指揮者 小澤征爾 世界のOZAWA 軌跡と継承 | geezenstacの森

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指揮者 小澤征爾

世界のOZAWA 軌跡と継承 

 

出版社 :音楽之友社

 
 
 2024年2月6日、世界的指揮者の小澤征爾が逝去した。享年88。1959年ブザンソン国際指揮者コンクール優勝以降、次々と世界の名門オーケストラの音楽監督を歴任、2002年にはオペラの殿堂であるウィーン国立歌劇場の音楽監督に東洋人として初の就任を果たすなどして、世界のクラシック音楽界の頂点に上り詰めた。一方、新日本フィルの立ち上げ、サイトウ・キネンオーケストラの結成、水戸芸術館館長を務めるなど日本でも精力的に活躍。また、教育活動にも情熱を注ぎ、小澤征爾音楽塾、小澤国際室内楽アカデミーなどで後進の指導にあたった。日本が誇る世界のOZAWAの八面六臂な活動を追い、次世代への継承を紹介する。ウィーン国立歌劇場、ウィーン・フィル、ベルリン・フィルでの公演データ、ディスコグラフィ付き。---データベース---
 
 小澤征爾の3冊目のムックになります。以前は「小澤征爾 NOW」(1994)と「小澤征爾とウィーン」(2002)が発売されています。特に前者は濃い内容で、それまで発売されたアルバムを写真入りですべて掲載し、コメント付きでずいぶん参考にしたものです。後者はウィーン国立歌劇場の監督になった記念で発売されたもので、内容的にはあまり充実していなかった気がしました。そういう経緯があるので、今回はその後の小澤征爾的なところでウィーン国立歌劇場、ウィーン・フィル、ベルリン・フィルでの公演データ、ディスコグラフィがついています。
 
 
 読み物として面白いのは片山杜秀氏の巻頭のエッセイで、斎藤英雄、ミンシュ、カラヤン、バーンスタインという巨匠にかわいがられ、その彼らの水と油のような特徴を自分なりに吸収し消化する様は、 まさに独特の感性でそれが「龍」に値するという論調には納得です。以下目次です。
 

[目次]
CONTENTS
[巻頭言]「無」、あるいは「龍」――世界のOZAWAの本質 片山杜秀

■第1章 世界への飛翔 日本~フランス~アメリカ
小澤征爾年譜 奥田佳道
若き日の小澤征爾 喜多尾道冬
ブザンソン国際指揮者コンクール優勝 三光洋
師匠と指揮者の系譜 山崎浩太郎
N響事件 渡辺 和
武満徹との邂逅、そして世界へ 長木誠司
新日本フィルハーモニー交響楽団 柴田克彦
42年間のアメリカで果たした偉業 佐々木喜久
大炎上 タングルウッドの改革 小林伸太郎
中国の伝説となった「シャオツォー(小澤)」 渡辺 和

■第2章 世界最高峰に立つ ウィーン/ベルリン/パリ
ウィーン国立歌劇場音楽監督 日本人が就いた最高の地位 堀内 修
音楽監督就任直前 《イェヌーファ》プレミエの一大ヒット 山崎 睦 ウィーン国立歌劇場&ウィーン・フィル 小澤先生との共演20年を振り返る ヴィルフリート・和樹・ヘーデンボルク
[インタヴュー]2001年秋ウィーンの小澤征爾 野村三郎
ウィーン・フィル ニューイヤー・コンサート2002 山崎 睦
空前の大ブームの舞台裏 CD「ニューイヤー・コンサート2002」 篠原 良
ウィーン国立歌劇場&ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団全公演記録 平野玲音
ベルリン・フィルとの蜜月 城所孝吉
ベルリン・フィルでの最後の指揮 中村真人
「マジック」の所在 城所孝吉
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団全公演記録 中村真人
フランスでの深い敬愛 パリ国立オペラ 三光 洋

■第3章 日本から世界へ 教育への情熱
セイジ・オザワ 松本フェスティバル 広瀬大介
サイトウ・キネン・オーケストラの録音 新 忠篤
[インタヴュー]2001年パリの小澤征爾 山崎 睦
僕らが、舞台で見ている小澤征爾 矢部達哉
❝いま❞を精一杯生きること 山田和樹
コンサート・キャラバン 矢部達哉
恩師・齋藤秀雄と桐朋学園 寺西基之
もうひとりの恩師 豊増 昇 寺西基之
齋藤秀雄『指揮法教程』 篠﨑靖男
憧れのタングルウッドで小澤先生に指揮を教わる 曽我大介
[インタヴュー]沖澤のどか 池田卓夫
[インタヴュー]ディエゴ・マテウス 岸 純信
小澤征爾音楽塾 岸純信
小澤国際室内楽アカデミー奥志賀&小澤征爾スイス国際アカデミー 池田卓夫
[インタヴュー]原田禎夫 池田卓夫
東京のオペラの森、音楽監督として 岸 純信
水戸室内管弦楽団 矢澤孝樹
特別対談 吉田秀和&小澤征爾
初のヨーロッパ・ツアー 小澤征爾&水戸室内管弦楽団
2度目のヨーロッパ・ツアー 小澤征爾&水戸室内管弦楽団
小澤征爾の書物紹介 矢澤孝樹
RCAコロンビア・レコードの全録音51枚組 増田良介
小澤征爾の年代順名盤選 満津岡信育
小澤征爾作曲家別ディスコグラフィ 浅里公三

 
 2024年2月、88歳で亡くなった世界的指揮者・小澤征爾氏。その足跡と成し遂げた数々の偉業について端的にまとめています。世界に冠たるマエストロ「Seiji Ozawa」がどのように、音楽の世界に入りこみ、世界の音楽シーンを切り開き、多くの名演奏で魅了し、そしてその愛すべき性格と卓越した音楽性で世界中に多くのファンを獲得していったかが良く理解できるムックです。上記2冊とこのムックで完ぺきといえるでしょう。この本は2024年に発売されており、その折にはソニーから「コンプリートRCA&コロムビア・アルバムコレクション」として51CDのボックスセットが発売されていましたが、昨年の12月に本来の意味でコンプリートといわれる238CDを収録したボックスがユニヴァーサルから発売されています。こちらはそのRCAとコロムビア、更には旧EMIや翼下のハイペリオン、ECMニュー・シリーズ、テラーク、更にはうんと初期のビクターの音源、また、初商品化となるコンサート音源(TOKYO FM原盤)を含む、小澤征爾の音楽を多角的に味わうことができる決定版的内容となっています。但し25万円超強気の価格設定で発売されました。まあ、欲を言えばブザンソンに優勝した当時のフランス録音やNHKとの放送録音辺りも収録してほしかったものです。
 
 そうそう、この本には評価のマイナスになるようなN響事件については触れられていません。小沢氏の没後にこれらの秘蔵のテープの中から片山杜秀氏が「ファウストの劫罰」を放送したようですがそれ以外は埋もれています。
 
 なかなか資料は充実していますが、以下のような間違いもありました。

●当ムックP44で「日本ではNHKが『北京にブラームスが流れた日』というドキュメンタリー番組を制作し、小澤没後の追悼番組として再放送もされている」とありますが、正しくは「日本ではテレビマンユニオンが『北京にブラームスが流れた日』(1987年TBSにて放送)と『アナザーストーリーズ 運命の分岐点 小澤征爾 悲願のタクト~北京に流れたブラームス~』(2022年NHKにて初回放送)を制作し、後者は追悼番組として再放送もされている」です。
●P75で10月28日【東京・サントリーホール】の曲目がブラームス:交響曲第1番、ブラームス:交響曲第2番とありますが、正しくはベートーヴェン:交響曲第4番、ブラームス:交響曲第1番です。
 
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