Kultur Spiegelの
ジョージ・セル その1
曲目/
モーツァルト/交響曲 第40番 ト短調 K550
1. Allegro Molto 8:16
2. Andante 8:45
3. Menuetto. Allegretto 4:33
4. Finale. Allegro Assai 4:44
モーツァルト/Sセレナード 第13番 ト長調 K525 「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」*
1. Allegro 5:48
2. Romance: Andante 5:17
3. Menuetto 2:08
4. Rondo: Allegro 4:17
シューマン/交響曲第4番ニ短調Op.120**
1. Zeimlich Langsam, Lebhaft 8:40
2. Romanze: Zeimlich Langsam 3:51
3. Scherzo: Lebhaft 5:10
4. Langsam, Lebhaft 7:36
録音/1967/08/25
1968 *
1960/03/12 ** セヴァランス・ホール
独ソニークラシカル 88697385892
このCDは、ドイツのディアシュピーエル社が2008年に発行した偉大な指揮者たちと大するシリーズの中の1枚です。まぁ雑誌の付録みたいなものですが、1995年から2015年にわたって不定期にこういう文化的な遺産を発売してきました。この常時セルもその2008年に大量に発行されたCDの1組で、この時はソニーとBGMのBMGの音源を使って、カラヤンやジョージ、セル大マンディ、バーンスタイン、フリッツライナー、セルジュ、チェリビダッケ、バレンボイム、等々の指揮者の名演をそれぞれ1巻2枚ずつのCDで20組発売しています。このジョージセルもその中の1組と言うわけです。こんな雑誌です。
今回はその中の2枚組のうちの1枚目を取り上げます。市販ではこんな組み合わせはありませんが、ここではモーツアルトとシューマンが収録されています。
スペースジョージセルのモーツァルトは、レコード時代は最初から安売りのような形で発売されていたため、かなり録音が古いものだろうと思い込んでいたのですが、レコードが発売された当時は、それほど古くはありませんでした。この録音も1968年でジョージシェルにとっては、晩年の録音と言うことができます。ソニーはこのジョージセルのモーツァルトを最初から純恋歌版みたいな形でシリーズで投入していました。特に初期のギフトパックではこのセルのモーツァルトがよく採用されていました。
セルのモーツァルト交響曲第40番は、レコード時代にもよくサンプラーに収録されていましたからよく聴いたものですが、その時は鼻息の荒い指揮者だなぁと言う印象で、あまり好感が持てなかったのを覚えています。今回こうしてこのシリーズに組み込まれた音源を聞いてそういう印象はやや変わりました。贅肉をそぎ落とした緊張感のあるモーツァルトで、クリーヴランド管弦楽団の緻密なアンサンブルによって透明感あふれるモーツァルトになっています。ただ、セルの鼻息はやはり大きいです。一つね調べていてレコ芸のイヤーめぶつ国はこの録音がロンドンと表記されているものがありました。ただ、どう考えてもそれはないだろうということで、別の記録からセヴァランス・ホールという記述もあったのでそれに従っています。
彼はモーツァルトを演奏するとき、通常の大編成ではなく、小さな編成で演奏するのが常だった。現在、これは当たり前になっているが、当時は必ずしもそうではなかったから、セルの方法は当時先駆的とまでは言わずとも、先進的だったと言えるでしょう。しかしさらに重要なのは、少人数といっても、団員がローテーションで演奏を担当するのではなく、オーディションでメンバーを選び固定することで、いわば精鋭メンバーによるモーツァルト・オーケストラを作り、より高い演奏水準を確保しようとしたということだと思われます。きっちりと透明感のある演奏はこういうところからも引き出されていると言ってもいいでしょう。この第40番の第3楽章中間部で、セルははっきりとテンポを伸縮させて、この部分が人間的な感情の発露であることを表現しようとしていると思われます。これは同じセルのドヴォルザークの「新世界」でも感じたことで、よりロマンティックな演奏をする指揮者と見なされているワルターやフルトヴェングラーでも、これほどはっきりとしたアゴーギクは付けていない点からしてセルの曲に対する足跡と捉えていいものでしょう。
ソニーに於いてはワルターの演奏する「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」が一押しで、ランキング記事ではベストに入っていますから、このセルの演奏は霞んでしまっています。この演奏を取り上げた記事も皆無に近いのではないでしょうか。それでも、上に記したセルのポリシーによる演奏ですから、透明感溢れる一糸乱れぬアンサンブルであり楷書書きのような折り目正しいモーツァルトは健在です。アイネクライネの第2楽章ロマンスも変にロマンティックな表情づけはなくあっさりとかけぬけているところが潔いのではないでしょうか。
最後はシューマンです。シューマンの交響曲で一番好きなのは第4番です。多分レコードやCDも一番多いと思います。ただ、セル本人は2万が一番好きだと言っていますから、個人的には嬉しいのですが、なぜここに収録されたのかはわかりません。この交響曲はフルトヴェングラーという絶対的な名演がありますからどうしてもそれと比べてしまいます。ステレオ初期の録音というハンデはありますが、フルトヴェングラーの演奏はモノですからそれに比べたら遥かに優秀と言えます。ただ、CBSの録音のややハイ上がりの音色というのはやや鼻につきます。そして、ここでも結構セルのうめき声も聞き取ることができます。もちろんセッション録音ですから一発録音ということはないでしょうが、それでも長いフレーズを集中的に録音している様は聴き取ることができます。格調の高さにおいても比類のないものがあり、いい意味での知情バランスのとれた素晴らしい名演に仕上がっていると高く評価したいものです。
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