ガーディナーのマスネ/エラート100枚ボックス その3 | geezenstacの森

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ガーディナーのマスネ
エラート100枚ボックス その3

曲目/マスネ
オーケストラ組曲第7番「アルザスの風景」
1.日曜の朝
2.酒場で
3.ぼだい樹の下で
4.日曜の夕方
オーケストラ組曲第4番「絵のような風景」
5.行進曲 
6.バレエの調べ
7.夕べの鐘
8.ジプシーの祭り
「ドン・キホーテ」から2つのの間奏曲
9.ドン・キホーテのセレナード
10.ドゥルシネアの悲しみ

 

指揮/ジョン・エリオット・ガーディナー
演奏/モンテ・カルロ国立歌劇場管弦楽団
録音/1978.6 モンテ・カルロ国立歌劇場、モナコ  

 

ERATO 2564699088

 

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 マスネと言えば「タイスの瞑想曲」が有名でしょう。でも、小生が一番最初に聴いたマスネは「ル・シッド」というオペラの中の管弦楽曲でした。たしか、マルティノンがイスラエルフィルを指揮したLPでアメリカロンドンのSTS盤でした。もちろん当時そんな曲は初めて聴いたばかりで、フランスにこんな作曲家がいたのかと感心した記憶があります。その作曲家が「タイスの瞑想曲」の作曲者だと知ったのはずっと後の事です。それよりも、このCDに収録されている「管弦楽組曲」の「アルザスの風景」とか「絵のような風景」を楽しんでいました。ガーディナーはこのマスネの管弦楽作品を2枚組のCDで発表しています。ここの紹介するCDはその2枚組のうちの2枚目のCDでそれがそっくりエラート100ボックスの47枚目に収録されています。CPからいうと45分あまりの収録ですからちょっと低いですね。ちなみに未収録のもう一枚には
1. オーケストラ組曲第3番「劇的風景」
2. オーケストラ組曲第6番「おとぎの国の風景」
3. オラトリオ「聖母」第4場前奏曲~聖母の永眠
が収録されています。スペシャル企画盤ならこの1枚目のディスクからもう1曲入れてくれても良かったのにと個人的には思います。それにしても、アナログ末期に録音されたのはもったいないような気がします。彼は後に1990年には、ロマン派音楽のレパートリー開拓を目指して、オルケストル・レヴォリューショネール・エ・ロマンティークを新たに結成していますから、このオケとともにこのマスネの管弦楽組曲の全曲を録音してくれたらと期待しています。

 

 さて、エラートの録音したこれらのマスネの管弦楽組曲は録音も少ないので貴重な存在です。さて、1曲目の「アルザスの風景」はアルフォンス・ドーデの「月曜物語」の中の「アルザス!アルザス!」に着想を得て書かれた曲だそうで、ある日曜日の情景が描かれています。第1楽章の「日曜の朝」は鳥のさえずりを模した木管の調べで始まります。陽光の降り注ぐ爽やかなアルザスの朝を起想させるメロディです。労働の休みの朝ですから穏やかなメロディが全体を包みゆったりとした雰囲気です。それから。教会に祈りに出かけるのか少し賑やかな音楽になりますが最後は敬虔な調べとともに曲は終わります。

 

 

 第2楽章は派手なワルツです。昼間に「酒場」と不思議に思ったのですが、お昼の酒場らしく健康的で楽しく派手なワルツでした。ところで日曜日って酒場はやっているのでしょうかね。狩を模したとおぼしきホルンのファンファーレが聴き所です。

 

 

 第3楽章は「ぼだい樹の下で」で、午後のひと時のしんみりとしたの恋人たちのささやきあいを描いています。こういう語らいの場はチェロの独奏が相応しい活躍を見せます。

 

 

 最後のフィナーレはまた賑やかなオーケストラの響宴です。とても日曜の夕方という雰囲気は感じられませんが、何かの祝い事のような歓喜の雰囲気です。途中、楽隊の更新のようなメロディが現われ町中を更新していきます。それが終わるとまたもとの賑やかな歓喜が元競り全曲を終了します。ガーデイナーはこの曲をドラマチックにバレエ音楽のような的確な描写で描いています。

 

 

 第2曲の「絵のような風景」は比較的聴かれる事がある作品ではないでしょうか。第1楽章の行進曲はまるでバレエのコール・ド・バレエ(群舞)を見るような感覚の曲です。行進曲となっていますが、これで行進したらまず足がもつれるのではないでしようか。第2楽章の「バレエの調べ 」はまさにヒロインのパドゥドゥの場面に相応しい音楽です。やはりここでもチェロが主旋律を奏で雰囲気を盛り上げています。マスネはバレエのための作品もたくさん書いていますからこういう音楽はお手のものだったのでしょう。第3楽章「夕べの鐘」ではホルンが活躍します。鐘の音をホルンで演奏するというのは意外な感じがしますが、ビゼーなんかも「アルルの女」のカリヨンなんかで使っている手法ですね。第4楽章の「ジプシーの祭り」の冒頭のファンファーレのメロディーはニュース番組のバックなんかでよく耳にします。多分この楽章が一番良く知られているのではないでしょうか。どの曲を聴いてもバレエの1シーンが想像される組曲で、そういう意味では絵画的というよりは「バレエの風景」といった感じの作品です。

 

 

 最後は歌劇「ドン・キホーテ」からの2曲の間奏曲です。しんみりとした感じのセレナードは瞑想曲を思わせます。「ドゥルシネアの悲しみ」の方はチェロの独奏が光るしみじみとした旋律がこの曲の哀愁を誘います。

 

 

 オーケストラのレベルは高く、歌劇場付属のオーケストラですからこういう曲目は手慣れたものなんでしょう。ガーディナーというと一般にはカール・リヒターの後継のようにバロック主体の指揮者のイメージがありますが、こういうロマン派の音楽にも非凡な輝きを見せています。このマスネの作品集は隠れ名盤といった所でしょうか。
オリジナルは以下の形で発売されています。

 

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カタログNo: 2564620852
レーベル: Apex *