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カムチャッカ会議2

スィプチカでの会議を終えた後は、ミステリー・カムチャッカに移動して対日議員グループとの懇親会となりました。ここで出された料理は、和食を取り入れた食べ易いものでした。12年前に北海道議会議員としてサハリン州議会との交流でユジノサハリンスクを訪問した際には、何を食べても塩辛く、脂っぽく、日本人好みとは思えませんでした。それに対して、今回は、燻製のサーモンやカレイはとても美味しかったし、タラのスープは北海道でいうところの三平汁そのもので、いくらもクレープに包んで食べるなどおしゃれなスタイルになっており、これなら観光で訪れる日本人も安心して食事を楽しめるのではと感じました。

9月2日は、ネヴゾロフ議員の配慮でヘリツアーを体験しました。ヘリコプターは24人乗りのMi―8。大きなエンジン(出力1,500hp)を2基積んだ大型ヘリです。カムチャッカでは主な観光名所への道路は整備されていません。カムチャッカのヘリコプターは、飛行機や自動車に代わる重要な交通手段です。そういえば、ネヴゾロフ議員は自家用ヘリを2機保有しており、私たちの滞在中にそれらを見せてくれたのですが、カムチャッカ在住のネヴゾロフ議員には現地を訪問するための必需品のようでした。

 

大自然の懐へ飛び込むヘリツアーは、クロノツキー国立生物圏・自然保護区への移動から始まりました。途中にはエメラルドグリーンに輝くカルデラ湖や雪渓で食べ物を探しているヒグマなど空からしか見ることのできない光景を堪能しつつ、ゲーゼル渓谷に着陸。木造のヘリポートはとても狭く、よく着陸できるのものだとパイロットの技術に感心しました。ゲーゼル渓谷で間欠泉を見た後は、ウゾン・カルデラに移動。散策路として木道が整備されていますが、個人行動は禁物です。木道のいたるところにヒグマの糞があり、猟銃を持ったレンジャーから離れないようにとの注意喚起。そこかしこから湧き上がる温泉にダイナミックな地球の営みを感じ取った後は昼食会場に移動。温泉のある山小屋に到着したのは、昼食というには遅い15時。食事が用意されるまで、山小屋にある温泉プールで足湯を楽しみました。魚介類を中心とした食事を食べてペトロパブロフスキー・カムチャツキーに戻りました。ほぼ一日のヘリツアーでした。

 

ホテルに戻り、カムチャッカ最後の夕食は、日本主催による答礼宴です。日本の出席議員から挨拶を述べ、ロシア風にウオッカで「〇〇のために乾杯」が続き、私に順番が回ってきました。「ロシアが漁獲する北太平洋の魚類資源の多くを日本も利用する。沿岸に来遊してから美味しくなるサンマを公海で早獲りするのは心配です。北太平洋漁業委員会(NPFC)で日本が提案している国際的漁業管理をロシアと一緒に取り組みたい」と述べたところ、すかさず、タラバエヴァ議員が「私も大学では水産学を学んでいた。連邦院では話題になることが多い案件だ」との発言があり、オゼロフ前連邦院対日議員グループ代表からは「次回の日ロ議員交流はこの話題にしよう」と発言があり、大いに盛り上がりました。ロシアとりわけ極東やカムチャッカにとって水産資源の持続的利用に関心が高いことをあらためて実感できた答礼宴でもありました。

 

 

カムチャッカ会議1

2019年9月1日に日ロ友好議員連盟の一員としてカムチャッカ会議に出席しました。訪問団は自民党4名、立憲民主党2名、公明党2名、希望の党1名の計9名。カムチャッカ会議はペトロパブロフスク・カムチャツキーにあるスィプチカと呼ばれる知事公邸で行われました。ペトロパブロフスク・カムチャツキーまでは、成田空港からウラジオストック空港まで約2時間半、そして、ウラジオストクからカムチャッカ半島のエリゾヴォ空港まで3時間半の合計約6時間の行程。時差は3時間あります。

 

私たちが訪問したのは安倍総理とプーチン大統領が出席した東方経済フォーラムの直前で、ウラジオストク空港はすでに多数の関係者が来ており大変に込み合っていました。ウラジオストクからロシアのオーロラ航空に乗り換えてエリゾヴォ空港に到着。空港にはロシア連邦院のネヴゾロフ議員が出迎えに来てくれました。ネヴゾロフ議員はカムチャッカで水産加工場やホテルなど幅広く事業を展開されている実業家です。空港からは彼が手配したバスで、彼が経営するホテル・ミステリー・カムチャッカに移動しました。

 

到着後、すぐにスィプチカに移動して、カムチャッカ会議が始まりました。テーマは「地域間・自治体間協力」ですが、ロシア側の意向としてはカムチャッカ観光のアピールをメインに考えているようでした。冒頭にイリューヒン知事から挨拶があり、ネヴゾロフ議員がオゼロフ議員に代わりに連邦院対日議員グループ代表に就任することが報告されました。続いて、上月豊久ロシア全権大使、逢沢一郎日ロ友好議員連盟会長、ラエンコ・カムチャッカ地方議会議長、ネヴゾロフ連邦院議員の挨拶と続いたところで、イリューヒン知事からロシア側から5本の話題提供を用意しているが、まず「カムチャッカと日本:観光における国際協力」をテーマにしたいと提案がありました。その他の話題は懇親会で話し合おうというのです。

 

 確かにこの時点ですでに2時間近くが経過しており、休憩なしで会議を継続しても終了予定時刻を大幅に超えそうだったので日本側の議員もみな了承。早速にストラトノヴァ・カムチャッカ地方観光対外関係庁長官からカムチャッカのエコツアーの取り組みが紹介され、日本語で制作されたプロモーション動画が上映されました。ヒグマやアザラシなどの野生動物、噴煙を上げる活火山やダイナミックな間欠泉などの大自然の映像がまとめられており、日本語のナレーションも違和感がなく見応えのあるものでした。

 

カムチャッカ半島は日本の面積の1.2倍以上の46.4万㎢。その広大な半島に約31.7万人しか住んでいません。手付かずの大自然のなかでのトレッキング、釣り、サーフィン、スキーなどのアクティビティに、多くの日本人も魅力を感じるとは思いますが、成田から乗り換えを含めて片道約6時間はやはり長いと感じました。日本からのクルーズ船が入港していますが、日本人観光客の誘致には利便性を含めもう少し準備が必要だろうと率直に思いました。

 

意見交換は、日本側からだけの発言となり、私からは、東北・北海道沿岸では地球温暖化の影響により、従来、漁獲されていた魚種が急速に獲れなくなっている。そのため、水産加工原料が不足する深刻な事態に陥っていると報告。漁業は、流通、冷蔵、加工、観光、飲食業など幅広く様々な産業に影響するので、日ロ間、とりわけ漁業を基幹産業としているカムチャッカとは、今まで以上に情報交換を密にすべきであり、日ロ双方に貢献できることが多いのではないかと意見を述べました。ロシア側出席者の反応はよく、関心が高いとの印象を持ちました。後ほど、分かったことですが、ロシア側出席者には水産関係者が多く、漁業と観光にはもともと関心が高かったようです。

 

商業捕鯨は再開できるか?(4)

商業捕鯨の対象となる鯨種は、資源量を把握でき、かつ管理可能な種類でなければならない。当然のことだが商業捕鯨には資源を維持するための捕獲枠が必要だ。商業捕鯨を行っているノルウェーやアイスランドは、NAMMCO科学委員会の資源評価に基づいて捕獲頭数を決めている。IWCは日本提案の商業捕鯨を認めなかったので、我が国はIWC科学委員会から勧告を受けることができない。どのように捕獲頭数を決めるのか、その方法を探らなければならない。捕獲頭数は操業海域と密接な関係があり、操業海域と鯨種は捕鯨母船の大きさに影響する。そして、何より漁業として成り立つだけの漁獲金額と流通を確保できるかという課題がある。商業捕鯨の再開のためには、少なくともこれらの検討が必要だ。

 

かつて、勇壮な捕鯨船団の活躍の舞台であった南氷洋で商業捕鯨を再開できるかというと、それは難しい。というのは、南極条約によって南氷洋での捕鯨はIWCの管理下に置かれているからだ。仮に、IWCを脱退したとしても南氷洋捕鯨を再開することはできない。

では、排他的経済水域(EEZ)内での商業捕鯨の可能性はどうか。北西太平洋のミンククジラは、NEWREP-NPによって調査が進められてきたが、ミンククジラだけで商業捕鯨が成り立つかどうかは分からない。捕鯨従事者の生活を考えれば、商業捕鯨は周年操業が前提になるが、北西太平洋だけでそれは可能か、調査されていない海域をどうするのかを含め検討が必要だろう。

 

ところで、IWC総会では、日本提案に対する反捕鯨国からの意見には、日本では鯨肉の消費が縮小し、もはや商業捕鯨は必要なくなっているというものがあった。商業捕鯨モラトリアムが実施されてから国内の鯨肉消費は激減した。この間30年以上が経過し、私の世代の定番メニューであった鯨竜田揚げは学校給食から消え、鯨肉を食べたことのない世代が多くなった。小型沿岸捕鯨、調査捕鯨の副産物、輸入鯨肉の流通が5,000トン程度でしかないなかで、商業捕鯨を再開して鯨肉消費がどこまで回復するかは未知数だ。流通量が増加すれば消費はある程度増えると思うが、鯨肉を扱う量販店の問題がある。すでに国内の大手量販店のいくつかは、反捕鯨団体の圧力によって鯨肉の取り扱いを控えている。反捕鯨団体のこうした嫌がらせは、商業捕鯨を再開するとさらに増す可能性がある。

 

我が国は、IWCの中で今後も改革を目指すことは可能だ。しかし、今総会で否決された{IWCの今後の道筋」をこれからも総会のあるたびごとに提案したとしても、成立に必要な2/3以上の賛同を得ることは難しいだろう。むしろ、IWCの中での我が国の役割を見直すべきではないだろうか。現状ではIWCの分担金を最も多く負担しているのは日本であり、その分担金のもとで、我が国をターゲットにした反捕鯨の議論がなされているのはおかしなことだ。現状のIWCのもとでは、我が国だけではなく海洋資源の持続的利用支持国の主張が実現する場がなく、これらの国々との新たな国際連携を模索すべきだろう。