思ったとおりに行かない
世の中の多くが、思った通りに行かないものである。勉強したから成功するかと思えば、そうでもない。本を読んで知識をつけたから、現場で役に立つというものでもない。トヨタの問題解決手法を、仕入先の従業員を対象に3,000人近く講演をしたが、全く根付かなかった。 知識が付いたから、実行が出来るというものではないのである。結果が出ないので、プロセスを確認するために仕入先を訪問してみた。「なぜなぜ勉強会」なるものを毎週実施されていたのでオブザーバーとして参加してみると、その内容たるや惨憺たるものであった。先生が居ないので、正解がわからない。ただ、勉強会をしているから「何かしている」気になっていただけである。講演を聴いた時には理解しているが、いざ実行段階になるとうまく行かない。このような例は、沢山ある。例えば、トヨタのリーン生産方式は世界的に絶賛されているが、実際に取り入れている企業は少ない。 良いとわかっていても、取り入れていないのである。このように、良いとわかっていても同じ結果が出ないのは、プロセス(運営)に問題があるのである。そして、同じ結果が出ないので諦めてしまうのである。運営がうまく行かないと、結果が出ないのである。設計者と現場の乖離も、同じである。設計者が、机上で設計した通りの物が出来ないことは多い。現場では、その通りに出来ない理由もある。お互いが、相手のせいにする。「設計は、現場がわかっていない。」「現場が、ヘマをしているに違いない。」情報の共有を現場で行い、お互いに共感することが大切なのだが、それをやらない。自動車製造業を揺るがした事件で、国土交通省の指定する規格を外れた車両を、規格を外れていると知っていて、5年間市場に出していた企業があった。「ある速度からブレーキを踏んだら、ある距離内で車両が停止しなければならない。」という規定であった。「規定内で止まらないので、サイドブレーキを引っ張って合格させていた。」という事件でした。とんでもないことです。 まさかの出来事でした。自動車製造会社が不正をするとは、誰も想定していないことでした。この事件があった際に、色々と個人的に想像してみました。恐らく、その会社の現場は非常に困って、設計に何度も何度も伝えていたと思います。 結果的に、設計が対応しなかったので、現場は致し方なく出荷をする判断をしたのでしょう。初めは「異常」なことであったのに、毎日やっていたので、それが「日常」となったのです。設計がいち早く現場で確認していれば、こんな事件にならなかったでしょう。その会社の社長が記者会見で深々と頭を下げていましたが、「私は、知りませんでした。」とコメントしていました。現場で何が起きているのか、マネージメント側が知らないのです。私は、長年品質を扱う部署におりましたので、現場や設計を信用しておりません。そう言うと誤解を生じますが、信頼はしています。だけど、信用していません。「現場は、思っていることをしていない。」と疑っています。また、「設計は、必ずミスをしている。」と疑っています。そう思って、様々なことを確認しています。そして、安心するのです。現場を知らない設計。 設計どおりに製造しない現場。その状態を放置する経営者。豊田章男さんは、「トップダウンというのは、トップの人間が現場に降りていくことを言う。」と言われました。だから章男さんは、生産現場に頻繁に現れます。そして聞きます。「何か、問題はないか?」世の中は、思ったとおりに行きません。勝手に上手くいくと思っているだけです。上手く行かないのは、思ったことが動いているか確認しないからです。プロセスを確認することが大切です。同じ現場で、お互いに意見を言い合って情報を共有し、共感する気持ちで最適な答えを導き出す。共有と共感。思ったとおりにする近道です。