水道法の改正に期待する
水道施設は昭和50年前後をピークに整備されており、その多くは法定耐用年数の40年を迎えている。老朽化した配水管は自然災害に弱く、熊本地震、大阪北部地震、西日本豪雨により水道施設の老朽化が改めて問題視されている。
老朽化した施設の更新には莫大な工事費が必要だが、水道事業者は、人口減少と節水意識の向上に伴う給水収益の減少によって十分な財源確保ができていない。そのため、国からの財政支援は不可欠となっている。国の補助金は平成21年には1,034億円あったものが、民主党政権の事業仕分けによって平成23年には416億円にまで縮減された。これによって、日本中いつでも、どこでも、蛇口をひねれば安全な水を飲むことのできる世界に誇る水道事業が危機的な状況になってしまった。水道施設の耐震化が進まない原因は、一重に水道施設整備費が圧倒的に不足しているからだ。この状況を打開するため、公明党では、政務調査会に上水道事業促進委員会、党内に上水道・簡易水道問題議員懇話会を立ち上げ、補助金の確保と水道事業の維持向上に努めてきた。
水道事業の大きな課題には、財政的基盤の脆弱性に加え職員の減少がある。この課題に対応するために平成16年の水道ビジョンそして平成25年の新水道ビジョンによって水道事業者同士の事業統合などの広域化が図られてきた。しかし、水道ビジョンが策定された平成16年以降に広域化を行った水道事業者は、全事業者の約2割にとどまっている。そのため、平成27年に「水道事業の維持・向上に関する専門委員会」が設置され、翌年にまとめられた報告書に基づき改正水道法案が提案された。これは、水道関係者が待ち望んでいたものであったが、昨年は衆議院解散によって廃案。先の通常国会では衆議院で可決されたものの、参議院では野党の協力を得られず継続審議となってしまった。
改正水道法案で注目されているものの一つがコンセッションの導入だ。計画的な老朽施設の更新と安定した水道事業の経営のために、これまでも広域連携が進められてきた。岩手中部水道企業団のように、管路のループ化によって条件の良くない浄水場を廃止したり、管路更新率を20%以上に引き上げたりなどの先進的な取り組みもある。山元町(宮城県)などは、民間事業者と連携し複数の個別業務を一括して委託する包括業務委託に取り組んでいる。会津若松市(福島県)などのDBOや夕張市(北海道)などのPFIの導入などもある。しかし、これらは一部の水道事業者に過ぎず、国からの支援強化によって上下水道事業のコンセッションが促進されることが期待されている。
コンセッションの効果として期待されることは、民間事業者による運営の効率化と老朽化・耐震化の促進、技術承継などだ。一方、公共性の高い水道事業の運営を民間事業者に任せることに危惧を抱く声もある。そのため、改正水道法には、民間事業者が水道法に違反した場合には、公共施設等運営権の取り消しを要求できることになっている。また、民間事業者の経営悪化や最悪の場合に倒産することもありうる。これらの不測の事態に備えて、コンセッションを導入した水道事業者は、水道法上の最終責任を担うことになっている。
コンセッションとは別に、本改正案で管工事事業者が最も注目しているのは指定店制度の改正だ。現行の指定給水装置工事事業者制度は平成8年の水道法改正によって創設された。それまでは、水道事業者の基準で給水工事の施工業者を指定していたが、これは新規参入を阻害する規制だとして全国一律の基準になった。これにより、工事事業者の指定数は9倍に増えた。しかし、現行制度は新規の指定だけを定めており、指定事業者からの廃止や休止の届出はなく、所在不明事業者も多数存在している。厚労省アンケートによれば、所在不明の事業者が約3千、違反行為件数が年間1,740件、苦情件数が年間4,864件などの問題が明らかになっている。そこで、改正案では指定店制度の有効期間を5年とする更新性を導入する。これが実現すれば不適格事業者が淘汰されることになるだろう。
IR整備法
IR整備法が平成30年7月20日に成立しました。
シンガポールやオーストラリア等の諸外国では、民間事業者がIR(統合型リゾート)という観光振興に寄与する施設群を運営しており、ここでは国際見本市のほかコンサートやスポーツイベントなどを開催し、多くの観光客やビジネス客で賑わっています。そして、IRの運営にはカジノの収益が充てられています。我が国にIRを導入し、大規模なMICEビジネス等に参入するにはカジノも受け入れなければなりません。
平成28年に議員立法により成立したIR推進法は、IR整備を政府に求めるものでした。IR推進法の成立に際しては、多くの国民が求めるカジノ規制など18項目にわたる附帯決議が附されました。附帯決議はIRを整備するにあたっての注文とも言うべきものです。したがって、IR整備法案の論点は、附帯決議の内容が法案に反映されているかどうかにありました。
国民にはギャンブル依存症や治安悪化などに対する不安の声があります。公明党ではこうした声を受け止めた上で、検討プロジェクトチームにおいて議論を重ね、カジノ規制の強化などの提言を政府に提出しました。また、これまで手付かずと言ってもよい状況だったパチンコなどの依存症対策を前進させるために、IR整備法案よりギャンブル等依存症対策法案を優先させました。
IR整備法案の審議においては、本会議で私が質問に立った時には、附帯決議の内容に沿って政府の対応をただしました。具体的には、IRを誘致する際の区域整備計画は、都道府県議会の議決や立地市町村の行政部門の同意などの合意形成が必要になること。加えて、世界最高水準のカジノ規制として、免許等による事業者の参入制限のほか、日本人に対してはマイナンバーカードによる入場や、公明党の主張により設定された6,000円という世界最高額の入場料、週3回・月10回の入場制限などの導入。これらの規制を実効性あるものにするために独立した強い権限を持つカジノ管理委員会の設置。カジノ管理委員会が行うカジノ事業者等に対する徹底した背面調査による廉潔性の確保などです。
日本型IRの導入は、カジノばかりがクローズアップされますが、人口減少と少子高齢社会の中での経済社会の活力向上を図るために、訪日外国人観光客やビジネス客の増大を促すものとして期待されます。日本型IRの中核施設は、国際会議場や見本市場施設のMICE施設、我が国の伝統、文化、芸術等を活かした公演等による観光増進のための魅力発信施設、国内観光を促進する送客施設、利用者の需要の高度化と多様化に対応する宿泊施設です。なかでも送客施設は、「ショーケースで触れた日本の魅力を実際に体験するため、全国各地へ観光客を送り出す機能」を有することになっています。訪日外国人の延べ宿泊者数の約6割は東京・大阪をはじめとしたゴールデンルートに集中しており、全国各地にインバウンド効果を広げることが課題になっています。日本型IRの送客施設は、その課題解決を担うものとして期待されています。
世界に目を向けるとMICEマーケットは拡大し続けています。2016年までの直近10年で、世界の国際会議の開催件数は27%増加しており、アジア地域だけでも37%も増加しています。しかし、我が国は、世界的規模のコンベンションを開催できる施設が不足しているため、アジアの巨大市場を逃し続けているとも言えます。
IRの魅力発信施設は、世界的にみてもファミリー向けのエンターテイメント施設として成長しています。ラスベガスではIRの売り上げのうち65%が、ホテル、ショー、レストランなどのノンゲーミング部門との報告があります。日本型IR もギャンブルを主目的とした施設ではなく、ビジネス客はもとよりファミリー層のデスティネーションになりうる施設を想定しています。
JR北海道対策に関する取りまとめ
公明党北海道開発振興委員会では、7月18日に「JR北海道対策に関する取りまとめ」を行い、17時に公表しました。内容は以下のとおりです。取りまとめの前には、北海道知事、北海道市長会、北海道町村会、北海道議会、北海道経済連合会、北海道商工会議所連合会、北海道観光振興機構、JR北海道らとともに、石井国土交通大臣に「北海道における持続的な鉄道網の確立に向けて」を要請しました。
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平成30年7月18日
公明党北海道開発振興委員会
JR北海道対策に関する取りまとめ
公明党は、昨年6月に国、道、JR北海道に対して提言を行い、12月に「北海道の公共交通網の確保に向けた提案」を発表した。2030年度の北海道新幹線の札幌開業に向けては、JR北海道の経営改革を国、道、市町村をはじめ広く道民に理解してもらうことが重要と考える。そこで、北海道開発振興委員会が行ってきたヒアリングを踏まえ、JR北海道と国と地方自治体に対し次のように提案する。
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JR北海道の経営改善に向けた経営改革・意識改革の推進
「JR北海道グループの経営再生の見通し」には「安全で安心だから鉄道を利用するとお客様に評価していただける鉄道サービスを提供」とある。この意識改革こそ多くの道民が期待するところである。急速な技術革新と人口減少社会に対応するには、JR北海道グループ全社を挙げて北海道に根差し北海道とともに発展する鉄道事業者として、高度なサービス事業体としての抜本的な意識改革に取り組むべきであり、不断の安全技術の進化に挑戦すべきである。また、徹底的なコスト削減のためには、計数管理の導入や民間コンサルタントによる組織改革が有効と考える。
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収益の最大化に向けた施策の実施
JR北海道が示した外部事業者による観光列車の運行、インバウンド観光客をターゲットにした収益拡大、空港アクセス輸送強化、北海道新幹線開業を見据えた開発・関連事業などは期待できるものであり、具体的かつ実効性のある取り組みを求める。
その上で、国、道、市町村の地域振興施策には積極的に連携してもらいたい。例えば、北海道ボールパーク構想と連携した収益向上の取り組みやサイクルトレインの導入、国で定めた観光周遊ルートの活用などである。
とりわけ、観光周遊ルートの活用のために、富良野‐新得間は、将来にわたる北海道観光の資源であり、復旧を図るべきである。また、狩勝峠の絶景は周遊観光の魅力であり、鉄路敷設とその後の保線の歴史は、魅力に富んだ物語りがあり鉄道ファンに限らず、将来にわたり国内外の観光客を惹きつけるポテンシャルが有ると考える。
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国、地方自治体による支援
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維持困難線区については、道の交通政策総合指針を踏まえ、JR北海道の徹底した経営努力を前提に、国の実効ある支援とともに地方自治体も可能な限りの支援を行いつつ、将来にわたって持続可能な公共交通体系を模索すること。
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老朽化した施設の更新など、安全投資に必要な当面の対策への支援制度を積極的に検討すること。