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すごいぞ【ダメ男再起可能 ソン・ガンホを見よ!】特集だっ。
『反則王』 반칙왕 (‘99) 112分
梗概
常習遅刻犯で成績もぱっとしない情けない銀行員イム・デホ(ソン・ガンホ)は、上司に強烈無比なヘッド・ロックを掛けられて叱責される。到底かなわないとしても、せめてヘッド・ロックを外すことで一矢報いたいと思う。
ある日彼は場末のプロレス道場の門をたたく。そこで子供時代のヒーロー、ウルトラ・タイガーマスクの写真を発見。館長は難色を示すもデホは厳しいトレーニングを重ね、悪役としてデビューを飾る。そして遂に人気レスラーのユ・ビホ相手にタッグマッチが組まれた。勝利は成るのか。そして、あの上司には対抗しうるのか。
プロレス。と一口に言っても我が邦では主宰団体それぞれの特色が色々あってスタイルに相当の違いがある。総合格闘技に近いガチの勝負っぽいものからキワモノ並みの見世物試合まで開きが凄い。
一時は大小無数の団体が乱立しては消える状況が続き、誰がどこで何をどうしたのか皆目わからない有様であった。
今では、プロレスはカミングアウトしてすっかりエンタメの仲間入りを果たしているようだ。
全日、新日は王道を往くとしても、コミカルなショーまがいのスタイルで人気を博した「ハッスル」など狂言師の和泉元彌まで引っ張り出す騒ぎだった。
本作はそんなプロレス興行を念頭に置いて鑑賞してもらいたい。さすれば素人レベルの選手でも参戦可能との認識のもとで楽しむことができよう。
我らがソン・ガンホは銀行員といふ意外性ある設定。でもやっぱり劣等生だ。そこで彼がいかにして漢としての再生を果たすのか。成長譚である。
本作は『シュリ』(‘99)直後の制作ゆへ彼はまだ若く辛うじて細身である。そして『シュリ』での硬派なイメージが生きているのでキャラの落差に驚かされる。自分はこの二本だけですっかり彼のファンになってしまった。
情けない行員と悪役レスラーのギャップ。あらかじめ負けが決まっている試合でも、せめて悪役の意地を見せたい。漢としての矜持が全開だ。
そんな硬軟いずれの芝居も縦横に魅せるバランス感覚が確かである。
ジムで出されたドリンク剤を飲みながら嬉しげに語るシーン。
女性に振られて全力疾走する画に絶妙な男性ボーカルが被るシーン。
リング上でなんとかバックドロップを決めるべく肉を削ぐようにして立ち向かうクライマックス。どれもが今でも思い出される演技者の顔だ。
空気椅子みたいな状態で下半身強化のトレーニング場面では、ぐにゃぐにゃになって今にも倒れんばかりなのだが、その芝居には彼自身の強靭な筋力を認めることが容易にできる。生半可ではない。そんな些事でも実にリアルに表現していて感心しきり。
最大の見せ場ではユ・ビホ相手に決して逃げない全力の頑張りを見せる。あたかも韓国プロレス版『ロッキー』のような安定のフォーマットだ。ここは流石にムネアツで、観ていて思わず力んでしまう。
恐らく今後は少しは自信を持って社会生活を営んでいけることだろう。遅刻癖も克服だ。上司も見返すことができる・・・のか?
ところで、彼のコスチューム姿がすこぶる可笑しい。笑えるのと情けなさが入り混じって妙な感覚にとらわれる。コミックプロレス張りの興行にぴったりで、これらも一見の価値アリだ。って誰も見たがらないか。
物語と関係ないもののひとつ気付いたのが、街の不良少年たちの態度。どうしても目上の人への礼儀を重んじる文化が根強い中、そんなの関係ねえ。とばかりにオヤヂ狩りもどきの狼藉。ジェネレーションの変化を匂わせる一幕であった。
ちなみに、英語タイトルは「The Foul King」。『反則王』そのまんまだ。
中学・高校と家庭教師で指導していた男子が米国留学し、帰省の際にこれが面白いと言って持って来たDVDが本作だった。字幕が英語で、会話の内容はほぼ無理解の状態で観終えた。おもろかった。ので、日本語字幕入りのものをレンタルして観た。素晴らしかった。
*生意気にもBluRayが*
傑作名作ではないにしても『爆烈野球団!』同様記憶に残る楽しめる一本だ。
本日も最後までお読み下さりありがとうございました。
【ダメ男再起可能 ソン・ガンホを見よ!】特集
●ダメ男奮起!ソン・ガンホの真骨頂『タクシー運転手 約束は海を越えて』
●『反則王』の英語表記はそのまま「The Foul King」だった
●コリアン・ファミリーVS米軍の鬼っ子『グエムル-漢江の怪物-』←最強タッグ
●的中率百発百中千里眼の目を持つ男『観相師 -かんそうし-』
●ポン・ジュノとソン・ガンホの最強タッグ『殺人の追憶』←最強タッグ
参考
■『スノーピアサー』で『ソイレント・グリーン』の衝撃を←最強タッグ
■パルムドール受賞記念だ『ほえる犬は噛まない』←ポン・ジュノ監督作