ミッドウェー海戦以降も日本海軍は多大な犠牲を払いながら、米海軍と互角以上の戦いを繰り広げて来ました。
1942年10月の南太平洋海戦では米主力空母「ホーネット」を葬り、「エンタープライズ」の飛行甲板を破壊せしめて、太平洋における稼働米空母の数を一時的に０にするなど、米軍側に「史上最悪の海軍記念日」とまで言わしめています。
しかし日米開戦から１年を過ぎると、次第に国力の差が露呈し始めます。
米軍は大戦後期には、米国工業力の申し子とも言うべきエセックス級大型空母を２ヶ月に１艦のペースで就役させるなど、戦術的に個々の海戦で敗れる事はあっても、着実に太平洋の戦局を優位に進めて来ました。
対する日本側は、押されつつある戦線を主力大型空母・「翔鶴」「瑞鶴」や基地航空部隊が必死に支えていましたが、1943年には空母の艦載機搭乗員も基地航空戦へ動員され、その結果失った航空機と熟練搭乗員を補填することが困難な状況に陥る事に。
そして真珠湾攻撃以来、奮戦してきた翔鶴も沈む時を迎えます。
1944年６月のマリアナ沖海戦でした。
マリアナ沖海戦はマリアナ諸島をめぐる戦いの一つです。マリアナ諸島が米軍の手に落ちると、戦略爆撃機B-29の日本本土爆撃往復が可能となってしまう為、日本側はこれら地域を絶対国防圏と認識し、サイパン島を最重要拠点としていました。同海戦の参加空母は日本９、米国15。南太平洋海戦以来の空母対決となり、かつ史上最大の機動部隊決戦となりました。
結果は日本側航空機搭乗員の技量レベルの低下と、米側の高性能レーダーやVT信管（近接信管）の登場、加えて時代遅れとなった日本の零戦に対し米国は高性能戦闘機を投入するなどで日本は惨敗し、主力空母「翔鶴」「大鳳（たいほう）」、改造空母「飛鷹（ひよう）」を失ってしまいます。
いずれもWikipediaより
翔鶴は「翔鶴型」空母の１番艦として1941年８月に竣工。それまでの日本海軍のノウハウを注ぎ込んで完成させた最新鋭の大型正規空母でした。それ故に姉妹艦・瑞鶴と共にその完成を待って真珠湾攻撃が行われたとされています。日米開戦以来、ミッドウェーを除く主要海戦に参加し続け、度々損傷しますがそれに見合うだけの戦果をあげて来ました。
大鳳は1944年３月に竣工。これまでの空母が飛行甲板に命中弾を受けるとその機能を失ってしまう為、飛行甲板に装甲を施した大型装甲空母として誕生しました。マリアナ沖海戦では機動部隊の旗艦を務めます。
飛鷹は「隼鷹（じゅんよう）型」空母の２番艦として（飛鷹型１番艦とする分類もある）1942年７月に竣工。元は建造途中の貨客船「出雲丸」を改装した商船改造空母で、艦載機搭載能力はミッドウェーで沈んだ中型主力空母「蒼龍」に匹敵しました。
上左の写真は隼鷹型空母。Wikipediaではこの写真を飛鷹としていますが、姉妹艦・隼鷹とする別資料もありハッキリしていません。隼鷹は終戦まで沈まなかったので写真が多いのですが、飛鷹はほとんど残っていません。上右はその数少ない１枚で、飛鷹甲板上における消火放水訓練中の様子。艦橋と一体型となった傾斜煙突が印象的です。
この写真は194４年６月、マリアナ沖海戦へと向かう日本主力艦隊（「写真 日本の軍艦 第３巻」光人社より）。左から、艦首の一部が見える空母・大鳳、隼鷹型空母、戦艦・長門、翔鶴型空母の各艦。もし翔鶴型空母が翔鶴ならば最後の艦影ともいうべきか、と引用本には書かれています。
マリアナ沖海戦で日本海軍は、アウトレンジ戦法という日本側艦載機の航続距離の長さを生かし、敵の射程外から攻撃をかける戦術を取りましたが、搭乗員の負担が極めて大きく、多くの艦載機が撃墜・未帰還となってしまいました。
翔鶴と大鳳は敵航空機の攻撃こそ受けませんでしたが、潜水艦の雷撃を受け沈没。主力空母２艦が沈んだ翌日には、飛鷹も米軍機の攻撃で沈没してしまいます。翔鶴では約1260名、大鳳は約660名、飛鷹は約250名の将兵が犠牲となりました。
この海戦の敗北で日本は空母決戦の能力を事実上、喪失してしまいます。
以下、沈没地点データは「Googleマップで見る軍事的スポット」参照。
翔鶴 沈没地点
大鳳 沈没地点
飛鷹 沈没地点
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