こんにちは。行政書士もできる往年の映画ファンgonzalezです。
訪問ありがとうございます。
伊福部昭。『ゴジラ』('54)の作曲家として有名だ。その歴史的事実のみ独り歩きしている感もあるが、そのフィルモグラフィーは多彩を極める。
しかし、今回も東宝特撮映画の音楽に触れてみる。
『怪獣大戦争』('65)
梗概
キングギドラの破壊活動ゆえ地下へと追いやられたX星人。彼らは癌の特効薬と引き換えに、日本に潜伏するゴジラとラドンを借りたいと申し出た。地球では彼らの申し出を発表し歓迎ムードに包まれる。円盤で地球を訪れたX星人の統制官たちとの交渉が成立し、X星に運ばれた二大怪獣はキングギドラを退治。しかしこれらは全てX星人の策略だった。彼らは地球の植民地化を宣言。電磁波で操られた三大怪獣が暴れ出し地球は絶体絶命のピンチを迎える。X星人を撃退することはできるのか?
まず、設定が奇想天外だ。宇宙人が地球上の怪獣のレンタルを申し込むとは。
そして、ゴジラたちが宇宙人VS地球人の兵器として入れ替わりに用いられるとは。
*X星人統制官*
*ゴジラ&ラドン、X星到着*
*寝起きに先制攻撃喰らう2頭*
結局X星人を撃破したのは地球人で、ドラマとしてはSF侵略モノのような按排だった。なので、怪獣たちは脇役的ポジションに追いやられた感が強い。
*妖艶なるX星人。水野久美*
前作『三大怪獣 地球最大の決戦』('64)に引き続きキングギドラを迎撃するのはゴジラとラドン。残念ながらモスラはいない。
それにしても大げさなタイトルではある。『大戦争』とは。むしろ前作の方がそれっぽかったような気もする。だが今回は異星での戦闘も展開するので、怪獣の頭数は減ってもスケール感からして名前負けしてはいない。
*キングギドラ参上*
が、少々複雑な心境に陥る。劇中でゴジラが『おそ松くん』のキャラクター、イヤミの“シェー”をポーズする。目覚めた際に伸びをする。初登場に比してすっかり様変わりしたゴジラ。
*伸びをした瞬間、ギドラの猛攻*
*左右対称のシェー2連発・・・*
だが、こんなことで驚いてはいられなかったのだ。今後さらにシリーズが進むにつれさらに驚くべき展開が待ち受けていたのだ。アイドル化、キャラクター化の昂進だ。殊に“ミニラ”の登場により頂点に達する。余談ではあるが。
さて、『怪獣大戦争』と言へば「『怪獣大戦争』マーチ」と来るのが通り相場であろう。多分。
何度か言及しているが、『ゴジラ』劇中の「フリゲート・マーチ」の再起用である。
先ずは、いつもの東宝マーク。ここに無協調的集団群音がゴ~ンと不吉に響く。すぐに前奏へと移り、続いて聞く者を魅了してやまないあの楽曲が高らかに奏でられる。
http://www.youtube.com/watch?v=Bsrk_ixeXh8
作品への期待を大きくふくらませる効果が絶大だ。わくわく感が増してゆく。が、この後劇中では全く流れてこなくなる。バリエーションすら無く、全く影をひそめてしまう。
ところが、終盤に至って地球人側が反撃に打って出る時に、待ってましたとばかりにほとばしり出る。オープニング時の前奏部分は切り落とされ、まさしくいきなりの“ドレミファ ミソレソ”の登場だ。
http://www.youtube.com/watch?v=kJvHYHba3Hg
いまやドラマはクライマックスへと突入。X星人VS地球人の勝負が決するまで、時に高らかに、時に音量低く、この一連のシークエンスを見事に煽りまくる。
門外漢の私には不分明な単語が出てくるが、伊福部氏が書くマーチは厳密にはマーチとは言へず、テンポの速いアレグロ・マルチアーレとかテンポ・ディ・マルシアと呼ぶに相応しい。とはご本人の弁。だが、皆がマーチと呼ぶのだから一向に構わない。とも述べている。
よって本稿もマーチと表記した次第である。
また、軍隊や進軍をイメージさせない工夫として、モールの多用(長音階で立ち上がってもすぐに短音階に移行)、手拍子を狂わす変拍子を用いる、金管を目立たせない、スネアドラムやシンバルを多用しない、等々の配慮がなされている。
氏は『ゴジラ』以降もシリーズ中の楽曲には常に戦争イメージを抱かせないよう心掛けていた。自作の音楽により聴き手が戦禍の記憶を蘇えらせることを避けていたのである。
確かに本作公開当時は戦後20年あまり。あの戦争を生々しく記憶している人が大勢いたのだ。
*驚くべきはギドラの造形美*
さて、私は劇場で観た記憶があるのだが時代が合わぬ。と思ったら、『怪獣大戦争 キングギドラ対ゴジラ』と改題され、短縮75分版でリバイバル上映されていたのだった。納得。
ちなみに、格闘家佐竹雅昭の入場の際や、映画『クレヨンしんちゃん 爆発!温泉わくわく大決戦』('99)の自衛隊出動などでシーンで用いられた。これらでこのマーチを知った方々が多いかもしれない。
ハリウッド版『ゴジラ』公開と伊福部昭生誕100周年、ゴジラ生誕60周年に該当する2014年。今年はまさに『ゴジラ』メモリアルイヤーと言へるだろう。
本日も最後までお読み下さりありがとうございました。
『怪獣大戦争』 94分
監督;本多猪四郎
特撮監督;円谷英二
脚本;関沢新一
製作;田中友幸