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全力で蒙を啓いてます【ダメ男再起可能 ソン・ガンホを見よ!】
『観相師 -かんそうし-』 관상 (‘13) 139分
梗概
時は15世紀中葉。李氏朝鮮時代。零落し僻地にて義理の弟ペンホン(チョ・ジョンソク)や足の不自由な息子ジニョン(イ・ジョンソク)と貧乏暮らしをしていたネギョン(ソン・ガンホ)は人相学のエキスパート。人相を見てその人の性格や嗜好、過去と将来までも完璧に言い当てることができる観相師だ。そこで都で一番人気の芸姑で占いにも長けるヨノン(キム・ヘス)が彼の実力を買って自分が経営する店に呼び寄せる。
彼の占いはすぐに評判となり宮中の要職に取り立てられ、王から重臣の中に逆賊の相を持つ者を探す使命を受ける。彼は王の弟、“狼”と称される首陽大君(イ・ジョンジェ)に逆賊の相を観て戦慄。急死した王に替わり11歳で王位継承した瑞宗を首陽大君から守るべく、王の最側近で“虎”の異名を持つ左議政キム・ジョンソと共に知略を巡らしつつ政争の渦中に身を置くこととなる。
1400年代半ばの出来事。江戸時代より200年も前の話だ。当然コスチュームプレイである。韓流ドラマではもはやド定番のようだが、そっち方面は疎いので、ここで珍しい風俗が観られて良かった。やっぱ衣装といふものは洋の東西問わず興味深いものだ。
また、サスペンスフルな歴史劇ゆへ、普段接する機会の少ない李氏朝鮮時代の事件を垣間見ることができるのも良いではないか。
ここでソン・ガンホの役柄は、父親だか祖父が逆賊として失脚した故に今や零落した身をかこつ人物ネギョン。なぜか筆の制作販売を手掛けている。いや、一口に筆と言っても多彩。イタチとかネズミとかいろんな動物の体毛を利用するようである。
巻頭部から都へと進出するあたりの彼と義弟との掛け合いは軽いノリで、前途に待ち受ける艱難を微塵も感じさせない楽しさがある。
息子ジニョン17歳は栄養不足で足が不自由。父親が人相を鑑定することを好ましく思っていない。この苦境を脱するべく科挙試験を受けて高級官僚を目指す。が、直系尊属が失脚しているので、偽名を使っての受験となる。
トリックスター的色彩の濃い義弟ペンポンはそんな甥っ子を可愛がり、都へ送り出す策を授ける気の好い兄貴だ。ただ、ネギョンから「喉仏の相は衝動的に過ぎることを表し、身を滅ぼしかねないから自重せよ」と釘を刺されている。この不吉な伏線は大方の予想通りクライマックスに向けて回収される。
韓国の名女優に数えられるキム・ヘスが、『爆烈野球団!』の清楚なお嬢さんとは真逆の妓生役ヨノンを演じる。世情に通じ一筋縄でいかない姉御が見事にはまった。
とは言へあくまでも陽性キャラで、息が止まるような緊張場面でも彼女のお陰で何とか持ちこたえられる。
狼にも例えられる恐るべき逆賊・首陽大君に扮するイ・ジョンジェがダークサイドの魅力全開。『新しき世界』(13)で犯罪組織のトップに上り詰めた悩める潜入警察官とは違って悪役直球ど真ん中。
ネギョン、ペンポン、ヨノンの三人が揃うと映画のインターミッションの如くにちょっとした息抜きとなる。
また、首陽大君は何をするにしても何を言ふにしても、薄笑いが貼りついたような表情の下に何が隠されているのか、と緊張を強いられるのもまた楽しからずや。か。
てな具合に役者が揃って見応え十分の作品に仕上がった。わけても我々の視線は主役のソンとイ・ジョンジェの知略謀略を巡らす対決に注がれるだろう。
VS
見るからに暴力衝動むんむんな首陽大君だが、謎の仕掛け人のコンサルティングでネギョンを欺く手際は敵ながら見事。
王に遣わされたネギョンが人相をチェックして、あの人は悪意ありませんよ。全然オッケー。みたいな報告をする。ところが。替え玉を使ってネギョンに別人を観相させたのである。してやられた。
が、ネギョンだって負けていない。叔父にあたる首陽大君が逆賊とは信じられない幼き世継ぎの王・瑞宗が納得できる証拠をねつ造する。こともあろうに首陽大君の身体に細工を施すのだ。
ここはペンポンとヨノンも交えて寿命が縮む思いがするほどのミッション・インポッシブルを決行。こっちも身悶えしつつ冷や汗を流す。
歴史劇の衣装をまとったサスペンス映画は2時間強の長尺を感じさせない。演出・脚本・編集も巧みである。
本編中のソンはプロの観相師とはこういった様子なんだろうな。と納得させてしまうほど、人相学に深い造詣を有するネギョンを自然体で演じた。
人相から読み取る性格特質を立て板に水の如く次々と解説していく様はちょっとカッコ好い。宮中で殺人事件を解決するエピソードなどまるで韓流シャーロック・ホームズだ。人間観察力の極致。
前半は三枚目。後半進むにしたがってその表情が硬くなっていく。このあたりのさじ加減も絶妙。
どうやら彼は人の上に立つ人物よりも上下にサンドウィッチされて相克に悩むキャラで実力を発揮するように思えたりもする。
“韓国のアカデミー賞”とも呼びならわされる 大鐘賞で最優秀作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞など主要部門を総なめにしたのも納得。もちろんソンは主演男優賞だ。
ネギョンの観相力がパーフェクトであることを示唆するエンディングも◎。鑑賞してソンはないだろう。
本日も最後までお読み下さりありがとうございました。
【ダメ男再起可能 ソン・ガンホを見よ!】特集
●ダメ男奮起!ソン・ガンホの真骨頂『タクシー運転手 約束は海を越えて』
●『反則王』の英語表記はそのまま「The Foul King」だった
●コリアン・ファミリーVS米軍の鬼っ子『グエムル-漢江の怪物-』←最強タッグ
●的中率百発百中千里眼の目を持つ男『観相師 -かんそうし-』
●ポン・ジュノとソン・ガンホの最強タッグ『殺人の追憶』←最強タッグ
参考
■『スノーピアサー』で『ソイレント・グリーン』の衝撃を←最強タッグ
■パルムドール受賞記念だ『ほえる犬は噛まない』←ポン・ジュノ監督作