参議院選挙制度改革
4県2合区を含む10増10減によって一票の格差是正を図った平成27年の公職選挙法改正では、平成31年の参議院選挙に向けて、「選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、必ず結論を得るものとする」との附則が附されている。このため、参議院改革協議会のもとに作られた選挙制度専門委員会は、17回にわたって議論を行ってきた。しかし、残念ながら合意形成を得ることはできず、参議院議長から各党に選挙制度案があるのであれば、それを法案として提出するよう指示があった。
最初に提出された自民党案は、一票の格差是正のために埼玉選挙区の定数を2増することに加えて、拘束名簿式の比例区4増の特定枠を設置するものであった。選挙区と比例区の現行制度を維持しながら一票の格差を是正するには、埼玉選挙区を定数増とするのは合理的であり立憲民主党や希望の党からも同様の法案が提出された。しかし、比例区4増は自民党内で批判の多い合区への対策ともとれるので、抜本改革とは言い難いものだった。
他方、公明党は30年前から全国を11ブロックとする大選挙区制を主張してきた。地域代表的な性格を維持しつつ一票の格差を1.12倍とするもので、まさに「抜本改革」に相応しい案と言える。これを、初めて法案化した。しかし、選挙区と比例区を見直す大改革には日本維新の会を除き支持は少なかった。公明党が法案を提出したことがきっかけとなり他党からも法案が提出され、最終的に4案が参議院政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会に付託されることになった。
4案を大別すると、有権者一人が2票(選挙区と比例区)を持つ改革案と有権者一人が1票を持つブロック制の2種類となっていた。そこで、議論を絞るために、ブロック制を提案した公明案と維新案を先に採決することが提案されたが、日本維新の会がそれに反対したために公明案だけが採決され、賛成少数によって否決された。
参議院自民党は単独過半数を占めているので、自民党案が成立する可能性は極めて高い。そこで、公明党は自民党に修正案を申し入れた。それは、参議院では選挙区と比例区の議席数を3:2としてきたので、比例区案は4増ではなく2増にすべきと主張したのだ。しかし、自民党は受け入れなかった。
公明案が否決され、修正案も退けられた公明党は、附帯決議案を提案した。その理由は、自民党は、この案を抜本改革としており、法案に検討事項を含めていなかったからだ。そこで、附帯決議には、投票価値の平等を重視する「憲法の趣旨に則り」、「参議院の役割及び在り方を踏まえ引き続き検討を行う」ことと、「定数の増加に伴い」、「経費が増大することのないよう、その節減について必要かつ十分な検討を行う」ことの2項を附した。自民党はこの附帯決議案を受け入れた。こうした自民党の対応を踏まえ、採決では公明党は自民党案に賛成した。来年の参議院議員選挙に向けての改革は実行できたものの、今後も抜本改革に向けた議論を続けていく必要があります。
働き方改革関連法を簡潔に説明すると
6月29日に働き方改革関連法が成立しました。
近年、過労死や過労による自殺が後を絶たず、長時間労働の是正は喫緊の課題でした。また、人口減少と少子高齢化が進むわが国では、女性のキャリア形成や男性の家庭参加が求められています。さらには、高齢者や障がい者など多様な人材が活躍できる社会構築も必要です。これらを実現するために、働き方改革関連法では、時間外労働の罰則付き上限規制、勤務間インターバル制度の導入、同一労働同一賃金が規定されます。
時間外労働の罰則付き上限規制は、労使間の合意があれば上限なく残業できる現行制度を改めるもので、1947年の労働基準法制定以来の大改革です。時間外労働の上限は、月45時間、年360時間が原則になります。
勤務間インターバル制度は、勤務の終業時間と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息時間を確保するものです。残業で遅くなった翌日には、通常の始業時刻に出勤させてはいけないことになります。
同一労働同一賃金は、同一企業・団体の正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を解消するものです。これによりどのような雇用形態を選択しても同様の待遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようになります。
一部の野党が批判した高度プロフェッショナル制度は、高収入の専門職に限定して労働時間規制を除外するもので、多様な働き方の選択肢の一つです。この制度を適用するには、年収が1,075万円以上(これに該当する労働者は全体の3%未満)、企業側と労働者側の同数からなる労使委員会での5分の4以上の賛成、労働者本人の同意などが必要です。さらに、制度の適用を受けた労働者が同意を撤回できる規定が、公明党の提案で設けられました。
今後も、多様な働き方を推進することにより少子高齢社会であっても経済の活力を維持できるよう努力して参ります。
海洋ごみ対策が動いた!(3)
改正法では、海岸漂着物対策の予算措置の対象になっている「漂流ごみ」と「海底ごみ」を、「海岸漂着物」に追加した。また、海岸漂着物は国内由来のものばかりではなく、近隣諸国や船舶からのものもあり国際的連携の確保は不可欠なため、改正法には国際協力の推進を書き込んだ。さらには、海岸漂着物等の処理を推進している民間団体や個人を表彰することとした。これには背景がある。本法には都道府県知事が海岸漂着物対策活動推進員と民間の推進団体を指定することができることになっているが、法施行から9年間にわたって実績がないのだ。これには、都道府県の財源確保などの課題が背景にあるのだが、私は、この条文を見直し、実効性のある指定の仕組みを作るべきと考えていた。環境省は、2018年度の「漂着ごみ対策総合検討事業、漂流・海底ごみ対策総合検討事業」において、複数地方公共団体連携が排出抑制対策モデル事業を推進することにより指定団体に結び付けようと考えていたようだ。結果的に環境省はゆずらず、モデル事業の進展を期すことになった。
6月9日のG7シャルルボワ・サミットにおいて、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダの5か国とEUが「海洋プラスチック憲章」に署名した。我が国は、趣旨に賛成を表明したが、国内法が未整備のため社会への影響把握が現状ではできないとの理由で署名しなかった。この報道に接して残念に思った方も多いと思うが、私も先進国の中で我が国の海洋プラスチックごみ対策が遅れている現状をみる思いがした。海洋環境保全には有利であっても社会的影響の回避もまた重要だ。改正海岸漂着物処理推進法は、遅れていた国内法を整備したものだ。今後はその実効性の確保のために努力し、海洋ごみ対策先進国を目指していきたい。