ジョルダン/ピリスのモーツァルト
モーツァルト/
ピアノ協奏曲第20番 ニ短調K.466
3. Allegro assai 8:07 (24:31)
ピアノ協奏曲第27番 変ロ長調K.595
マリア・ジョアオ・ピリス(Pf)
アルミン・ジョルダン指揮
演奏/ローザンヌ室内管弦楽団
録音1977
P:ミシェル・ガルサン
エラート 2564699088
マリア・ジョアン・ピリスは、ピアノソナタは日本コロンビアとグラモフォンの2回録音していますが、ピアノ協奏曲全集は完成していません。2017年に引退してしまいましたからこちらはじつ件不可能になってしまいました。不思議です。若かりし頃、フランスのエラートに何曲かを録音していますが、指揮者もオーケストラもバラバラと言う誠にまとまりのない録音となっていました。後年にはグラモフォンにアバドと組んでいくつか録音していますがほとんど焼き直しのようなものです。
ここではレコードのジャケットを掲げていますが、手元にあるのはCDです。ジャケットは曲目だけを印刷したそっけないものです。
解説書だけは別途ついていますが、さすがエラート表記は全てフランス語で、しかもこちらも曲目と演奏者だけを期しているということで、録音データもありません。
そ んな中で比較的良い演奏だなぁと思ったのは、57枚目のCDで、ピアノ協奏曲の20番と27番をカップリングしたものです。この形ではレコードでも発売されていましたが、CDでは当たり前のように何度も再発売されています。手元にあるのは2007年ごろに発売されたエラート100ボックスと言うものの中に含まれていたものです。この全集はボックスセットの走りとでも言うべきものでした。ただこの当時はもうエラートは新譜の録音は全くしておらず、ただレーベルとだけ存在していて、ワーナークラシックの一員として名前を留めていました。今では旧EMI系のバージンやフランスパテマルコニーの録音もエラートに取り込まれていますから、膨大なソースが溢れています。ここではエラートの音源に一部ワーナーのテルデックやフィンランディアの音源を加えて構成されています。それでも、得意不得意の分野があり、ベートーヴェンは5枚、ブラームスは2枚に対して、バッハ10枚、モーツァルト13枚、ヴィヴァルディ6枚と偏っています。麻辣なんか1枚だし、今年記念イヤーのブルックナーに至っては1枚もありません。
過去、このボックスセットについてはかなり取り上げています。
さて、この一枚、共演しているのはジョルダン率いるローザンヌ室内管弦楽団です。アルミン・ジョルダンはこのオケストラのシェフを1973年から1985年務めていましたからその期間に録音されたものということができます。ジョルダンはこの後スイス・ロマンド管弦楽団のシェフになっています。エラートにとっては最後に輝いていた時代の録音ということになるでしょう。ピリスもこの後手首の故障で一時演奏活動から遠ざかっていますからエラート時代の最後の輝きを録音した一枚と言ってもいいでしょう。
エラートらしいやや寒色系の響きの中から紡ぎ出されるピリスのモーツァルトはそこに華をもたらしています。力の入らないモーツァルトでコロムビアの録音で見せた可憐な表情をここでも備えています。ジョルダンのバックは出しゃばることなく控えめながら最低限の仕事をしています。そんなことで全体としては小さくまとまっている印象がありますが、本来モーツァルトはこういうスタイルが合っているのでは無いでしょうか。あまり玄人受けのする演奏では無いのか多くの巨匠の演奏の中では埋もれていますが、2000年に出版されたレコ芸のリーダーズ・チョイスでは13位にランクインしています。リスナーはやっぱりこういう演奏もきちんと評価しているんでしょうなぁ。
モーツァルトの時代を考えると室内オーケストラのサポートがちょうどいいサイズです。ピリスはここではベートーヴェンのカデンツァを採用していて、時代の雰囲気をさらに醸し出しています。
20番と27番のカップリングということではセールス的な売上も期待した一枚だったのでしょうなぁ。ピリスのタッチは他の多くのピアニストと異なり、中低音が厚ぼったくならない独特のタッチできらきらとかがやいています。のちにアバドと再録していますが、エラートの音の方がその点はピリスの音色にあっているように思います。こちらではカデンツァはモーツァルトの書き残したものを弾いています。