久石譲 WORKS Ⅱ Orchestral Night | geezenstacの森

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久石譲 WORKS Ⅱ

Orchestra Nights

 

曲目/

交響組曲「もののけ姫」より
1. アシタカせっ記   5:33
2. もののけ姫    4:3325
3. TA・TA・RI・GAMI    6:49
4. アシタカとサン    4:
5. Nostalgia (サントリー山崎CF曲)   3:31
6. Cinema Nostalgia (日本テレビ系列「金曜ロードショー」オープニングテーマ)    5:35
7. la pioggia (映画「時雨の記」メインテーマ)    5:20
8. HANA-BI (映画「HANA-BI」メインテーマ)    3::27
9. Sonatine (映画「Sonatine」より)    7:56
10. Tango X.T.C (映画「はるか、ノスタルジィ」より)    4:56
11. Madness (映画「紅の豚」より)    4:33
12. Friends     4:00
13. Asian Dream Song (長野パラリンピック冬季競技大会テーマ曲)   7:25

ピアノ:久石譲
指揮:曽我大介
管弦楽:東京シティ・フィルハーモニー管弦楽団 
管弦楽:関西フィルハーモニー管弦楽団 
録音:1998年10月19日 東京芸術劇場
録音:1998年10月27日 ザ・シンフォニーホール

 

 

 久々に久石譲を取り上げます。世間的には映画音楽の作曲家というイメージが強いと思いますが、小生としてはクラシックのミニマル音楽の大家、あるいは指揮者というイメージの方が強く、そちらの方の記事の方が多くなっています。

 

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 さて、このアルバムは1997年にビッグ・セールスを記録した久石譲の人気盤『ワークス』に続く第二弾が満を期して登です。この『ワークス』とは、久石氏が手掛けた数々のテーマ曲を中心に、新アレンジ/新録音してリリースする映像音楽の集大成とも言えるソロ・アルバムのシリーズで、今回も抜群の選曲をしてくれています。サントリー「山崎」CMソングに起用されたあの名曲「ノスタルジア」、トヨタ「マジェスタ」CMソングなどから映画『もののけ姫』の初ライヴ・テイク・ヴァージョンや、北野武監督の話題作『HANA-BI』まで名ナンバーが惜しげもなく一挙に収録されています。ただ、wikiのページには記載がないという不思議なアルバムです。

 

 映画「もののけ姫」のエンドテロップで流れるこの曲。久石メロディーの壮大さと、日本人的な旋律がミックスされ見事にもののけ姫の世界をあらわしている一曲です。イントロはタタリ神をイメージした低音弦楽器の恐ろしげな演奏からはじまり、メインモチーフの演奏となります。その旋律は低音から高音へ一気に、伸びやかな感じで荘厳です。組曲的な構成も魅力的で、曲の中に一つの物語を感じます。コンサート録音ということもあり本人演奏のピアノが加わりサントラとは、また一つ違った演奏を聴くことができます。

 

 

 2曲目はご存知、「もののけ姫」のメインテーマのオーケストラバージョンです。交響組曲もののけ姫のバージョンで、こちらはサントラのインストバージョンとは大きく異なり、新たにアレンジされた部分が多くなっています。幻想的なイントロのあと、前半のメロディーはピアノを中心に展開していきます。ここではおおらかでありながら、情熱的な演奏を聴かせてくれます。1番と2番の間の間奏は新たなメロディーの書下ろしとなっています。これらの演奏は東京都大阪のコンサートから出来のいい方を採用されているようです。

 

 

 4曲からなる交響組曲「もののけ姫」の「TA・TA・RI・GAMI」からの演奏です。サントラに比べアレンジが進化していて、タタリ神を中心としてサントラの他の曲も少々織り交ぜたアレンジとなっています。元が映像の動きに合わせた音楽で迫力万点の演奏となっています。タタリ神の異様な感じを、そしてアシタカが襲われる緊張感を見事に表しているといえるでしょう。ホルンの力強い旋律が印象的です。弦楽器の無秩序な感じの駆け上がって、駆け下がる演奏は不気味な感じを上手く表しています。民謡的なアップテンポのリズムも特徴的です。

 

 

 もののけ姫の曲の中ではピアノが前面に出された曲がこの曲です。最後のシーンで使われているので、印象に残っている人も多いでしょう。ここではクラリネットなどの木管楽器がシンセの響きの代わりを努めています。ゆったりとしたリズムに会わせ、流れるような透明感のあるメロディーが奏でられます。サビの部分のピアノは力強く、壮大な盛りあがりを見せてくれます。

 

 この曲より4曲はPIANO STORIES Ⅲでもお馴染みの曲です。Nostalgiaはそのアルバムのタイトルになっている代表曲とも言うべき曲です。イントロのピアノによる堂々とした感じの分散和音は、かっこよく、これからどういう曲が始まるのかという期待を膨らませてくれます。その後につづく甘く、切なささえ感じる旋律はいうまでもなくこの曲のシンボルです。コード進行とメロディーの関係が巧妙で、m7やM7のコードを等を多用しているにもかかわらず見事に分かりやすく、すっきりしたメロディーとなっています。サビ前では4拍子から3拍子へと変化し、何とも心地よいリズム感を生み出しています。サビはさらに力強く、そしておおらかにすすんでいきます。

 

 

 金曜ロードショーですっかりお馴染みのこの曲、1997年4月から2009年3月まで使用されていました。クラシック的な要素が取り入れられた曲。言うならば「難しい曲」であるかも知れません。ベース音は次第に下り、主旋律は次第に上がっていく、そんな感じのメロディーで曲が始まります。イントロのフレーズの後の旋律では、木管楽器が久石色出しているといえるでしょう。その後は、ショパンのようなピアノ曲を思わせるフレーズ、なかなか面白い構成になっています。最後はピアノのトリルに合わせ、はじめの構成を繰り返して終わります。

 

 

 時雨の時のテーマであるこの曲は、ピアノの高音部のきらびやかなフレーズの後、あたたかい感動的な旋律で始まります。全体的にゆったりとして、落ち着いた曲となっています。コンサート録音ということで久石氏のピアノが前面に押し出されています。ピアノを中心に詩情豊かな旋律が繰り広げられていきます。その後、徐々に明るい雰囲気を取り戻し、始めの印象的な旋律となり、最後は静かに終わっていきます。

 

 

 北野武監督映画「HANA-BI」のメインテーマとなっているこの曲。映画の中の複雑でいろいろ感情が交えた感じのメロディーライン。アダルトでいながら神秘的で壮大な要素も兼ね備えた久石音楽、そんな感じがよく現れているのがこの曲でないでしょうか。

 

 この曲も北野武監督の「Sonatine」のメインテーマです。この曲は繰り返しの音楽といえるでしょう。ミニマル色が多いに現れている曲です。イントロはピアノで始まるなどWORKSⅠのアレンジより、ピアノが前面に出ています。そのピアノと弦楽器の繰り返しのフレーズを中心に、クラリネット、オーボエ、フルート、ホルンとまるで輪唱のように次々と旋律に加わっていく様子は、編曲の巧妙さがうかがえます。

 

 

 この曲はコンサートや、他アルバムでも良く演奏されている曲です。My Lost Cityのものと比べるとややテンポが遅く、少しゆったり目のリズムで曲が進行します。イントロも、こちらは怪しげな雰囲気をかもし出していて、だいぶ様子が違います。久石さんの得意分野の一つである、哀愁漂うアダルトなメロディーの曲で、この曲独特のタンゴのリズムとなっています。後半はテンポが速くなりシャッフル系のリズムに合わせ、ドラムも加わりジャズの雰囲気もかもし出しています。

 

 

 この曲もコンサートや、他アルバムでも良く演奏されている曲です。Madness(狂気)という名の通り、パワフルに突きって行く曲です!それはまさに見事。大音響のオーケストラヒットとともに曲が始まります。小刻みな弦楽器の伴奏に合わせて、ピアノ、フルートの少し恐ろしげで不可解なメロディーがこだまします。その後は、まさに「狂気」の絶頂に向かってダッシュ!ピアノのバッキングをベースに「行くぞー!」という感じの演奏は必聴です。そして、その後のピアノの強打となります。最後はオーケストラ全奏で締めくくられます。

 

 

 この曲と次の曲はPIANO STORIES Ⅱからとなります。この「Friends」はアンサンブルなのですが、ここでは貴重なピアノソロアレンジとなっています。久石氏のピアノは力強いタッチで、強いところは、右手、左手構わないくらいに力強く、弱いとことは、とことん弱く、そんな感じの演奏はピアノソロの特徴であります。

 

 

 1998年冬季長野パラリンピックのテーマ曲としてつくられた曲です。曲想は日本人的、そしてアジア的な旋律を大切にしたもので、「もののけ姫」の音楽にも、よく似たものがあります。編曲はコンサートを録音したWORKSⅡ独特のもので、新たなメロディーがサビとして加わっています。トトロの音楽が聞こえてくるのも面白いところです。パラリンピックという事であまり認知度が無いのが残念ですが、フルオーケストラを使っての響きは聴きごたえがあります。最後は初めのメロディーをピアノ中心に繰り返しエンディング。その後は拍手にスタンディングオベーション!

 

 

 このCDには立川直樹氏の寄稿文が掲載されています。以下のように書かれています。

 

いい音楽には永遠の生命力がある。

時代とか流行、様式とか国籍…そうしたものすべてを超えて存在する音楽。「WORKS」と名づけられたシリーズは久石譲という稀有な才能を持った音楽家の”仕事”を数々の映画音楽の曲を中心にオーケストラとの共演という形で再構築していくものだが、新たに録音された曲を聞くと、改めてその音楽性の高さとオリジンルな魅力を実感することができる。一度聞いただけで記憶の奥底に刻みつけられてしまう美しいメロディと卓抜したアレンジ、それにピアニストとしての力量。今回の「WORKS II」は7年ぶりのオーケストラ・コンサートのライブ録音という形になっているが、ひとつひとつの音符の鳴り方、そこから紡ぎ出されたハーモニーの美しさは、驚くほどに完成度が高い。

だから、僕は出来ることなら可能な限りの音量でこのアルバムを聞いて欲しいと思う。収録された13曲は、インストゥルメンタルでありながら大量生産、大量遺棄されるヒット曲とは一線を画す本物の”唄”というのはどんなものかを教えてくれるし、ロマンティシズムとダイナミズムが完璧な形で同居し、輝ける結晶体になっていることがわかる。

そして、次にはそこに自分自身の記憶や思いを重ね合わせていくといい。映像は形になって残っているが、いい音楽というのはそこから離れて空間の中で旋回し始めるのである。「WORKS」はいい仕事の理屈抜きの証拠品である。

立川直樹

 

 まさにこのアルバムの本質をついています。