ハイティンク/ベルリン・フィル
ヨーロッパ・コンサート1993 フロム・ロンドン
【収録楽曲】
1:チャイコフスキー/ 幻想序曲「ロミオとジュリエット」
2:モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲 第3番ト長調KV216
3:ストラヴィンスキー/バレエ「春の祭典」
4 : チャイコフスキー /バレエ「くるみ割り人形」より〈花のワルツ〉
指揮:ベルナルト・ハイティンク
ヴァイオリン:フランク・ピーター・ツィンマーマン
演奏:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
収録日:1993年5月1日
収録場所:ロイヤル・アルバート・ホール
カラー: カラー
画面サイズ:スタンダード
画面アスペクト: 4:3
音楽仕様: ステレオ
録音方式: リニアPCM
言語: 独語
字幕: 韓国語

ハイティンク指揮による、93年ロイヤート・アルバート・ホールでのコンサート映像。チャールズ皇太子のインタビューをはじめ、ホールの説明などのドキュメンタリー映像も特典として収録。
1993年のヨーロッパ・コンサートは、ベルナルド・ハイティンクの指揮により行われました。舞台となったのはロンドンのロイヤル・アルバート・ホール。古代の円形劇場を模したこの巨大なホールは、毎年夏に開催されるBBCプロムスの舞台としてもよく知られています。当時ハイティンクはコヴェント・ガーデンのロイヤル・オペラ・ハウスの音楽監督を務め、ロンドンではおなじみの存在でした。そういった意味では、ハイティンクにとっては特別なコンサートというより、一連のコンサートの一つとして捉えていたのではないでしょうか。
かつて知ったるホールで、音響的なものも全て熟知しているのでしょう。安心して聴いていられます。プログラムはチャイコフスキーの幻想序曲《ロメオとジュリエット》で幕を開けます。ハイティンクの推進力ある指揮で、迫力ある熱演を聴かせてくれます。ハイティンクは日本での評価は、あまり高いとはいえませんが、レコード時代は彼の演奏が廉価盤でどんどん投入されていましたので、個人的にはよく聴き込んでいます。このロメジュリもコンセルトヘボウを指揮したものでよく聴きました。はったりこそありませんが堅実な演奏で、雄弁でスケールの大きな演奏であったと記憶しています。ヨーロッパではベルリンフィルとコンセルトヘボウの評価はそれほど変わりません。ハイティンクはここでも気負いなく自身の音楽を展開しています。聴いていて心地いいですねぇ。
そして2曲目はフランク・ペーター・ツィンマーマンによるモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第3番です。ツィンマーマンにとっては、サヴァリッシュ&ベルリン・フィル(1995年)との録音や、コンサートで度々取り上げているお得意の作品です。ツィンマーマンならではの端正かつ美しい演奏で、凛とした気品溢れるモーツァルトに歌い上げられています。イントロの序奏からツィンマーマンはハイティンクとの共演を楽しんでいるように微笑んでいて、金鳥というものが感じられません。そういう余裕をもった演奏なんでしょう。
メイン・プログラムはストラヴィンスキーの『春の祭典」です。ハイティンクはロンドン・フィル、ベルリン・フィルと二度にわたってストラヴィンスキーの三大バレエを録音していますが、この1993年の演奏は、ハイティンクらしい正攻法の指揮、世界最高のオーケストラの高い技術力で、重厚なストラヴィンスキーのサウンドを鳴らしています。
若き日のロンドンフィルとの演奏もよく聴き込んだものですが、このベルリンフィルとの演奏はレコーディングもしていることもあり、安心して聴いていられます。然りと譜面を見ながら指揮する姿はひと世代前の指揮者のイメージがありますが、的確な指示を出す指揮姿は見ていてカッコいいと思え、思わず食い入るように見てしまいます。ハイティンクはどことなく温厚なイメージがありますが、その指揮姿はアグレッシヴで変拍子も的確に振り分けています。
演奏は全体にゆっくりめのテンポですが、メリハリの利いた音楽はベルリンフィルから最高のサウンドに引き出しています。久しぶりにいい「春の祭典」を楽しむことが出来ました。
この演奏会にはアンコールがあり、チャイコフスキーのバレエ「くるみ割り人形」より〈花のワルツ〉が演奏されています。春の祭典にはハープも使われていますから、このアンコールは妥当なものでしょうね。
ボーナスには、チャールズ皇太子のインタビューやロイヤル・アルバート・ホールの説明が収録されたドキュメンタリー映像も付いていますが、ここでも字幕は韓国語ですから理解出来る人は堪能出来るのでしょうなぁ。