『パニック・イン・スタジアム』は“70年代パニック映画の決定版!”か? | 徒然逍遥 ~電子版~

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訪問ありがとうございます。

 

70年代のチャールトン・ヘストン主演作が続いたので、ついでにこれで三連打。
狙撃犯の正体が最後になっても不明であったが、時代的にベトナム従軍帰還兵による事件ではなかったか。と、睨んでいるのだが。


『パニック・イン・スタジアム』 Two-Minute Warning (‘76) 115分
梗概
とある日曜日、プロフットボールのチャンピオンシップゲームが開催されるLAメモリアムスタジアム。そのスコアボード上に陣取った正体不明の男。彼はここに侵入する前に、宿泊したホテルの窓から高性能のライフルで人を試し撃ちしていた。

試合はLAとボルチモアが白熱した接戦の好ゲーム。たまさかTV中継車のカメラに映り込んだ犯人を包囲すべく地元警察とSWATが出動。だが、残り時間2分を切ったところでSWATに狙撃された手負いの犯人が乱射し始め、9万1千人を収容したスタジアム内は一大パニックに陥る。

昨年12月にBlu-rayとDVDがリリースされるとのアナウンスがあったが、その前からDVDはレンタル屋に置いてあったはずだ。一旦廃盤にでもなっていたのだろうか。

 *新版DVD*
それはともかく、煽り文句がまた凄い。

70年代パニック映画の決定版『パニック・イン・スタジアム』初ブルーレイ化!”
である。
いや、そこまで言われたらつい手に取ってみたくもなろう。


だが、結論から申し上げると、これは誇張と粉飾に満ち満ちたキャッチコピーだ。

70年代パニック映画と言ったらまずは『大空港』(70)が先駆的作品。次いで『ポセイドン・アドベンチャー』(72)が来て、真打に『タワーリング・インフェルノ』(74)が登場するというのが個人的な見立てである。

70年代パニック映画の切り込み隊長『大空港』

海神の冒険『ポセイドン・アドベンチャー』

70年代パニック映画の最高峰『タワーリング・インフェルノ』

タワーリングインフェルノDVD
あとは似たり寄ったりで『エアポート‘75』(74)、『大地震』(74)、『ヒンデンブルグ』(75)、『カサンドラ・クロス』(76)、などが居並び、残念な超大作群として『スウォーム』(78)、『メテオ』(79)、『ポセイドン・アドベンチャー2』(79)、『世界崩壊の序曲』(80)などが列をなす。で、合ってますよね?


なので、“70年代パニック映画の決定版!”として本作が上位グループに割り込む余地は無いのである。

だがしかし、あえてBDをリリースするということは、それなりの需要というか購買層(レンタル含め)みたいな部分を狙ったのであろう。投下資本の回収を見込んでいるに違いない。


自分は当時、アメフトに熱中していたものだから、いきおい映画もそっち系を掘り起こしていた。『ロンゲスト・ヤード』(74)はもちろん、『ジョーイ』(77)や『ブライアンズ・ソング』(71)、さかのぼって『ナンバーワン物語』(69)など手あたり次第に観た。

『ノース・ダラス40』(79)が観られないのが残念で、『ブラックサンデー』(77)がお蔵入りしたのもがっかりだった。


そんな中、本作は直球ど真ん中でハートを射抜いた。期待感MAXだ。なんせスーパーボウルを模したチャンピオンシップ・ゲームという大一番が舞台である。これが期待せずにいられようか。いや、いられまい。


ところが、ふたを開けてみると、グランドホテル形式の人間ドラマが中心となって進行。そこに、ライフル魔の行動が淡々と描き込まれるのみ。

お目当てのゲームはなかなか始まらず、いざキックオフとなっても試合よりも警察とSWATの捜査と作戦がメインでイマイチ物足りない。と落胆したのは自分だけか。


おかげで、本作への個人評価は少々厳しいものがあった。鑑賞の動機がアメフト見たさゆえの不幸なミスマッチだった。


後年、改めて観直したところ、それなりに楽しめたので一安心。役者のキャラや芝居、ストーリー展開やサスペンスの演出などを見どころに据えるように動機が変化したのが幸いした。
それでも“70年代パニック映画の決定版!”とは言い難かった。

自分としては、冒頭で言及した通り、狙撃犯の正体と目的が不明の無差別殺人事件ということで、ベトナム戦争の影を見たのだが。ちょっとツボである。
戦争後遺症に悩まされる大国アメリカ社会を描出しているとしたらそれなりの問題作と捉えられよう。


主役はチャールトン・ヘストン。LA市警のベテラン警部で、ちょっと強権的なデカい態度。


SWATリーダーにジョン・カサヴェテス。ヘストンと共に正体不明のライフル魔に立ち向かう。この二人がタッグを組めば大丈夫。もう安心である。


スタジアムの支配人がマーティン・バルサム
往年の名脇役十傑選~男優篇


デヴィッド・ジャンセンジーナ・ローランズが夫婦役。


客の懐を狙うスリに扮するウォルター・ピジョン


二人の子連れ夫婦の夫にはボー・ブリッジス。狙撃犯を偶然目にして警備員に伝達する。


彼と『あの空に太陽が』(75)で共演したヒロインのマリリン・ハセットが色を添える。


ちなみに、原題名Two-Minute Warningツー・ミニッツ・ウォーニングとは、プロフットボール用語で、試合残り時間あと2分の警告を指す。


本日も最後までお読み下さりありがとうございました。


*狙撃犯の爪にリアルを感じろ!ベスト・ショット*

 

監督:ラリー・ピアース
『ある戦慄』『さよならコロンバス』『あの空に太陽が』
音楽:チャールズ・フォックス
『バーバレラ』『真夜中のパーティー』『9時から5時まで』

 

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