こんにちは。行政書士もできる往年の映画ファンgonzalezです。
訪問ありがとうございます。
チャールトン・ヘストンの近未来SF映画だったらこれもあるなあ。と、これまた前々から紹介したかったフィルムをアップしてみる。
『ソイレント・グリーン』 Soylent Green (‘73) 97分
梗概
2022年。人口増加により世界中にホームレスが溢れかえり、ほんの一握りの特権階級と大多数の貧困層から成る格差社会が形成された。天然の野菜や、本物の肉類は超高価で入手困難となり、貧困者はソイレント社が海洋プランクトンから作る食品を配給されて生き延びていた。
そんなある日ソイレント社幹部殺害事件を受けてNYのソーン刑事(チャールトン・ヘストン)が、同居する老人ソル(エドワード・G・ロビンソン)の協力を得て捜査に乗り出すが、妨害されるわ殺されかけるわで難航する。しかも、事件の裏を知ったソルは“ホーム”と呼ばれる公営安楽死施設で安楽死を選ぶ。
ソーンは彼の遺した言葉に従ってソイレント社の工場に潜入。そこでソイレント・グリーン生産にまつわる驚愕の事実を目の当たりにする。
*緑色のフィルターで煙ってみえる効果が全編覆う*
天然資源の枯渇、エネルギー不足、工業製品不足、世界の温暖化、環境破壊、人口爆発、貧困、格差社会、食糧不足、路上生活者、営利企業の暗部、といった課題を真正面から描いている。これらは今でも未解決で、当時よりも悪化している問題もある。
意外に思われるかもしれないが、我邦においても貧困や格差社会などはもはや定番になりつつある。教育現場では、生徒児童の家庭が負の連鎖で困窮しているなどごく当たり前の光景となってしまった。
で、『猿の惑星』(68)のDVDジャケ同様ネタバレ全開でいきたかったが、ここはぐっと堪えて未見のあなたの楽しみを奪わないでおこう。
*←すでにネタバレ*
と言うことで、本作の興味はヘストンが事件の核心に迫る過程を共に追うこととなる。徐々に明らかになってゆく疑惑。SFというよりも陰謀もの、スリラーものと言えよう。
伴走する我々は巻頭からエンディングに至るまで近未来世界の社会状況を見せつけられる。
荒廃した街。溢れるホームレス。食糧事情。配給所に押し寄せる貧民。彼らの暴動。鎮圧する国家権力。特権階級の生活。貴重な野菜や肉の存在。高齢者向けの公営安楽死施設。等々。
このように色々と珍しき様子が窺える。が、ドラマはソイレント・グリーン衝撃の秘密に迫る、この一点に収斂されていく。ゆえに、我々が俯瞰した喫緊の諸問題は全てクライマックスに向けて回収される伏線となる。
あらゆる資源物資が不足する八方ふさがりの中、いかなる方法で食糧供給をなすべきか。
為政者と企業に突きつけられた大命題だ。
人口増加に伴う貧民の食糧不足→高齢者向けの公営安楽死施設(口減らし)及びソイレント・イエロー並びにソイレント・レッドの供給→そのための食料資源の確保→資源の不足→どうする?
このような悪循環の解決策として誕生したのがソイレント・グリーンだ。
*不味そう・・・*
何しろNY市内だけで人口4千万人。失業者はマンハッタンに集中して2千万人もいるという。
なので、毎週火曜日ソイレント・グリーン・デイも全員に行き渡らないで品切れ状態。暴動が巻き起こるも非人道的な鎮圧方法に吃驚する。まるで天安門事件のようだ。
そこで、60歳以上(だったと思うが)の人間は“ホーム”へと送られることになっているらしい。言ってみれば口減らし。近未来の“楢山節考”。でも、E・G・ロビンソンは平然と街中を歩いているので、強制力は無いようだ。
“ホーム”は清潔感と輝きに満ちており、高齢者も安心して手続きできる雰囲気。ロビンソンはベートーベンの交響曲第6番・田園のサウンドに包まれて大自然のパノラマヴューを目に焼き付けながら息絶える。まさに安楽死。
天然もののリンゴやセロリ、牛肉など特権階級にしか入手できない貴重品。バーボンやイチゴジャム、固形石鹸、白地の紙や鉛筆、書物なども珍重される。
高齢者しかそれらを口にしたり手にしたりした記憶がない可哀想な時代。グラスの氷があり、蛇口からお湯が出る高級住宅に感動するヘストンいと哀れなり。
その彼が演じる刑事はクレバーで職務熱心だが、ちょいとゲスい小悪党っぽいヤツ。ヘストンにしては珍しきキャラ。
ロビンソンは警察の支援者として、その豊富な知識と経験を活用して事件解決のための情報収集を手伝う。昔は大学教授だったらしい。これもギャング役で名高い彼にしては珍しいこと。本作は101本目の出演作品だそうだ。
で、この作品だが、結構大がかりな撮影が目を惹く。貧民街の光景やモブシーンも多くて大作感が感じられる。製作側としても、主役がヘストンとロビンソンの顔合わせだけに下手なシロモノは作れないはず。おかげでそこそこ楽しめるサスペンス映画が出来上がった。
しかし、2022年という設定もあと二年後という事実に時の流れを感じる。劇中で、1977年とか2006年とか言の葉に上るが、それもまた制作当時としては未来だったんだな。
決して傑作とは言えないものの、個人的には結構気に入っていて、DVD化されてからもリピートしている。初見はTV放映で40年以上前のことだった。
未見の方は一度手に取ってみてもいいのではないだろうか。
ちなみに、『スノーピアサー』(’13)で下層民に配給される寒天状のプロテインが登場する。
それを何年間も食してきた人は、原材料を知ったときには嘔吐感を催すかもしれない。
→『スノーピアサー』で『ソイレント・グリーン』の衝撃を(※ネタバレあり)
『ソイレント・グリーン』と『スノーピアサー』・・・
・・・倫理的にダメ。をとるか、生理的にダメ。をとるか、究極の選択かもしれない。
いや、しかし、こう言っていられるのは飽食の時代に生きる者だけか。
餓死寸前の状況下ではもはやそんなことを考える精神的余裕はないだろう。俺だったらドースルのか。と、徒然なるままに思い巡らすのであった。
本日も最後までお読み下さりありがとうございました。
監督:リチャード・フライシャー
『ミクロの決死圏』『トラ・トラ・トラ!』『ジャズ・シンガー』
撮影:リチャード・H・クライン
『アンドロメダ・・・』『スタートレック』『白いドレスの女』
音楽:フレッド・マイロー
『スケアクロウ』『ロリ・マドンナ戦争』『ファンタズム』