日韓野球対決『爆烈野球団!』 | 徒然逍遥 ~電子版~

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なんとなく、特集【ダメ男再起可能 ソン・ガンホを見よ!】続行中!

『爆烈野球団!』 YMCA
야구단 (‘02) 104分
梗概
1905年。日本支配下の朝鮮では科挙という官僚登用制度が廃止。ホチャン(ソン・ガンホ)は立身出世の夢を断たれる。ある日、彼はYMCAで美しいジョンニム(キム・ヘス)を見かけ、野球というスポーツを知る。早速彼は父親に内緒で野球を始め、ジョンニムが監督となり朝鮮初の野球チーム「YMCA野球団」を発足させる。

チームは連勝街道驀進。日本軍チームと対戦することに。だが、投手デヒョンは親日派暗殺テロで負傷。4番打者のホチャンも父親に内緒でプレーしていることが露見。チームは完敗。暗殺計画に加担した疑いでジョンニムとデヒョンが日本軍に狙われ野球団は解散する。故郷に戻り父の私塾の手伝いをするホチャンに、YMCA野球団と日本軍との再戦の通知が届く。

*今やレジェンド!YMCA野球団の雄姿を見よ*

 

今から100年以上前の朝鮮を舞台とする物語である。よって、登場人物全員が古めかしい衣装を身にまとう。ちょっとした時代劇だ。

今でこそ韓流ドラマなどでコスチュームプレイは当たり前に観られるが、制作当時はまだ珍しかったように思う。


その頃の朝鮮は、社会的にも個人的にも新旧の価値観が入れ替わるパラダイム変換を余儀なくされる時代にあった。科挙制度の廃止がいきなりその時代性を突き付けてくる。


アメリカ留学経験者の女性が登場したり、路面電車が走っていたり。民族衣装と洋服が同期したり、奴隷と両班の身分制度が撤廃されたり。

そして西洋から輸入されたスポーツが人気を博すなど。近代化・西洋化の波に晒される韓半島の国内情勢を示唆する様々な記号が目に付くことだろう。

そこらも中々に興味深く、映画批評の切り口も多面的で楽しめる。
ちなみに、「YMCA野球団」は実在のチームをモデルにしているとのこと。


劇中ソンの役柄は、役人を目指し朱子学を学ぶ青年。彼は暗行御史(国王の密偵)に憧れているといふ設定だ。これが後になって回収されていくのが気持ち好い。

彼も従来の学問が無用になる事態を体験。そして西洋スポーツの洗礼を受ける。しこうしてまだ若いだけに柔軟に近代化の波に対応することができたのだ。

彼とて旧弊制度を全て否定しているわけではない。まだ田舎で私塾を手伝うなどしていることからも、揺籃期にありがちな両刀使いとして生きている姿が窺える。


ソンは丸刈りの坊主頭でバットを構え眼光鋭く迫力に満ちている。何しろチーム1の強打者4番バッターなのである。かと思うとジョンニムと対面するとへどもどするなど可愛らしい一面も見せる。
父親に頭が上がらずおたおたするのも旧弊時代の名残りだ。


一番カッコ良かったのはジョン・ウーの向こうを張ったスローモーションで上っ張りを纏うシーン。監督はここ明らかにパロディ狙ったんじゃなかろうか。名場面だ。


ところで、メンバーがまた時代性を反映しているうえ個性的な面々で嬉しくなる。
没落した両班、両班の元奴隷、行商人、科挙の試験を受け損なった失業者、インテリの日本留学経験者、新興富裕層の青年、自称元軍人。監督となるヒロインも両班の家柄でクリスチャンといふシャレオツなお嬢様。双子もいたりして「アストロ球団」みたいだ。

 *何と!ファン・ジョンミンがっ(左*


日本軍チームは予想に反して紳士的で反日的要素の投影が薄い。もっとも、抗日運動が同時進行している点は見逃せないが。


しかし、今の日韓関係下で製作されたらもちっと居心地の悪い描写も織り込まれるような気がする。なので、これは被害者意識がむき出しにならない分、物語そのものに集中できて吉。

 *伊武雅刀*
コメディ色はさほど濃くない。スポ根ドラマにしては緩い。むしろハートウォーミングな人間ドラマと言った方が近いか。“爆烈”も誇大広告っぽいし。

それと、フツーに“バクレツ”と打ち込むと“爆”に変換されてしまう。どうでもいい話だが。


傑作とかいふレベルではないものの、意外や厚みのある娯楽作品でお薦めしたい一本だ。


本日も最後までお読み下さりありがとうございました。

 *キム・ヘス♡『観相師-かんそうし-』でソンと再共演*

 *ファン・ジョンミン捕手のプロテクターも見ものだ*

 

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大統領の髪は伸びたか『大統領の理髪師』

的中率百発百中千里眼の目を持つ男『観相師 -かんそうし-』

日本語の台詞もあるよ『密偵』のソン・ガンホ

ポン・ジュノとソン・ガンホの最強タッグ『殺人の追憶』←最強タッグ

家族のために頑張るお父さんの悲哀『優雅な世界』

参考

韓流傍流の実力派~ソン・ガンホ

『スノーピアサー』で『ソイレント・グリーン』の衝撃を←最強タッグ

パルムドール受賞記念だ『ほえる犬は噛まない』←ポン・ジュノ監督作