カーネギーホール | geezenstacの森

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カーネギーホール

原題 Carnegie Hall
製作年 1947年
製作国 アメリカ
配給 ユナイト=松竹

スタッフ
監督 エドガー・G・ウルマー
製作 ウィリアム・ルバロン 、 ボリス・モロス
原作 シーナ・オウエン
脚色 カール・カム
撮影 ウィリアム・ミラー
衣装デザイン マックス・リー
音楽 ジグモンド・クラムゴールド
指揮 チャールズ・プレヴィン
音楽演奏 ロバート・ラッセル・ベネット

キャスト
ノラ・ライアン:マーシャ・ハント
トニー・サレルノ(父):ハンス・ジャレイ
トニー・サレルノ(子):ウィリアム・プリンス
ジョン・ドノバン:フランク・マキュー
ルース・ヘインズ:マーサ・オドリスコール
Walter_Damrosch_(1891~1909) : ハロルド・ドレインフォース

 ニューヨークのカーネギー・ホールで働く掃除婦のノラは、息子のトニーに著名な音楽家の演奏を聴かせ、将来クラシック音楽の世界で大成してくれることを願っている─。ワルター、ルビンシュタインといった世界の至宝が、音楽の殿堂を舞台に見事な演奏を繰り広げる音楽映画。---データベース---

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 音楽会場として世界的に著名なニューヨークのカーネギー・ホールと、同堂に関係の深い演奏家とを紹介する半ば記録的な劇映画といってもいいでしょう。一応物語はありますが、大半は当時の大音楽家たちの演奏をダイジェストに収録しています。

 小生が特に気を弾いたのは最初に登場する指揮者のウォルター・ダムロッシュです。この名前気になったので調べてみたら、ニューヨークフィルとはライバル関係にあった「ニューヨーク交響楽団」の常任指揮者を務めていた人です。この「ニューヨーク交響楽団」は後に現在のニューヨークフィルと合併してダムロッシュも1902年から1903年のシーズンは音楽監督を務めています。だ、この映画ではニューヨークフィルが全面的に演奏を引き受けていますが、映し出される字幕には、「he Philharmonic-Symphony Society of New York」と表示されています。冒頭登場するダムロッシュは俳優が演じていますが、後半登場するのはダムロッシュ本人でマーシャ・ハント演ずるノラと語らっています。

 また、クレジットを見ると分かるのですが、指揮がチャールズ・プレヴィンとなっています。これは多分劇中でソプラノのリリー・ポンスが歌う場面での指揮を担当していたのがこのプレヴィンと思われます。また、音楽演奏とクレジットされているロバート・ラッセル・ベネットは主人公のトニー・サルレノの演奏しているピアノの吹き替えを担当しているような気がします。

 一応、物語としてはサルレノ親子2代のカーネギーホールにまつわる物語ということになりますが、それよりも登場する音楽家が凄過ぎて、物語は二の次という感じがしてしまいます。特に最後の演奏会のシーンは撮って附けたような展開で笑っちゃいます。母親がカーネギー・ホールの事務の仕事をしているというのに当夜の出演者の演奏を知らない訳はなく、ストコフスキーの演奏も唐突で、チャイコフスキーの交響曲第5番の第2楽章の演奏で舞台を降りてしまうというのも不可解です。

 まあ、映画のための演奏ですからしょうがないのかもしれませんが、グレゴール・ピアティゴルスキーの白鳥にしても普段のピアノの伴奏ではなく、ハープが6台という派手な演出になっていましたし、ハイフェッツのチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲などは第1楽章だけを演奏して舞台から降りてしまいます。

 興味深かったのは、ロジンスキーの指揮姿で、なんとストコフスキーばりに指揮棒を使わず10本の指を駆使して華麗な指揮を披露しています。使われていた音楽は以下のようになっています。

音楽
ピアノ五重奏曲第2楽章(シューマン)
楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』第1幕前奏曲(ワーグナー) ブルーノ・ワルター指揮ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団
歌劇『ラクメ』から「鐘の歌」 (ドリーブ) ソプラノ:リリー・ポンス
組曲『動物の謝肉祭』から「白鳥」(サン=サーンス) チェロ:グレゴール・ピアティゴルスキー
歌劇『カルメン』から「セギディーリャ」(ビゼー) メゾソプラノ:リーゼ・スティーヴンス
交響曲第5番「運命」 第4楽章(ベートーヴェン) アルトゥール・ロジンスキ指揮ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団
英雄ポロネーズ(ショパン) ピアノ:アルトゥール・ルービンシュタイン
組曲『恋は魔術師』から「火祭りの踊り」(ファリャ) ピアノ:アルトゥール・ルービンシュタイン
「オー・ソレ・ミオ」(ディ・カプア) テノール:ジャン・ピアース
歌劇『シモン・ボッカネグラ』から「Il lacerato spirito(苦悩する心)」(ヴェルディ) バス:エツィオ・ピンツァ
歌劇「ドン・ジョヴァンニ」から「Fin ch'han dal vino(シャンパンの歌)」(モーツァルト) バス :エツィオ・ピンツァ
「Beware My Heart」、「The Pleasure's All Mine」 ヴォーン・モンロー
ヴァイオリン協奏曲 第1楽章(チャイコフスキー) フリッツ・ライナー指揮ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団、ヴァイオリン:ヤッシャ・ハイフェッツ
交響曲第5番 第2楽章(チャイコフスキー) レオポルド・ストコフスキー指揮ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団
「57番街のラプソディ」 トランペット:ハリー・ジェイムス