こんにちは。行政書士もできる往年の映画ファンgonzalezです。
訪問ありがとうございます。
したたかなハリウッド映画産業界は、ヒット作の続編、続々編を作りたがりますよね。近頃はスピン・オフだかリブートだか聞き慣れない単語もちらほら。
そんな中“ご長寿タイトル”いの一番に挙げられるのはやっぱりこれでせう。
『猿の惑星』 Planet of the Apes (‘68)
梗概
とある星に不時着したテイラーら3人の飛行士たち。彼らが目にしたのは言語を持たぬ野生動物さながらの人間と、人間狩りをする猿だった。
その騒ぎの結果まともな生存者はテイラーのみ。喉を怪我して発言できぬものの、文字を書き、紙飛行機を飛ばして他の人間と異なることを示す。オランウータンのザイアスは人間と猿の過去のいきさつを知っておりそれの歴史を隠蔽することに腐心。チンパンジー夫婦の援助もあり、何とか猿の社会から脱出したテイラーが目にしたのは廃墟となった自由の女神だった。
*パンフレット表紙*
以前はSF映画と言へばさほど予算はかけない、ちょっとした子供向けのようなモノが多いとの一般的認識がありました。
しかし、本作はスタッフ、キャスト共に強力布陣で臨む本格的SF映画であることが決定的に異なります。
何しろオスカー俳優チャールトン・ヘストン主演です。さらにジーラ猿を演じたのがやはりオスカー女優のキム・ハンター。
*キム・ハンター。こうなる↓*
その他ロディ・マクドウォール、モーリス・エヴァンス、ジェームズ・ホイットモアなどそれなりに芸歴のある一流どころの役者が脇を固めます。が、皆さん猿になっており誰が誰だかわかりません(笑)
役者が揃ったほか、ジョン・チェンバースの特殊メイクは大反響を呼びます。
加えて人間と猿の立場の逆転という、まさに逆転の発想がアイロニカルな面白さ。
公開当時、サミー・デイヴィスJrは黒人と白人についての映画である、と喝破したそうです。すなはち、支配者=白人(人間)と被支配者=黒人(猿)の逆転した世界という…。
あの頃は米国内においてブラックパワー台頭の時代とオーバーラップします。まさに白人にとってのヒエラルキーが危機的状況と言っても過言ではなかったようでして。その不安や恐怖感が投影された映画と見ることができるそうです。なるほどね。
こうなると雰囲気的に誰もB級映画呼ばわりできなくなりますよね。きっと。
そして、白眉は映画史上最大級の衝撃のラスト。もう有名過ぎてネタバレにもなり得ません。「ここは地球だったんだぁ~!」。テイラーの悲痛な叫び。そして余韻を飾る波の音。
そう、我らがジェリー・ゴールドスミスは全く音楽を排してしまいます。
実はこれ、対位法と共に彼がよく使う手法なんですね。クライマックスで音楽を消す。
そこで、音楽の話に移りますと、オープニングのタイトルから素敵な曲に身が震えます。何となく猿がひょこひょこ歩行しているような絵柄を連想するユーモラスかつ無調性的サウンド。
→『猿の惑星』メイン・タイトル
これはテイラーが馬上の人となり禁断の地への行程にも反映されています。打楽器を効果的に用いる土着的音楽。
『ジョーズ』『スターウォーズ』にあのテーマ曲が欠かせないのと同様に、本作もゴールドスミスの音楽とは不可分の関係にあります。これら無くして映画が成立し得ません。
中学生の時分、音楽室のピアノの低音部であのサウンドを真似たものです。
1968年度のアカデミー賞の作曲賞のノミニーとなりました。受賞しなかったのが不思議です。
彼は猿のメイクで楽団を指揮したそうです。高校時代に「すみや渋谷店」で入手した輸入LP盤にその写真が載っていた記憶があります。
本作監督のフランクリン・J・シャフナーとのコラボでは名スコアを連発。『パットン大戦車軍団』『パピヨン』『ブラジルから来た少年』など。
ちなみに衣装デザイン賞候補にもなりました。ちょっと意外。猿たちの衣装が秀逸だったのかも。
*人間のは衣装と言えず(笑)*
本作はシリーズ化されて『続・猿の惑星』『新・猿の惑星』『猿の惑星・征服』『最後の猿の惑星』と続きました。でも、徐々にB級化の一途をたどります。最強の突っ込みどころは、猿が木から落ちて死ぬところでせうか。
21世紀の初年度にはティム・バートンの『PLANET OF THE APES/猿の惑星』がリ・イマジネーションとやらで登場。
10年後には『猿の惑星: 創世記』が、本年は『猿の惑星: 新世記』が、それぞれ新シリーズとして発表されました。
まだまだネタが尽きそうもありませんね。ハリウッド映画の底力を見る思いです。
本日も最後までお読み下さりありがとうございました。
*ネタバレ全開パッケージ*
Planet of the Apes 112分
監督:フランクリン・J・シャフナー
『パットン大戦車軍団』『パピヨン』『海流の中の島々』
脚本:マイケル・ウィルソン、ロッド・スターリング
撮影:レオン・シャムロイ
『聖衣』『慕情』『クレオパトラ』
衣装:モートン・ハック
音楽:ジェリー・ゴールドスミス
『オーメン』アカデミー作曲賞『エイリアン』『トータルリコール』
原作:ピエール・ブール
『戦場にかける橋』