こんにちは。行政書士もできる往年の映画ファンgonzalezです。
訪問ありがとうございます。
伊福部昭。名を知らぬ方もこの曲はよくご存知であろう。
「ドシラ ドシラ ドシラソラシドシラ…」
そう、東宝ゴジラシリーズで流れる所謂「ゴジラのテーマ」である。
このテーマについては昨年11/23付の記事『♪ドシラ、ドシラ、ドシラソラシドシラ…♪』 でも言及しているが、今回は改めての掲載。
『ゴジラ』 ('54)
梗概
太平洋のある地点で、貨物船や漁船が相次いで沈没事故に見舞われた。大戸島の長老は、伝説の怪物“呉爾羅”の仕業ではないか疑う。その心配通り暴風雨の夜に巨大生物が上陸し死傷者を出した。
山根博士らによる調査団は強い放射能反応を確認。その時怪物が出現。“ゴジラ”と命名さる。政府はフリゲート艦による海中への爆撃を敢行。
だがその後東京に上陸したゴジラは、水爆実験の影響で口から放射能を帯びた白熱光を吐きちらしつつ本土を焦土化していった。
その悲惨な場面に直面した芹沢博士は周囲からの要請により、“オキシジェン・デストロイヤー”なる秘密兵器を使用することを決意。ゴジラを倒すことは可能なのか?
原水爆実験批判の痛烈なメッセージ。反核・反戦映画。等々。
今ではそんな評価も得て、ちょっと祭り上げられている感じも否めない。
反核・反戦メッセージも含まれているとは言え、本来的には純粋に製作スタッフの、映画人としての血が騒いだ結果できあがった前例のない特撮作品だったのではなかろうか。
かつてないようなフィルムを撮りたい。というモチベーション。
同時に、ビキニ環礁で被爆した第五福竜丸事件など時事問題にヒントを得て構想を膨らませていったはずである。
さらには、冒頭でいきなり“賛助 海上保安庁”と出てきたり、劇中でゴジラを迎撃するのが警察予備隊からグレードアップしたばかりの自衛隊である。ここらにも時事的要素が垣間見られる。
ちょっと意地悪な見方をするなら、自衛隊も海上保安庁も有事に役立つんですよ、というPR効果がある。なんてね。
それに、国民にとって想像しうる大災害と言へば、地震や津波や台風よりも9年前終結したばかりの戦争であったろう。だからそれを思わせる場面を挿入すれば感情移入もしやすくなる。
応急処置が施された怪我人で満ち溢れた避難所の描写。あるひは崩れ落ちる建物の下でお母さんが幼い子供を抱きかかえて「お父様のところへ行きましょうね」と語る最も印象的なシーン。恐らく戦争未亡人だろう。観客はついこの前の記憶が鮮烈に甦ったはずだ。
そこで、大災厄の元凶ゴジラを表現する音楽である。
尋常ならざる巨大生物。その大きさにふさわしい音作りを目指した伊福部昭。
結果重低音の響きの管弦楽、ストリングスの響きを際立たせるスコアを書き上げた。
氏は、戦後間もない故に金管を目立たせると観客に戦中の軍隊を連想させてしまうことに配慮したそうだ。
ちなみにゴジラの咆哮は、コントラバスの短い弦を弓でこすり、そこに様々な音を混ぜ合わせて加工したそうである。なんと本物の動物の声まで使われたとのこと。
オープニングの東宝マークにはゴジラの足音を表す打撃音が。メインタイトルでゴジラの咆哮音が被さりライト・モチーフとなる。
そして、スタッフのクレジット。ここで例の♪ドシラ、ドシラ、ドシラソラシドシラ…と、メインテーマへと移ってゆく。
http://www.youtube.com/watch?v=WcT5u7y2_yA&feature=related
既に広く知られている通りこの「ゴジラのテーマ」として定着した音楽は、東京を防衛する人間側の勇壮なるテーマだ。
だからこそ、冒頭のゴジラの足音・咆哮に対応して流れ出るのである。
ここで早くもゴジラVS防衛隊のコンセプトが提示されているのだ。
もっともその後『メカゴジラの逆襲』('75)のメインタイトルに別アレンジで起用され、ゴジラを表す「テーマ」として認知されることになるのだが。
ところで、伊福部ファンなら周知の事実であるが、実はこの楽曲は松竹映画『社長と女店員』('48)という喜劇映画のメインタイトルとして用いられていた。貴重な音源をアップしてくれた人がいる。
http://www.youtube.com/watch?v=NklvxiHk6sE
私は門外漢なので詳細は分からぬが、この曲は「フリギア奏法」という18世紀まで知られていた手法を元にしたそうだ。白鍵“ミ”から始まる“ミファソラシドレ”の音階を元にしているという。
さらに、後年再起用される楽曲として魅力あふるる「フリゲート・マーチ」を挙げねばなるまい。
http://www.youtube.com/watch?v=CiY5j5QvcdQ
フリゲート艦が対ゴジラの爆雷攻撃を実施するシーンなどに用いられた。これは『怪獣大戦争』でブレークするだろう。
さて、ちょっとしたエピソードを。
氏は封切当時5歳のご子息を連れて有楽町の日劇で鑑賞したそうだ。その帰り、ご子息は自分がいる映画館がゴジラに壊されたのが不思議だった、と話していたそうだ。微笑ましい場面だ。
ハリウッド版『ゴジラ』公開と伊福部昭生誕100周年、ゴジラ生誕60周年に該当する2014年。今年はまさに『ゴジラ』メモリアルイヤーと言へるだろう。
本日も最後までお読み下さりありがとうございました。
『ゴジラ』 94分
監督;本多猪四郎
特撮監督;円谷英二
脚本;村田武雄、本多猪四郎
製作;田中友幸
原作;香山滋