オーケストラの少女 | geezenstacの森

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オーケストラの少女

 

[原題]One Hundred Men and a Girl

[製作] ユニヴァーサル、アメリカ

[製作年]1937

[上映時間]87分

 

 

スタッフ

監督: Henry Koster ヘンリー・コスター

アソシエイト・プロデューサー: Joe Pasternak ジョー・パスターナク

原作: Hans Klaly ハンス・クレーリー

脚本: Charles Kenyon チャールズ・ケニヨン

Bruce Manning ブルース・マニング

James Mulhauser ジェームズ・マルホウザー

撮影: Joseph Valentine ジョゼフ・ヴァレンタイン

音楽監督: Charles Previn チャールズ・プレヴィン

歌: Frederick Hollander フレデリック・ホランダー

Sam Coslow サム・コスロウ

キャスト(役名)

Deanna Durbin ディアナ・ダービン (Patricia_Cardwell)

Adolphe Menjou アドルフ・マンジュウ (John_Cardwell)

Alice Brady アリス・ブラディ (Mrs._Frost)

Eugene Pallette ユージン・ポーレット (John_G._Frost)

Mischa Auer ミッシャ・オウア (Michael)

Billy Gilbert ビリー・ギルバート (Garage_Owner)

Alma Kruger アルマ・クルーガー (Mrs._Tyler)

Jack Smart  (Stage_Doorman)

Jed Prouty ジェッド・プラウティー (Bitters)

Jemerson Thomas  (Russell)

Howard Hickman ハワード・ヒックマン (Johnson)

Frank Jenks フランク・ジェンクス (Taxi_Driver)

Christian Rub クリスチャン・ラブ (Brandsetter)

Gerald Oliver Smith  (Stevens)

Jack Mulhall ジャック・マルホール (Rudolph)

Leopold Stokowski レオポルド・ストコフスキー (Stokowski)

 

 この作品、入院していた昨年の2月に取り上げたDVD10枚組「音楽映画コレクション」の中に含まれていたものですが、「グレンミラー物語」、「カーネギー・ホール」、「グレート・ワルツ」の3作品を取り上げたのみで止まっていました。入院も検査入院だったので、ただベットに寝ていればいいというものではなく、けっこう忙しかったので止まっていたものです。その後友人に貸してあったので、ようやく最近、鑑賞することができました。

 

 

 この映画は、きらきらと輝く球体の周りを回るユニヴァーサルのマークから始まります。そのバックにはドラムロールとトランペットでチャイコフスキーの交響曲第5番の4楽章の主題が先取られたメロディが流れます。そして、場面はいきなり、ストコフスキー指揮するチャイコフスキーの『交響曲第五番』の華麗な第4楽章をバックに 『One hundred men and a girl』 のタイトルが流れます。 この演奏が映画用にカットされているとはいえちゃんとコーダまで演奏されます。その指揮姿のかっこいい事。ノータクト・大きな身振りのパフォーマンスで、彼独特の力感あふれる指揮姿にしばし魅了されます。当時50歳のストコフスキーは長身ですらっとしたその容姿は指揮界のプリンスだったのでしょうね。

 

 

 それにしても、3段のひな壇の指揮台に、オケもこれまた4段のステージに鎮座していましす。映画ならではの演出でしょうがオケの配置はストコフスキーの考案した左から第1、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロという配列が確認出来ます。そして、最上段後方にオーケストラ中央に回り込むような形で9挺のコントラバスが勢揃いしています。まさに壮観です。でも、このステージがセットで作られたものだということは、ストコフスキーが引き上げてくる舞台の袖がベニヤで仕組まれていシーンが映し出されていて丸分かりです。このセットは最後の失業者のオーケストラのコンサート・シーンでも使われています。

 

 

  物語は、1930年代のアメリカを襲った大恐慌の時代に、職にあぶれたトロンボーン奏者の娘(ディアナ・ダービン)が、ふとしたきっかけで富豪の夫人の知遇を得、失職中の音楽家たちのオーケストラ結成に乗り出し、著名な指揮者ストコフスキーに初演の交渉をするが断られます。しかし、あきらめない彼女は数々の偶然を幸運に転じながら、ある晩ストコフスキーの館に全楽員を忍び込ませ演奏を始めます。一階から三階まで螺旋状に連なる階段を埋め尽くす彼らの演奏するリストの『ハンガリー狂詩曲第二番』を、驚いて階上から見下ろすストコフスキー。不安げな顔でその彼を見守りながら奏でる楽員。が、徐々にこの楽団の演奏に引き込まれ、片手で小さくリズムを取りだすと、やがてあの独特の大きな身振りで指揮を始めるシーンはこの映画のクライマックスです。 

  新オーケストラのお披露め演奏が終わった会場で、ストコフスキーはこの新楽団誕生の功労者のこの少女を観客に紹介します。歓びに満ちた彼女は、客のアンコールに応え、青春をたたえる「椿姫」のアリア『乾杯の歌』を歌いハッピーエンドの内に幕が下ります。

 

 映画の中で実際に演奏されるのはリストの「ハンガリー狂詩曲第2番」だけですがこのコンサートのプログラムには以下の曲目になっています。

リスト/ハンガリー狂詩曲第2番

モーツァルト/「羊飼いの王様」から「彼女を愛そう、ともに生きよう」

ラヴェル/道化の朝の歌

ブラームス/交響曲第2番ニ短調 

2曲目のモーツァルトなんかはけっこうマニアックな曲目です。もちろんストコフスキーの編曲なんでしょうね。ひょっとするとフィラデルフィア管弦楽団の演奏会で取り上げられたプログラムだったのかも知れません。

 

  この映画は人の善意、底抜けの楽観性を前面に押し出したアメリカンドリームを描く典型的なハリウッド映画に仕上がっています。 

 

  ホームドラマにクラシック音楽を組み合わせるという初めての試みに挑んだ本作は、スター指揮者ストコフスキーの出演も話題となって空前の大ヒットを記録しました。 第10回アカデミー賞では作品賞を含む5部門にノミネートされ、作曲賞を受賞しています。当時財政難に陥っていたユニヴァーサルは前年の『天使の花園』とこの映画の成功によって倒産を免れ、ダービンは一躍トップスターの仲間入りを果たしました。

 

 

 この名作、ノベライズもされて少年少女向きの本として出版された事があります。作者はクラーリィ、翻訳は大庭さち子でした。処分してはいないので持ってはいるのですが、今回この一文を書くために探しましたが見つかりませんでした。緑色の表紙で映画のイメージと全然合っていなかった記憶があります。

 

 

 この記事を書くのは本が出てきてからと思っていましたが、書いてしまってからひょんなところから本が出てきました。やはり記憶は正しかったようで表紙は緑色でした。小生の所有する本は秋元書房というところから発行されたもので翻訳は若城希伊子の訳でした。扉に4ページに渡り映画のシーンの写真があり豪華な内容です。奥付を見ると昭和46年の発行でいわゆる初版ものです。しかし、再出版もので、最初は昭和33年に発売されています。しっかりした内容で8章立てになっていてお子様向けの内容では無いですし、活字も小さいので今では読むにも一苦労します。

 

第1章 光の雨

第2章 拾った財布

第3章 フロスト邸

第4章 百人のオーケストラ

第5章 コンダクター

第6章 黒い蝶

第7章 トッブ記事

第8章 トラヴイアタ

 

という具合になっています。それにしても、一般のこの映画の解説もそうなんですがフィラデルフィア管弦楽団のことをどうしてフィラデルフィア交響楽団と表記しているのでしょうね。どうも、クラシックに造形が深い人の訳とは思えないのが残念です。