ウト・ウギのベートーヴェン | geezenstacの森

geezenstacの森

音楽に映画たまに美術、そして読書三昧のブログです

ウト・ウギの

ベートーヴェン

 

曲目/ベートーヴェン

ピアノ協奏曲第2番変ロ長調作品19

1. Allegro Con Brio    14:49

2. Adagio    9:17

3. Rondo: Molto Allegro    6:10

Violin Concerto, Opus 61 In Re Maggiore*

1.Allegro Ma Non Troppo    24:05

2.Larghetto    9:50

3.Rondo    9:55

 

ピアノ/エマニュエル・アックス

ヴァイオリン/ウド・ウギ

指揮/アンドレ・プレヴィン

  ヴォルフガング・サヴァリッシュ*

演奏/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

  ロンドン交響楽団*

録音/1985/07/08.09 ウォルサムストウ・アセンブリー・ホール

  1981/06/01 キングスウェイ・ホール

P:チャールス・ゲルハルト

 

 

RCA 74321242002

 

 

 CD最初期に発売された前週に含まれていたのは現在の合唱幻想曲ではなく、ピアノ協奏曲第2番とヴァイオリン協奏曲がカップリングされていました。手元にあるのはその全集の一枚ですが、同時に単品としても発売されており、上のジャケットはその単品として発売されたものです。先に取り上げた「クラシック・ナビゲーション」の第27集として発売されていました。全集はシリーズの第26集から28集をセットにしてボックスに収めたものでした。

 

 ということで、この一枚はピアノ協奏曲第2番とヴァイオリン協奏曲がカップリングされています。のちに再発売された時にはヴァイオリン協奏曲の代わりにメータ/ニューヨークフィルの合唱幻想曲に差し替えられています。米RCA時代にはさらに、「皇帝」と「合唱幻想曲」さらにはコリオラン序曲までカップリングされた単品も発売されていました。

 

 

 さて、ここで演奏されているピアノ協奏曲第2番はおそらくベートーヴェンのピアノ協奏曲の中でも一番人気のない曲でしょう。そんなことで、人気曲のヴァィオリン協奏曲カップリングされて市販されたのではないでしょうか。実際、作品としては2番ですが、それは出版の時に1番と2番が逆に出版されたからで実際はベートーヴェンにとっては第1番であった作品だからです。そんなことでまだモーツァルトの影が残る作品です。ティンパニも含まれていない作品で、楽器編成が小さい理由は、はじめ貴族の私邸で演奏することを想定して作曲したからではないかといわれています。ベートーヴェン25歳の時の作品で、番号は第2番ですが、第4番や第5番のような勇壮な内容ではなく、ハイドンやモーツァルトの影響が強く出た、ベートーヴェンとしては比較的規模の小さいものになっていますが、それでも随所にベートーヴェンの個性がうかがえる作品です。ちなみにモーツァルトの最後のピアノ協奏曲第27番は変ロ長調で、岸雲その後を継いだベートーヴェンの本来のピアノ協奏曲も変ロ長調で、管弦楽はフルート1、オーボエ2、ファゴット2、ホルン2、弦5部であり、これはモーツァルトの27番と全く同じ編成なのというのも奇遇ですなぁ。

 

 弦楽の前奏で主題が2度提示されてからピアノが登場します。アックスは大業に構えることなくそれこそモーツァルトの延長のような弾き方でこの曲を捉えています。ベートーヴェンはこの曲を何度も改訂していますが、まさにブラームスがベートーヴェンを乗り越えようと交響曲第1番で苦労したことを、このピアノ協奏曲でモーツァルトを乗り越えようと苦心したのではないでしょうか。そういう苦労を偲びながらこの曲を聴くと、プレヴィンとアックスがモーツァルト的な響きの中からベートーヴェンというこれから世に出る音楽家を鼓舞するような形でこの第2番を捉えて演奏している様が目に浮かびます。やはりいい演奏です。

 

 

 

 

 

 そして、後半はウト・ウギによる独奏によるベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲です。1980年代はバリバリの現役でこのサヴァリッシュとブラームスのヴァイオリン協奏曲なんかも録音していましたが今となっては過去の名前ですな。当時はウーと・ウー技なんて表記もされていたようですが、最近は、ウト・ウギと表記されることも多いようです。小生の記憶の中でも、ウト・ウギの方が標準になっています。そして、サヴァリッシュというとEMIとかフィリップスのイメージが強いのですが、この80年代はRCAにも録音をしていました。このブログではNHK交響楽団を振ったベートーヴェンも取り上げていますが、その頃の一連の録音なんでしょう。

 

 

 さて、ここで収録されている演奏はウト・ウギの代表盤の一つなんでしょうが今ではすっかり忘れ去られています。ルックスは良く、イタリア貴族の出身という出自も売出しにあたってのキャッチコピーだったような気がします。こちらの録音はロンドン交響楽団を使ってのキングスウェイホールでの録音です。プロデューサーがチャールズ・ゲルハルトということでロンドンでの録音となったのでしょう。

 

 第1楽章はやや早めのインテンポでサヴァリッシュは音楽の骨格を提示しています。ウト・ウギはその流れにちょっと贖うような形で割り込んでいきます。ヴァイオリンはややオンマイクで拾われていますから、バランス的には強めです。ただ今聴くと、音色は綺麗なんですか深みがちょっと不足しているなかなぁという印象です。カデンツァはフリッツ・クライスラーを使用していて安定性は感じますが、自己主張はあまり感じららません。

 

 スター性のあるメンツで華を狙ったのでしょうがこの時期のRCAは低迷していたのを象徴している様な演奏なのでしょうかねぇ。一度聴いてみてください。