東京駅歴史殺人事件
歴史探偵 月村浩平の事件簿
著者:風野真智雄
出版:実業之日本社
東京駅丸の内口で毒殺事件が起きた。被害者は広島の銀行員。その数日後、歴史雑誌の取材から帰ってきた月村弘平は東京駅で再び起きた殺人事件の現場に居合わせる。今度の被害者は埼玉の土木作業員。二つの事件の現場は、かつて二人の首相が暗殺された場所だったが、これは偶然の符合なのか。月村と恋人の刑事・上田夕湖が奇妙な事件の真相に迫る!---データベース---
このシリーズは初めて読みますが、設定としては太田忠司氏の「ミステリなふたり」シリーズと設定が似ているなぁという感じがしました。ただ、こちらはサブタイトルに「歴史探偵 月村浩平の事件簿」とあるとおり、歴史物に焦点を絞っているところが特色なのでしょう。いずれにしても女性が刑事ということでのミスマッチが魅力のストーリーではあります。そして、この一冊はシリーズ第6作ということになります。これまでには、
1.東海道五十三次殺人事件
2.縄文の家殺人事件
3.信長・曹操殺人事件
4.「おくのほそ道」殺人事件
5.坂本龍馬殺人事件
という作品があります。で、このタイトルにある「東京駅歴史殺人事件」とはどういう物なのかを知ることはこの小説の肝になります。
かつて日本では総理大臣が一般市民の前で暗殺・襲撃された事がある。その舞台となったのが東京駅で、今でも暗殺の現場と分かる場所が2ヵ所ある。
通勤や観光など東京駅を利用する時、誰でも見られる場所にその痕跡が残されている。1つ目は現在の東京駅の丸の内南口で、1921年(大正10年)11月4日に当時の首相だった原敬(はら たかし、1856~1921年)が当時の山手線大塚駅の駅員であった中岡良一により刺殺された。原首相は短刀で右胸を刺され、その傷は右肺から心臓に達しており、ほぼ即死状態だったという。現在、東京駅のその場所には原首相遭難現場のプレートと床面には円の内部に六角形という形をした印が埋め込まれている。
丸の内南口改札口付近には、事件現場を示すマーキングと、事件のあらましを記した説明板が設置されています。
もう1つの場所は、東京駅丸の内中央口から入った所にある中央通路の階段手前であり、こちらも床面に印が埋め込まれている。1930年(昭和5年)11月14日、その風貌から「ライオン宰相」と呼ばれた濱口雄幸(はまぐち おさち、1870~1931年)が銃撃された。
ここに幕末の東京駅の立地にあった班の存在も関わってきます。こんかいこのしょうせつではじめてしったのですが、ここには来たから下総関宿藩、備前岡山藩、それに三河西尾張藩でした。その地下に眠る遺構から出土した箱が事件を生み出しました。
幕末から、明治に至る近代史の流れを理解しているとこの小説結構面白く読めますが、全く興味がないという人は読んでもチンプンカンプンでしょう。犯人に至る伏線は散りばめられていますが、東京ステーションホテルの構造と鉄オタたちの行動、そこに絡む骨董趣味の輩の三つ巴がこの事件を生んでいます。話の展開が早いので、そこら辺をきっちり理解していないとこの小説は理解しにくいでしょうなぁ。何しろ萩原健一まで登場するのですから昭和世代の人間でないとちょっと理解しづらいところがあります。
小説に登場する「東京ステーションホテル」は先日の東京旅行では行くことができませんでしたが、この小説行く前に読んでいたらもっと東京駅が楽しめたのではと思えます。