エラート100ボックスその31-ドヴォルザーク/新世界、謝肉祭、チェコ組曲 | geezenstacの森

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エラート100ボックス-31、ドヴォルザーク/新世界、チェコ組曲他

曲目
ドヴォルザーク
交響曲第9番変ホ短調Op.95「新世界から」
1.Addagio.Allegro molto 9:14
2.Largo 13:10
3.Scherzo. Molto vivace 7:59
4.Allegro con fuoco 11:21
5.「謝肉祭」序曲 Op.92 9:48
チェコ組曲Op.39*
6.Preludio (pastorale)-Allegro moderato 3:34
7.Polka-Allegro grazioso 5:01
8. Sousedska (Minuetto)-Allegro giusto 4:10
9. Romanza-Andante con moto 4:32
10. Finale (Furiant)-Presto 5:41

指揮/ジェームズ・コンロン
   アルミン・ジョルダン*
演奏/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
   ローザンヌ室内管弦楽団*

録音/ 1984
  
ERATO 2564699088

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 コンロンの新世界は正直言ってあまり特色がありません。随分軽い新世界です。いつものエラート録音らしく低域不足であまり褒められたものではありません。コンロンとロンドンフィルの録音はエラートにはこれ一枚だと思われます。コンロンは70年代後半から注目されだし、80年代にはロッテルダム・フィルを振ったものがエラートに少なからずあるはずですがすべて廃盤になっているようです。手元にも、FMで放送されたライブのテープがいくつか残っています。ライブではいい仕事をしていたのにセッション録音ではあまりぱっとしたものがエラートには無いのが残念です。この「新世界」もオムニバスで第2楽章だけはいろいろな形で発売されています。まあ、第2楽章はしんみりと聴かせる楽章かのであまりはったりの無いこういう演奏がいいのかも知れません。

 第1楽章はお茶漬けさらさらのような演奏で、ドヴォルザークらしい土の香りのする演奏は全くされていません。第3楽章も力みの無い演奏で、粘りが無いのですが、響きそのものはシャープなので都会的センスのある演奏と言えなくもありません。第4楽章とて、トランペットを初め金管はそれなりにバリバリ鳴っていますが、インテンポのリズムの中に埋没していて突出することはありません。なんか、表面的にはつまらない演奏のように聴こえますが、それでいて捨て難い味のある演奏です。特色がないということが特色で、インテンポでかちっと決まったシンメトリックな演奏はこれだけ聴くと一種の爽快感があります。ところで、今回のジャケットはその「新世界」が発売された時のジャケットを掲載しました。このジャケットの色合いがコンロンの演奏を表現しているようで気に入っています。

 併録されている「謝肉祭」序曲もアップテンポの処理でスピード感はあります。ただ、オフマイク気味の録音で音が団子状態になっているのはいただけません。まあ、コンロン30代のフレッシュな演奏が聴くことができる貴重な記録としての価値はあります。こういう録音がエラートの100枚の中に選ばれているのですから、まんざらではないってことでしょう。コンロンはオペラにも造形が深い指揮者で60代を前にして今後ブレークしそうな予感を持った指揮者の一人で注目しています。

 一方、もう一曲はドヴォルザークの作品の中でも、マイナーな「チェコ組曲」が収録されています。ジョルダン/ローザンヌ室内管弦楽団のこの曲は多分国内盤では発売されたことが無いのではないでしょうか、記憶がありません。この100枚ボックスにはドヴォルザークはこの一枚しか収録されていないのにその中にこの「チェコ組曲」が含まれていること自体が意外です。まさか、「のだめブーム」で注目されたことが影響したとは思えないのですが・・・

 演奏は編成が小さいのでドヴォルザークの濃厚なボヘミアの響きは聴けません。ちょっと薄っぺらな響きですが、通常のフルオーケストラの演奏では埋もれてしまう各楽器のパートの響きは明瞭に聴き取ることができます。まるで、プーランクの作品を聴いているような小粋な演奏で、普段味わうことの出来ない肌触りのドヴォルザークが楽しめます。ジョルダンの指揮は第2曲なんかはメリハリの効いたアクセントで、踊りのためのポルカというよりは聴かせる音楽に徹しています。

 残念なことにこの演奏も単品は廃盤で、このエラート100ボックス」の中でしか聴くことはできません。そういう意味では宝箱をひっくり返すような楽しみがこのセットの中には詰め込まれていますね。

ジェームズ・コンロン
  1950年、ニューヨーク生まれの指揮者。マンハッタン音楽院、ジュリアード音楽院で学ぶ。1972年、ジュリアードのオペラ公演「ボエーム」を指揮、国際的活躍のきっかけとなった。1974年ニューヨーク・フィル定期にデビュー、1976年にはメトロポリタン歌劇場にデビュー、以降世界の主要な歌劇場に多数出演している。1983年からロッテルダム・フィル首席指揮者、1991年からケルン市の音楽総監督、1996年からパリ・オペラ座・バスティーユ歌劇場首席指揮者を務める。