『大仁田厚 3』から続き。

1993.7.24 福岡・北九州・ベイスクエア特設リング 観衆12,030人
ノーロープ有刺鉄線バリケードマット電流地雷爆破ダブルヘルデスマッチ
大仁田厚 VS ミスター・ポーゴ

今回は有刺鉄線が張られてるのは2面のみ。残り2面はガラ空きで、その向こうの場外には有刺鉄線の海=有刺鉄線ボードと、地雷。
最初の被爆は大仁田。ザックリ裂けた大仁田の背中に尖った木片を突き刺す極悪ポーゴ。大仁田の背から血が垂れる。
にしても…有刺鉄線間際でのリアクションは完全にポーゴが上。ホントにギリギリで踏み止まる感じ。対して大仁田は明らかに自分から行ってるもんな(苦笑)。
ノーハンド頭突きで怒涛の反撃の大仁田だが2度目の電流爆破を食らい、さらにたたみ掛けるようにポーゴのファイヤー攻撃(何か可燃物を口に含み、火種を持って噴いて火炎攻撃)、かわした大仁田は場外に転落し地雷が爆発! デンジャラスな連続衝撃!
と、ミスター珍(当時最高齢だった(だっけ?)レスラー。もうジイさんだよ)がポーゴに捕まっている。となるとハイ、もう先の展開は明らかですね。でもまさかジイさん相手にはやらないだろう…
しかァーし!
被爆させられイスで殴打される珍→場外から生還した大仁田が珍を救うべく猛然とダッシュしてきてポーゴにタックル! 突き飛ばされて有刺鉄線に突っ込むポーゴ! と実際想像通りにベタに展開するのだが、
→これがなぜか起爆しない! 残念!
爆発すると思ったら不発という まるでたけし映画みたいな残尿感(苦笑)。
改めてひっ掴んでポーゴを放り込んだら今度は爆発。ハミ出したキャンタマ袋がちゃんとパンツに収まったようなしっくり感。
イスの上でDDO(大仁田版DDT)で大仁田勝利。
倒れている珍に寄り添う大仁田…
の背後に往生際の悪いポーゴが忍び寄り、ファイヤー攻撃!
ホントに大仁田の背中が燃える!
「水! 早く!」 絶叫する若手(←これって素顔のハヤブサ? 俺ハヤブサ(後述)の素顔知らないんだよ)。
え? これで終わり!? いたぶられたジイさんの敵討ちもなく、背中燃やされて終わって、こんなん誰も納得しないでしょ…。



1993.8.22 兵庫・阪急西宮スタジアム 観衆36,223人
有刺鉄線電流地雷監獄リング時限爆破デスマッチ
大仁田厚 VS ミスター・ポーゴ

前回の爆破マッチからわずか1ヶ月後! と日付けだけ見た時は思ったが、
なるほど前回の爆破マッチはこの西宮への布石? しらんけど。
リングをケージで囲み、有刺鉄線で電流爆破で時限爆弾。まぁ試合タイトル通りなんだけど。
この試合でもポーゴの有刺鉄線際の踏み止まるリアクション=寸止めテクはあまりにも自然にあまりにもギリギリで、実に素晴らしい。
さらに大仁田を背中から被爆させ、その裂傷へ凶器攻撃という、…↑このリアクションからいくとポーゴの凶器攻撃も見境ない暴走ではなく冷静な大暴れでジェット・シン並みにハイレベルか!?
ただ、ここでは大仁田のリアクションも切実。ホントに痛そう!
ポーゴが刺した凶器をグリグリやると客席からどよめきと悲鳴が上がる。
しかし頭突きで反撃する大仁田のテンションも高い!
10分経過で時限爆弾が作動。4:59、4:58、4:57…
ポーゴのファイヤー攻撃をかわした大仁田、走り込んでポーゴを有刺鉄線に突っ込まそうとするが、ポーゴがまたまたやってくれる、被爆寸前にレフェリー掴んで盾にして爆発!
大仁田はポーゴがほっぽらかしてた火種の上でDDO!
イスの上で落下技やるってのは時々あるけど、燃える炎の上で落下技ってのも凄い。
ケージ、有刺鉄線、マットの上には爆弾の破片と2ヵ所で燃えてる炎…ノーマン・ジュイソンのオリジナル版『ローラーボール』のクライマックスを彷彿とさせる凄まじい光景である。
残り2分18秒で大仁田がフォール勝ち。
大仁田はレフェリーを外に出そうとするが、力尽きたレフェリーは動かない。
リングアナ「大至急避難してください! 大至急避難してください!!」
大仁田はあろうことかポーゴまで助けようとしている。
5、4、3、2、1――
どちらも救えなかった大仁田は2人の上に覆い被さっている。
そして爆発! この時の時限爆弾の爆発はテリー戦に鑑みたか、ド迫力! かなり凄まじい! (まぁリング自体は吹っ飛ばないけど)
爆煙がハンパないもの。リングは爆撃でもあった戦場のような光景…
カット変わると、リングドクターか誰かが大仁田の傷を診ている。ザックリ切れた裂傷がモロに映る(!)。



1993.12.8 東京・晴海・東京国際見本市会場ドーム館 観衆12,522人
ノーロープ有刺鉄線電流爆破デスマッチ‘93
大仁田厚 VS 松永光弘

ノーロープ有刺鉄線電流爆破マッチだが、加えてさらに各コーナー(四角いリングの四隅)に有刺鉄線爆破ボードが立てかけてある。
『Vol.1』の最初の試合に出てきた空手家・松永との対戦。
松永に蹴られまくって最初の被爆。
大仁田の劣勢を打開するのはまたもやノーハンド頭突き。三沢のエルボー(肘打ち)並みの劣勢打開反撃技になっている。
やっぱ強力なのは複雑なものよりシンプルなものだなと改めて思う。凝った技より単に肘や頭とか硬い部位をぶっつける方が効く。テクニカルよりシンプルなものというのは他の物事にも共通する話なんだけど、そのへんは割愛。
Fでの大仁田の試合を観ていると、テクニカルな技が驚くほど少ない。
時代が経って技が高度になりプロレスというものが芸術的ですらある次元に近づく一方、大仁田や長州力あたりのシンプルな戦い様はそれ故、原始的な迫力や力強さがある。
大仁田はかつて全日本のチャンプだったわけだからテクニックはあるはずで、膝が駄目だから無骨な試合スタイルにチェンジしたんだろうか? そしてやがてデスマッチ路線につながったのだろうか?
それまでのスタイルが出来なくなった時、諦めてその職業自体をやめてしまうか、スタイルを変えるか…
大仁田は膝が原因でこのスタイルになったのだとしたら、その転回は大成功だったといえる。
物事は、人生は、どう転ぶかわからないものだ。そして、簡単に諦めるべきではないのだとも思う。
互いに被爆し合っての戦いが続く。
最後は大仁田が大技攻勢からフォール勝ち。
試合後、大仁田は泣きながら取材陣に怒声を発する。何を言ってるかほとんど聞き取れないのだが、要するに少人数から始まって、いまやここまできた、だから絶対に死なないというようなことを怒鳴っている。



1994.5.5 神奈川・川崎球場 観衆52,000人
ノーロープ有刺鉄線金網電流爆破デスマッチ
大仁田厚 VS 天龍源一郎

まぎれもなくビッグマッチだろう。相手は大物だし、すごい観客数だし。
天龍というレスラーは、俺的にはファイトスタイルとかは好みから外れるんだけど、人間的にはリスペクトに近いものを感じてるんだよ。
封建的な全日本のトップ選手だったわりには、精神が自由だよね。
当時の全日本の選手が基本的にまずやらなかったことをこの人はやってのけた。他の人が単に慣習みたいなもんで避けてた事を、受け入れたり挑戦したり。
新日本の猪木の技である延髄斬りをやったり、全日本内に波風立てたのも(全日本の選手では)天龍が最初だし、全日本辞めて別のとこ行っちゃったし、新日本にも上がったし、女子レスラーとも戦ったし、他にもいろいろやってるよね。それまでのタブーを破ってきた。
“第3の男”と言われ続けたことへの対抗だったのか、一時全日本に参戦してた長州力の遺伝子が混入して突然変異したのか、元々自由度の高いメンタルの人だったのか、どれかはわからないけど、
爆破マッチを受けたことも、え?天龍が!?と思うと同時に、あぁ天龍らしいなとも思えるし。
思考が自由なんだよね。
それは「適当」とか「無責任」というのとはまったく違う。
あの人の中には間違いなく自分のルールや線引きがあるはず。
だけど無意味なこだわりがない。
周りの常識と自分の常識が同一ではない。周りがそうだから自分もそうしようという思考停止な人間じゃない。
自分で考え、自分で行動する。是非のラインは自分の中にある。ちゃんとした人だと思うよ。
…一方大仁田は全日本時代、天龍に続く第4の男と言われてたらしい。
そんな2人がそれぞれ全日本を辞め、まったく別の道を行き、やがてリングで再会した…プロレス人生とは感慨深いものである。
容赦ないファイトスタイルだが、長州ほど一方的でなく、試合を成立させようとする天龍との試合は、かなり白熱したものになる。
有刺鉄線に触れまいとする駆け引きが手に汗握る。天龍をヘッドロックに捉え、有刺鉄線に振られそうになって踏み止まる大仁田の顔はマジだ。
大仁田が1度被爆したきりで、レスリングの勝負が続いている。さすが天龍の試合は無駄に大味にならない。
天龍のものすごいチョップの連発。そしてラリアットを放とうと天龍が駆け込んできた時、大仁田がかわした!
天龍が正面から有刺鉄線に突っ込んで爆発! ダイレクト! 爆発した時の天龍の姿がなかなか凄まじい。
天龍はこの試合が初の爆破マッチだよな? 初被爆がフロントからとはキツい。さすがに天龍でもこれは効いた。
大仁田の大技攻勢。ケリがつかないとみるや、大仁田はノーハンド頭突き! 特に1発目はあの天龍が声をあげる。
大仁田が助走をつけて頭突き――しかし天龍がかわして大仁田を有刺鉄線へ放り込む! 大仁田被爆!
テンション上がった天龍がパワーボム。3カウント取れないと大仁田の頭を掴んで有刺鉄線へブッ込む! 爆発!
この時天龍のリアクションもかなり激しく、爆発がかなりキツいものであることがうかがえる。
試合時間は23分55秒。かなり長くやっていたわけだ。
密度も濃かったからか、試合後の大仁田はかなり疲れた様子だ。