ヨーロッパ・コンサート1992 フロム・マドリード | geezenstacの森

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ヨーロッパ・コンサート1992 フロム・マドリード

曲目
● ヴェルディ:歌劇『運命の力』~序曲、歌劇『ドン・カルロ』~私は望みを失った
● ベルリオーズ:『ファウストの却罰』~ラコッツィ行進曲/自然への祈り
● シューベルト:交響曲第7番ロ短調『未完成』
● ワーグナー:『ニュルンベルクのマイスタージンガー』第1幕への前奏曲
● ワーグナー:『ワルキューレ』~ジークムントの愛の歌『冬の嵐はすぎ去り』
● ワーグナー:『神々の黄昏』~夜明けとジークフリートのラインへの旅/ジークフリートの葬送行進曲/終曲

 プラシド・ドミンゴ(テノール)
 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 ダニエル・バレンボイム(指揮)

 収録:1992年5月1日 エル・エスコリアル教会堂、スペイン(ライヴ)

 バルセロナ・オリンピック直前の開催ということで、マドリード近郊のエスコリアル教会堂での開催。指揮はバレンボイムで、ゲストはスペインの名テノール、プラシド・ドミンゴ。曲目はヴェルディ、ベルリオーズ、ワーグナーにシューベルトの『未完成』というものです。

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 1992年のヨーロッパ・コンサートの舞台はスペイン、マドリードの北西にある修道院、エル・エスコリアル。ここは16世紀末にフェリペ2世が修道院兼王宮として建設し、教会はスペイン-ルネサンスの代表的な建築物で、美しい響きを有しています。スペイン生まれの世界的テノール歌手プラシド・ドミンゴを迎え、ヴェルディ、ベルリオーズ、ワーグナーを高らかに歌い上げています。

 この年はフル編成のベルリンフィルの音楽を聴くことが出来ます。ただ、教会の礼拝堂というシュチュエーションで、冒頭のベルディの歌劇『運命の力』~序曲からバレンボイムはテンポ設定に苦慮していた跡が伺えます。何しろ残響が長いので休止の後、次のフレーズに移ろうとしてもまだ音が残っているのでバレンボイムは通常よりも遅いテンポでの演奏になっていました。

 この語、ドミンゴが登場するのですが、こちらはマイクを使った歌声でしたが、朗々とした響きは健在です。ドミンゴは歌劇『ドン・カルロ』~「私は望みを失った」とファウストの却罰』~「自然への祈り」、そしてワルキューレからジークムントの愛の歌『冬の嵐はすぎ去り』の3曲を歌っています。この第2回までオペラ歌手が登場しています。

 バレンボイムとアシュケナージの大きな違いはオペラを振るか振らないかで、バレンボイムの存在感はまさにそこに尽きるでしょう。この第2回を任せられたバレンボイムは通俗名曲の「未完成」意外全てオペラに絡んだ楽曲を演奏しています。

 オーケストラ・プログラムは、シューベルトの「未完成」とワーグナーのオペラからの管弦楽作品です。残響にはやや手こずっている巻はありますが、バレンボイムのスケール豊かな音楽作りと、渋味のある深い響きを追求した演奏で、聴衆を唸らせます。

 未完成は残響を考慮したゆっくりめの演奏ですが、この曲にはその方が合うでしょう。まあ、集結部が全奏で終わらないというところもこのホールでの響きを考慮したものとなっていました。個人的な乾燥ですが、バレンボイムの指揮は、アバドより分かりやすいもので音楽の起伏を体全体を使って巧く表現しています。

 続くワーグナーの楽曲も最初の「ニュルンベルクのマイスタージンガー」はスケーネの大きい演奏でしたがやはりテンポの点で苦慮していて最後の音は響かないようにばっさりと短く切っていたのが印象的です。

 『神々の黄昏』~「夜明けとジークフリートのラインへの旅」では冒頭画面がピンぼけになり、一瞬画面がいかれたのではという気になったのですが、何とドームの天井をピンぼけで移すという演出でした。ちょっとやり過ぎですかなぁ。

 このヨーロパコンサート、1991年よりはこの歳の方が楽しめました。