国際捕鯨委員会について考える
「鯨を食べなくなったのにどうして公明党は捕鯨再開を目指しているの?」との質問を受けたことがある。これには、鯨を「食べなくなった」のではなく、商業捕鯨が禁止されているので「食べることができなくなった」のだと答えたが、捕鯨に対しての理解が薄れていると感じた出来事であった。そこで、IWCについて考えてみたいと思う。
昨年12月から今年2月まで、NEWREP-Aと呼ばれるクジラ資源調査が南極海で実施された。今回は、シーシェパードに妨害されることなく調査できたことで、南極海におけるクロミンククジラの繁殖状況が健全であることや、ザトウクジラの資源量が急速に回復していることなど多くの成果を得た。
IWCのもとで科学調査を実施しているのは日本だけで、その目的は商業捕鯨再開に向けて、資源管理に資するためだ。IWCは、国際捕鯨取締条約に基づいて「鯨類の適当な保存を図って捕鯨産業の秩序ある発展を可能にする」ことを目的に1948年に設立された。1982年には商業捕鯨モラトリアムが採択されたので現在は商業捕鯨の禁止状態が続いている。
商業捕鯨モラトリアムには、1990年までに鯨類資源の包括的な資源評価を実施してモラトリアムを見直すという条件が付されているが、IWCで多数を占める反捕鯨国はモラトリアム見直しを拒み続けている。他方、IWCは、1994年に科学的にクジラ資源の捕獲限度を算出する改訂管理方式(RMS)を採択したが、反捕鯨国はこれに基づくモラトリアム解除を進めようとしない。
IWCは捕鯨産業の秩序ある発展のために組織された。当初は科学的根拠がないとの理由で否決されてきた商業捕鯨モラトリアムも捕鯨再開のための一時的措置に過ぎない。ノルウェーとアイスランドは、商業捕鯨モラトリアムに「異議申し立て」を行って商業捕鯨を続けている。日本は、このような選択をせずに国際理解の基で商業捕鯨再開を目指してきた。
日本は、科学的根拠のない議論に付き合い、法的手続きであるモラトリアム解除の見直しさえ行わないIWCに参加し続けてきた。そればかりか、南極海調査ではシーシェパードによる危険な妨害行為にさらされてきた。日本は反捕鯨国の理解を得るために多大な努力を惜しみなく続けてきたのだ。国際機関であるIWCそのものの存在理由を考え直すべき時が来ていると思う。