よこやま信一公式ブログ -18ページ目

海洋ごみ対策が動いた!(2)

改正海岸漂着物処理推進法には、3Rの推進をあえて書き込んだ。循環型社会形成推進基本法とその他の関係法令による施策としての3Rを推進することは、プラスチック製品が海洋に流出することを効果的に抑制する。しかも、それは沿岸市町村だけではなく、海のない内陸市町村を含む、すべての地域の共通課題として取り組むこととした。

マイクロプラスチックの発生抑制を、「義務」とするか「努力」とするかに関しては、経済産業省と環境省とでは考え方が大きく異なった。マイクロプラスチックの発生抑制の義務化は国際的な潮流であり、マイクロプラスチックが濃密に集積する日本として先進的な取り組みを実施したい環境省と、我が国の優れた技術が集結するものづくり産業の現場では研磨剤など多くのマイクロビーズが使用されており、産業振興としてできるだけマイクロプラスチック使用の規制を避けたい経済産業省とは、考え方が正反対といってもよいものであった。議論の末に、すべてのマイクロプラスチックの使用を規制するのではなく、海洋に流出するマイクロビーズや廃プラスチックを抑制することで決着をみた。すなわち「通常の用法による使用後に公共の水域又は海域に排出される蓋然性が高いと認められる製品へのマイクロプラスチックの使用の抑制に努めるとともに、廃プラスチック類の排出が抑制されるように努めなければならない」としたのだ。

海洋ごみ対策が動いた!(1)

明年、日本が議長国となるG20サミットを前に、2015年以来G7やG20で課題となってきた海洋のプラスチックごみ対策が大きく前進することになった。6月15日の参議院本会議において海岸漂着物処理推進法改正案が全会一致をもって成立した。今後、法的根拠をもってこれまで以上に海洋ごみの実態把握や回収処理にあたるほか、プラスチックごみの発生抑制などに総合的に取り組むことになる。

2015年のG7エルマウ・サミット以来、G7サミットやG7環境大臣会合でプラスチックごみが議題として取り上げられ、エルマウ・サミットでは「海洋ごみ問題に対処するためのG7行動計画」が策定された。2017年のG20サミットでは初めて海洋ごみが首脳宣言で取り上げられた。このG20ハンブルグ・サミットでは「海洋ごみに対するG20行動計画」の立ち上げに合意している。さらにこの年の12月に開催された国連環境総会(UNEA3)では、「海洋プラスチックごみ及びマイクロプラスチック」に関する決議が採択され、マイクロプラスチックを含めた海洋プラスチックごみの専門家グループを招集することになった。また、日本、韓国、中国、ロシアの海洋環境保全を目的とする北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)や日中韓三か国環境大臣会合(TEMM)など東アジアにおいても、ワークショップの開催など関係国の取り組みが強化されている。

マイクロプラスチックは、5㎜以下のプラスチックとされており、一次的マイクロプラスチックと2次的マイクロプラスチックに分類されている。1次的マイクロプラスチックの代表的なものは、洗顔料や歯磨きなどのスクラブ剤に利用されるマイクロビーズだ。米国、カナダ、英国、フランスではすでにマイクロビーズを含むパーソナルケア製品の製造や販売が規制されている。我が国では日本化粧品工業連合会が会員企業1,100社に自主規制を呼び掛けており、2016年に環境省が市場調査を行ったところでは、プラスチック製のマイクロビーズを含有する製品は、150製品中2製品にとどまっていた。これらの製造企業もプラスチック製以外のものに代替する準備を進めており、我が国は、早晩、マイクロビーズ・フリーとなる。もう一つの2次的マイクロプラスチックとは、レジ袋やトレーなどのプラスチック製品が適切に処理されずに投棄されると、紫外線や波浪等により細分化し劣化してマイクロプラスチックとなるものである。

マイクロプラスチックが注目されるのは、食物連鎖によって人間の健康に影響を及ぼす可能性があるからだ。

プラスチックはPCB等の残留性有機汚染物質(POPs)との親和性が良く、プラスチックが劣化する過程でこれらの有害物質を吸着する。有害物質を吸着したマイクロプラスチックがプランクトンと一緒に魚類等に摂食されると、消化されないマイクロプラスチックは排出されるが、有害物質は体内に残るため生物濃縮によって最終的には人間の健康にも影響を及ぼす可能性があるのだ。環境省の行った2014年の日本周辺海域のマイクロプラスチック調査によれば、その密度は172万個/㎢であった。これは北太平洋の16倍、世界の海の27倍に相当し、日本周辺海域は、マイクロプラスチックのホットスポットになっていることが分かった。やっかいなことに、マイクロプラスチックは回収が不可能という問題もある。したがって、マイクロプラスチックの原因物質であるプラスチック製品やマイクロビーズを海洋に流出させないことが最も重要な対策となる。

災害援護資金の貸付利率の引き下げ

今国会に提案されている第8次地方分権一括法案において、2016年10月の参議院予算委員会で私が訴えた災害援護資金の貸付利率の引き下げが実現する見込みです。

 

2016年10月の参議院予算委員会の質問は、夏から秋に北海道と東北地方を襲った台風災害に対し災害復旧と被災者支援を訴えたものでした。参議院公明党では、当時これらの被災地を回っていたのは私だけであったため急遽の当番となりました。現場に行かなければ分からない中小河川の防災対策の遅れや北海道の農地復旧限度額が他県に比べ極端に少ないなどの矛盾を指摘しました。これらは2017年度補正予算などによって見直しが進められています。

 

あわせて、被災者の生活再建ための制度である災害援護資金の貸付利率が3%と高利率であることを取り上げました。被災者支援には、災害弔慰金支給制度と平行して設けられている貸付制度に災害援護資金があります。貸付限度額は350万円で利率は3年間据置になっていますが、その後は3%になります。

 

3%の利息は市町村の運営事務費に充てられることになっていますが、熊本地震の時には熊本県から、2016年の台風災害においては北海道東北知事会から無利子化を求める要望が出ていました。被災者の生活再建のための貸付制度でありながら、3%の利率は高すぎるとの理由です。

 

災害援護資金の貸付利率は「災害弔慰金の支給等に関する法律」で3%と定められており、これは市町村の貸付制度の運営事務費に充てられることになっています。貸付利率の引き下げを求める私の質問に対し「市町村がこの貸付利率をどのように扱っているのかを実態調査し、貸付利率の妥当性を検討する」ことになりました。

 

翌年(2017年)に、私は、実態調査を踏まえた検討結果について報告を受けました。法律の文面通りに運営事務費に充てている市町村がある一方で、自治体単費による利子補給によって無利子化している市町村もあるという報告でした。現状は市町村によって様々な扱われ方になっており、とりわけ運営事務費に充てている市町村にとっては法改正によって無利子化されると、新たな財源をみつけなければなりません。この件に関しては、万事休すとなりました。

 

このような中、2016年の大雨災害で激甚災害の指定を受けた岩手県岩泉町から第8次地方分権に対して災害援護資金の貸付利率を条例によって変更できるようにする提案がなされたのです。法改正によって一律に無利子化するというのではなく、利率の設定は市町村にまかせて欲しいとの提案です。これが実現できれば、利息を運営事務費として利用する市町村の貸付利率はそのままに、利率の引き下げを望む市町村は財源に応じて利率を設定できるようになります。この提案は採択され、第8次地方分権一括法案として今国会に提案されました。今後は、この法案の速やかな成立を目指して参ります。

 

他方、東日本大震災および2017年の大雨災害の大分県と福岡県の被災者には特例措置が適用になっています。すなわち、償還期間は10年間のところを13年間に延長、据置期間は3年のところを6年に延長、連帯保証人を立てる場合の貸付利息は3%のところを無利子に引き下げています。これらの特例措置は、2018年3月31日までになっていますが、2018年度も被災者の住宅再建が続くため、今国会では特例措置の延長が提案されます。この法案も速やかな成立を目指して参ります。