若手漁師が増加傾向に
(公明新聞10月10日付)
担い手の高齢化に伴う後継者不足に苦しんできた漁業に光が差してきた。農林水産省の「漁業就業動向調査」によると、2015年の漁業就業者数は、前年比4%減となる16万6,610人。このうち、60歳以上が全体の約半数を占める状況は例年と同様だったものの、15~24歳が前年比6%増の6,170人となった。同年齢層の増加は3年連続で、25~59歳の年齢層が減少傾向にある中で、際立つ動向だ。
水産庁漁政部企画課は若手漁師が増えた要因の一つとして、「新規就業者の確保に向け、官民が進めるさまざまな支援策が有機的に結びついてきたことが大きい」と説明する。同庁による「新規漁業就業者総合支援事業」は漁業を担う若者の確保や育成を目指し、就業の準備→就業→定着までの各段階に応じて民間団体が実施する研修などを支援。「現場でのニーズが高く、活用が増えている」のが現状だ。同事業に関して、2017年度予算概算要求には2016年度当初予算の倍近い11億円を計上している。
一般社団法人・全国漁業就業者確保育成センターが東京や大阪などで毎年、主催するイベント「漁業就業支援フェア」も功を奏している。漁師に関心を持つ若者が就業情報や知識を得られるほか、若者と漁協や会社とのマッチングなどを進めており、今年3月に都内で開かれたイベントには、1日で56団体が出展し、来場者は372人に上った。
同センターの担当者は、「これまで10年以上、継続してフェアを催す中で実際の就業につながったケースは多い」と強調。さらに、「漁師になりたい人は潜在的にいる。スマートフォンの普及で、フェアやセンターの認知度が高まり、就業情報を得やすくなっているのではないか」と話す。
漁師を志す若者を後押ししようと、独自の支援に乗り出す自治体も少なくない。京都府は、地元の漁協や市町などと連携した研修事業「海の民学舎」を昨年4月からはじめ、今月7日現在、府内外から応募した14人が研修に取り組む。研修期間は2年間で、授業料(年間約12万円)を納める必要があるが、研修後に、府内で5年間、継続して漁業に従事した場合には返還される。
事業の事務局を担う府水産事務所の担当者は、「ここで育った漁師が将来、各地域に溶け込み、京都の漁業振興の一翼を担うことができるよう、しっかりサポートしていく」と意気込む。
水産学博士としての見識を生かし、国の漁業就業者支援の充実をリードしてきた公明党の横山信一参院議員は、「漁師になる若者の増加は喜ばしいこと。ただ新規参入の際、漁船の購入などにかかる資金面の負担が大きい上に、漁法ごとに異なる技術の習得に長期間を要しなければならない。”次代の宝”となる若い漁師がやりがいを持てるよう、支援の充実に一層、力を尽くしていく」と決意を新たにしている。
国際捕鯨委員会について考える
「鯨を食べなくなったのにどうして公明党は捕鯨再開を目指しているの?」との質問を受けたことがある。これには、鯨を「食べなくなった」のではなく、商業捕鯨が禁止されているので「食べることができなくなった」のだと答えたが、捕鯨に対しての理解が薄れていると感じた出来事であった。そこで、IWCについて考えてみたいと思う。
昨年12月から今年2月まで、NEWREP-Aと呼ばれるクジラ資源調査が南極海で実施された。今回は、シーシェパードに妨害されることなく調査できたことで、南極海におけるクロミンククジラの繁殖状況が健全であることや、ザトウクジラの資源量が急速に回復していることなど多くの成果を得た。
IWCのもとで科学調査を実施しているのは日本だけで、その目的は商業捕鯨再開に向けて、資源管理に資するためだ。IWCは、国際捕鯨取締条約に基づいて「鯨類の適当な保存を図って捕鯨産業の秩序ある発展を可能にする」ことを目的に1948年に設立された。1982年には商業捕鯨モラトリアムが採択されたので現在は商業捕鯨の禁止状態が続いている。
商業捕鯨モラトリアムには、1990年までに鯨類資源の包括的な資源評価を実施してモラトリアムを見直すという条件が付されているが、IWCで多数を占める反捕鯨国はモラトリアム見直しを拒み続けている。他方、IWCは、1994年に科学的にクジラ資源の捕獲限度を算出する改訂管理方式(RMS)を採択したが、反捕鯨国はこれに基づくモラトリアム解除を進めようとしない。
IWCは捕鯨産業の秩序ある発展のために組織された。当初は科学的根拠がないとの理由で否決されてきた商業捕鯨モラトリアムも捕鯨再開のための一時的措置に過ぎない。ノルウェーとアイスランドは、商業捕鯨モラトリアムに「異議申し立て」を行って商業捕鯨を続けている。日本は、このような選択をせずに国際理解の基で商業捕鯨再開を目指してきた。
日本は、科学的根拠のない議論に付き合い、法的手続きであるモラトリアム解除の見直しさえ行わないIWCに参加し続けてきた。そればかりか、南極海調査ではシーシェパードによる危険な妨害行為にさらされてきた。日本は反捕鯨国の理解を得るために多大な努力を惜しみなく続けてきたのだ。国際機関であるIWCそのものの存在理由を考え直すべき時が来ていると思う。
水産養殖施設が激甚指定に
(公明新聞10月8日付)
北海道や東北を中心に襲った台風10号などによる豪雨災害で、政府は7日、被災したホタテやカキ、昆布をはじめとする養殖施設の復旧事業を支援するため、復旧費用の9割を国が負担する激甚災害の支援対象に養殖施設を追加することを閣議決定した。
今回の台風被害では、既に浸水被害などに見舞われた農地や損壊した公共土木施設の復旧事業が既に激甚災害の支援対象に指定されており、養殖施設は東日本大震災以来の指定となる。
公明党は、被災地の現地調査を踏まえ、深刻な被害を受けた水産動植物の養殖施設に対する早期復旧支援を政府に要請。山口那津男代表と井上義久幹事長の衆参両院での代表質問をはじめ、国会質問でも再三にわたって十分な支援を求めていた。