ブーレーズ
ラヴェル管弦楽名曲集
曲目/ラヴェル
1.バレエ組曲「ダフニスとクロエ」第2組曲 10:21
2.亡き王女のためのパヴァーヌ 6;15
3.スペイン狂詩曲 14:53
4.道化師の朝の歌 7:36
指揮/ピエール・ブーレーズ
演奏/クリーヴランド管弦楽団、クリーヴランド合唱団
合唱指揮/マーガレット・ヒリス
録音:1970/04/03 1,2
1967/07/21 3
1975/03/17-21 4 セヴァランス・ホール クリーヴランド
ソニー・ファミリー・クラブ FCCA 455
このジャケットかっこいいですねぇ。ミレーの「春」というタイトルの絵です。サブタイトルは「ダフニスとクロエ」ということでこのレコードに採用されています。ただし、このデザインはこのファミリークラブ盤のレコードでしかお目にかかれません。さて、今年はブーレーズの生誕100年です。ということでそういう商品も多数発売されるのではないでしょうか。まさに3月26日が誕生日でした。
これはブーレーズがクリーヴランドの主席客演指揮者をしていた頃の録音で、ちょうどこの頃4チャンネルブームでした。ですからこれらの録音は全てマルチトラックの4チャンネルで録音されているはずです。まあ、現在ではそんな環境はありませんから、全て2チャンネルにミックスダウンされています。この録音SACDではそのオリジナルが収録されているはずですから再生環境のある人ならばそちらも選択肢なんでしょう。セルの後を継ぐのはこのブーレーズだと思っていたのですが、なんとニューヨークフィルに引っこ抜かれてしまい当時は残念な気持ちがありました。これらの録音を聞くとセルに鍛えられたクリーヴランドはブーレーズにピッタリとついて行っているのがわかります。
冒頭の「ダフニスとクロエ」はブーレーズは全曲盤でも2回録音しています。この組曲版は1970年だけです。まだ、ボスのセルが現役でしたから遠慮して組曲版を取り上げたのでしょうが、ブーレーズはここでも手を抜いていません。通常は管弦楽だけで演奏されるところをちゃんとコーラスを取り入れてきっちりと演奏しています。この辺りも好感が持てます。
「亡き王女のためのパヴァーヌ」は一見淡々とした表情に見えますが、その実、緻密なアンサンブルに支えられていて聞くものを音楽に引き込んでくれます。ここではセルの作り上げた音がきっちりブーレーズに引き継がれているのがわかります。
「スペイン狂詩曲」がラヴェルの本格的な管弦楽曲としては最初の作品というのが信じられないほどに完成されています。もう、この時から管弦楽の魔術師は存在していました。作品はただの「スペイン狂詩曲」になっていますが、実際は4つの部分からなる作品であえて分類するなら「シンフォニエッタ」と呼んでもいい作品です。ブーレーズの作る音楽は各楽器の音色を生かして全体の色彩感を表出していますから聞いていて楽しいです。
夜への前奏曲
マラゲーニャ
ハバネラ
フェリア
最後は「道化師の朝の歌」です。夜のセレナードに対を成す朝のアルボラーダが語源の曲ですが、陽気なスペイン人ですから意気揚々と朝帰りをするのは成果があったのでしょう。キリッと引き締まった表現の中に中間部のファゴットの音色は奏者に任せているのが何とも嬉しいです。このブーレーズのラヴェルは今でも一級品ですなぁ。