スペシャル・クワトロⅡ<没後50年記念 ショスタコーヴィチ・メモリアル> | geezenstacの森

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スペシャル・クワトロⅡ

<没後50年記念 ショスタコーヴィチ・メモリアル>

 

ショスタコーヴィチ没後50年記念②/ショスタコーヴィチの命日

曲目/

ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第2番嬰ハ短調 作品129*
シチェドリン:ロシア写真集より

 第2曲「モスクワ中のゴキブリ」

 第3曲「スターリン・カクテル」
ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調 作品77*

 

ヴァイオリン/荒井英治

指揮/高関健

演奏名古屋フィルハーモニー交響楽団

 

 
 8月9日はショスタコーヴィチの命日でした。その日に彼と同じ年齢、68歳でステージに立ったのは、名フィル首席客演コンサートマスターの荒井英治。1日で2曲の大協奏曲に挑むというスペシャルな公演が実現しました。間に挟まれたシチェドリン作品も荒井英治のチョイスです。
 
 今回のプログラムはよく考えられたものです。下の編成表を見てもわかるように今回演奏される曲目には、ショスタコーヴィッチとしては珍しくトロンボーン、トロンボーンが含まれていません。なおかつ、これら2曲のバイオリン協奏曲は共にダビッド・オイストラフが初演しています。
 
 トップに演奏されたのはバイオリン協奏曲第2番の方です。これは1967年に作曲された作品で、どちらかと言うと初作コビッチ裁判年の作品といえます。曲としては第1番の方が有名で、第二番の方は、晩年の作風を表していると言っても良いでしょう。第一楽章からして、重い雰囲気の弦のアンサンブルで始まります。今回指揮をした高関健さんは指揮棒を使わない演奏でした。これは最近の傾向なんでしょうか弦楽中心と言うこともあるのかと思いますが、その方が的確な指示を出せていたような気がします。このスペシャルクワトロシリーズは舞台の後方の席をチョイスしています。その方が指揮者の指示の出し方がよくわかるからです。ただ今回はバイオリンの協奏曲ということで、ソロ奏者は背中を見ることになりますかまぁしょうがないでしょう。短い序奏の後すぐにバイオリンのソロが始まります。
 
 バイオリンの荒井氏は名フィルの特別コンサートマスターも務めていますから、名フィルではお馴染みです。そしてこのショスタコーヴィチを得意にしていると言うことで、ショスタコービッチ特有のやや冷めた透明感のある音色で切々と歌い上げています。このステージの広報の席は、演奏者との距離も近いということで音色はストレートに聴こえてきます。
 
 この第2番が先に演奏されたのは多分、曲の構成で第3楽章がタムタムと打楽器の絡みがあるものの、本来の3楽章構成であったからでしょう。

 

トランペット、トロンボーンのない編成でハープが2台あります。

 

今回のスタージ構成

 

客席の入りはまあまあでした。

 

 下は服部百音、井上和義、NHK交響楽団の演奏です。ここでも井上氏は指揮棒を使わず演奏しています。

 

 

  休憩の後はオーケストラのみの演奏でシチェドリンの「ロシア写真集」から2曲という珍しい曲が演奏されました。弦楽合奏のための作品です。まあ、ユーモアたっぷりの作品で聴いていて思わずその景色が目に浮かびます。2曲目に演奏された「スターリン・カクテル」はスターリンを完全に皮肉っていて、コントラバスによる弦を叩くというパフォーマンスやスターリンのお気に入りの「黒い瞳」の旋律が弱々しく演奏されるのにも笑ってしまいます。

 

 

 

 そして、締めはヴァイオリン協奏曲第1番です。この曲はこの1週間で取り上げているショスタコーヴィチの中期の作品に関連するもので、1947-8年に完成されています。4つの学習から構成されているこの曲は、交響曲の第9番と10番の間にある作品で、性格から言えば、本来は交響曲の系列に組み込まれるべきものだったのではないでしょうか。前作の交響曲第9番では、ジダーノフ批判と言う痛烈な政治介入がありました。ショスタコーヴィチはそれに対するアンチテーゼのような形でこの作品を作曲しています。トランペットとトランボーンは廃棄されていますが、ここではチェレスタが効果的に使われています。作品の構成的には交響曲第8番のような悲劇的な雰囲気の学習から始まります。そして交響曲第8番の第4楽章を連想させるチェロとコントラバスが奏でるパッサカリアの主題によってバイオリンの変奏が演奏されます。今回の演奏では、真一は譜面台を置いて固たる演奏に心がけていたような気がします。それもあって、見事な初したコビッチが演奏されていました。それは終演後の拍手喝采にも現れていました。

 

アンコールに応える荒井氏

 

こちらの演奏は、コパチンスカヤヤリスマンソンズベルリン・フィル演奏で聴いてみましょう。