともにスタンプが用意されていてもらえます。

 

 

 また、ブックカバーも用意されていて、こちらも好きなものを一枚もらう事が出来ます。「吾輩は猫である」をいただきました。これ、図録のサイズで出来ていますから当然図録を買えという事なんでしょうなぁ。裏面は双六になっています。

 

 

 この展覧会8月31日まで開催されています。この碧南市藤井達吉現代美術館の真向かいに「ここのえみりん」の千夜区営カフェがあり、そこで「五葉のモダンデザインぷりん」を提供しています。

 

 

スペシャル・クワトロⅡ

<没後50年記念 ショスタコーヴィチ・メモリアル>

 

ショスタコーヴィチ没後50年記念②/ショスタコーヴィチの命日

曲目/

ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第2番嬰ハ短調 作品129*
シチェドリン:ロシア写真集より

 第2曲「モスクワ中のゴキブリ」

 第3曲「スターリン・カクテル」
ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調 作品77*

 

ヴァイオリン/荒井英治

指揮/高関健

演奏名古屋フィルハーモニー交響楽団

 

 
 8月9日はショスタコーヴィチの命日でした。その日に彼と同じ年齢、68歳でステージに立ったのは、名フィル首席客演コンサートマスターの荒井英治。1日で2曲の大協奏曲に挑むというスペシャルな公演が実現しました。間に挟まれたシチェドリン作品も荒井英治のチョイスです。
 
 今回のプログラムはよく考えられたものです。下の編成表を見てもわかるように今回演奏される曲目には、ショスタコーヴィッチとしては珍しくトロンボーン、トロンボーンが含まれていません。なおかつ、これら2曲のバイオリン協奏曲は共にダビッド・オイストラフが初演しています。
 
 トップに演奏されたのはバイオリン協奏曲第2番の方です。これは1967年に作曲された作品で、どちらかと言うと初作コビッチ裁判年の作品といえます。曲としては第1番の方が有名で、第二番の方は、晩年の作風を表していると言っても良いでしょう。第一楽章からして、重い雰囲気の弦のアンサンブルで始まります。今回指揮をした高関健さんは指揮棒を使わない演奏でした。これは最近の傾向なんでしょうか弦楽中心と言うこともあるのかと思いますが、その方が的確な指示を出せていたような気がします。このスペシャルクワトロシリーズは舞台の後方の席をチョイスしています。その方が指揮者の指示の出し方がよくわかるからです。ただ今回はバイオリンの協奏曲ということで、ソロ奏者は背中を見ることになりますかまぁしょうがないでしょう。短い序奏の後すぐにバイオリンのソロが始まります。
 
 バイオリンの荒井氏は名フィルの特別コンサートマスターも務めていますから、名フィルではお馴染みです。そしてこのショスタコーヴィチを得意にしていると言うことで、ショスタコービッチ特有のやや冷めた透明感のある音色で切々と歌い上げています。このステージの広報の席は、演奏者との距離も近いということで音色はストレートに聴こえてきます。
 
 この第2番が先に演奏されたのは多分、曲の構成で第3楽章がタムタムと打楽器の絡みがあるものの、本来の3楽章構成であったからでしょう。

 

トランペット、トロンボーンのない編成でハープが2台あります。

 

今回のスタージ構成

 

客席の入りはまあまあでした。

 

 下は服部百音、井上和義、NHK交響楽団の演奏です。ここでも井上氏は指揮棒を使わず演奏しています。

 

 

  休憩の後はオーケストラのみの演奏でシチェドリンの「ロシア写真集」から2曲という珍しい曲が演奏されました。弦楽合奏のための作品です。まあ、ユーモアたっぷりの作品で聴いていて思わずその景色が目に浮かびます。2曲目に演奏された「スターリン・カクテル」はスターリンを完全に皮肉っていて、コントラバスによる弦を叩くというパフォーマンスやスターリンのお気に入りの「黒い瞳」の旋律が弱々しく演奏されるのにも笑ってしまいます。

 

 

 

 そして、締めはヴァイオリン協奏曲第1番です。この曲はこの1週間で取り上げているショスタコーヴィチの中期の作品に関連するもので、1947-8年に完成されています。4つの学習から構成されているこの曲は、交響曲の第9番と10番の間にある作品で、性格から言えば、本来は交響曲の系列に組み込まれるべきものだったのではないでしょうか。前作の交響曲第9番では、ジダーノフ批判と言う痛烈な政治介入がありました。ショスタコーヴィチはそれに対するアンチテーゼのような形でこの作品を作曲しています。トランペットとトランボーンは廃棄されていますが、ここではチェレスタが効果的に使われています。作品の構成的には交響曲第8番のような悲劇的な雰囲気の学習から始まります。そして交響曲第8番の第4楽章を連想させるチェロとコントラバスが奏でるパッサカリアの主題によってバイオリンの変奏が演奏されます。今回の演奏では、真一は譜面台を置いて固たる演奏に心がけていたような気がします。それもあって、見事な初したコビッチが演奏されていました。それは終演後の拍手喝采にも現れていました。

 

アンコールに応える荒井氏

 

こちらの演奏は、コパチンスカヤヤリスマンソンズベルリン・フィル演奏で聴いてみましょう。