ストリートアートは字の如く室内の美術館やギャラリーではなく、
殆ど室外の建物の壁、電車、マンホールなどの公共施設。
作品の高額落札やアパレルとのコラボでTシャツに描写されるなど
何かと話題を提供するストリートアート。
代表的な技法は細かいディテールから大胆な表現ができるスプレー、
文字や名前をスプレーなどで描くグラフィティー(落書)やポスター、
独自のデザインも制作するステッカーやステンシル(型紙)、
小さなタイル破片を活用するモザイクスタイルやなど多種多様である。
世界的に有名なアーチスト5人を挙げれば、ヴィールス(ポルトガル)、
レディーピンク(エクアドル生まれ、ニューヨーク育ち)、キースヘリング(アメリカ)、
バンクシー(イギリス)、ブレック(フランス)とか。
1920年から1930年代、ニューヨークのギャング逹が
車のボディーや建物の壁に描いた落書きがアートの起源とか。
1980年代以降、世界中に広がり異なる文化やスタイルに影響を与え、
政治的メッセージや社会問題に焦点を与える作品も出現し、
最近ではバンクシーが高い評価を受け国際的な注目を浴びている。
作品を合法的に展示するのに許可を得るのが一般的で、
グラフィティアートには非合法なものも多く混在するものの、
それらを含めストリートアートと呼ばれている。
未だ真夏日が残る10月下旬、地元ハイキングに参加し総勢16名で、
地下鉄「西梅田」で乗車し10番目の駅「北加賀屋」で下車する。
(位置的には大阪市南部の住之江区ネ)
改札付近で屯していると、本日ボランティアガイドを担当する
二十代後半の若者二人と小学校低学年と思われる男子の三人が現れる。
「ボランティアガイドをするのは今日が初めてです。
私達はアートの街に憧れ、はるばる関東を離れ北加賀屋に移住しています。
担当はイラストマップなどを作成するデザイナーで、
この男の子は私達の生活を世話をしてくれる人の息子さんです。
皆不慣れですが宜しくお願いします」挨拶のあと、
リーダー役の若者が資料を片手に街を練り歩くことに。
ニュースなどで壁にスプレーで吹き付けた落書を見て
悪印象を抱いていたが、今はアートとして認められ、
しかも町興しに活用されていると聞き、興味が湧いてきた。
モラリザとマリリンモンローを描いている様子。
多分、有名なアーティストが描いた作品であるだろうが、
どれが誰だかサッパリ分からないまま、只管感心しつつ練り歩く。
ワンちゃん達の集まり、色んな表情を描いて面白い。
マンホールの蓋に描いた黄色いヒヨコ、
周りの花弁と調和がとれて可愛いネ。
リュックを背負って歩く男の子に親近感が湧いた頃、
「ボクは何年生?」と問い掛けると、
「小学校三年生です」とハキハキと答える。
メンバーの女性が男の子を見た時から心配していたのか、
「今日は平日でしょ。学校に行かなくて大丈夫なの?」
遠慮気味に尋ねると
「インフルエンザで学級閉鎖です。だから……」。
真面な理由を聞き、皆ホットした表情を浮かべる。
するとリーダーが男の子の生活振りを加えてフォローする。
「実家は雑貨屋を営んでいて、実はこの子も商売をしていて。
客が買い上げる商品を円単位で暗算もできるし、
売上金の中から相当の金額を抜いて仕入れもするんですよ」
「エエ~凄い。一端(いっぱし)の商売人やん」
オデンのように三本の鉄棒で串刺しした作品、
何を意味するのだろう。
SF漫画「銀河鉄道999」にでてくる女性に良く似ている。
工場内にある山積みした黄色の段ボール箱と四角い風船、
スマホを向けようとすると従業員が笑みを浮かべ案内してくれた。
「大型車両が出庫したあとなら、何時でも撮影OKです」
白壁一面に描かれた作品を眺める若い女性逹、
右の白壁にも同じ作品が並べられ可也見応えがある。
リーダーが道案内の終盤に近付くにつれ、
何回も銭湯自慢をするので仕方なく口を挟む。
「良い銭湯だろうけど我々は風呂に入らないよ。
この後、昼食を済ませて帰るだけやから」
「私は週に2,3回は行きます。本当に素晴らしい銭湯ですよ」
どうも話の焦点が合わないな、と訝りながら歩いていると
リーダーは入り組んだ細道に入り長屋の一軒家を指差し
屈託のない笑顔を浮かべ、
「ここが我が家です」と紹介してくれた。
狭そうな細長い家を眺めながら、
此所には多分内風呂はないだろうと一人納得。
視線の先にある自動車が邪魔だが、どうしようもない。
これも含めストリートアートなのかと割り切りシャッターを押した。
リーダーは凡そ2時間のガイドを終え一息吐いていた、
当初から疑問を抱いていたのを尋ねてみた。
「最後に聞きたいことがあるんやけど、
どうして関東からこの町に移住までしたの。言い方を変えれば
此処の魅力は何なのかな、簡単で良いから教えてよ」
彼は暫く考え込み、笑みを浮かべながら力強く応えた、
「この町には束縛のない自由があるからです」と。
テレビで放映されたという銭湯の前でガイド役3人と別れ、
一行は近くの中華料理屋で昼食を済ませたあと元の場所に戻り、
男の子と約束した両親が経営する雑貨屋へ向かう。
(つまり場所的には銭湯の向かい側が雑貨屋ネ)
因みにこの銭湯は地上波のテレビ番組で紹介され有名だとか。
女性軍が雑貨店で買い物をしている間に
ガイド役の男の子が出てきて組み立て机を玄関口でセットして
手際良く駄菓子を並べている。
「あのな、オッチャン達は帰るのでそんなに頑張らなくても良いよ」
辺りを見渡しても新しい客が増えそうもない様子だ。
助言しても黙々と働くので「うまか棒」4本を買い求めた。
実物のストリートアートを鑑賞し感動を覚えたのは勿論、
下町の情緒に触れ、ほのぼのとした気分にもなれた。
ウォーキングの途中、民家の庭で見掛けた南天に似たトキワサンザシ属のピラカンサ。
春に開花する白い花弁は鑑賞価値が高く、秋には赤い果実がたわわに実るとか。
欧州南部からアジア南西部で自生し、日本には明治時代に伝えられている。
(写真撮影は10月25日水曜日)