<シン(新)6S - 職場をスッキリさせる考え方(清潔)>


シン6Sについてシリーズ的に書いておりますが、今回は「清潔」です。

清潔とは? 一般的には、「汚れがなく、キレイなこと。」です。

シン6Sでは、「汚れないしくみをつくること」です。

普通に考えれば、整理、整頓、清掃を徹底させていれば、その場の状態は「清潔」であると言えます。
キレイにする行為をした後の状態を言うのですが、シン6Sでは、そもそも汚れないようにする行為のことを言います。


汚れてから掃除をしたり、拭いたりする事後の行動ではなく、汚れないしくみを作り、掃除もほとんどしなくて済むようにするのです。

ここで、ナゼナゼをしてみましょう。

何故、掃除をするのか? → 汚れるから。
何故、汚れるのか? → 〇〇〇しているから。

この〇〇〇しているというのが、汚れる元凶であり、原因なのです。
その原因を対策しない限りは、毎日掃除をしても汚れるのです。

具体的な対策事例を、身近な物で紹介してみます。

例えば、爪切り。 最近の爪切りは、爪飛散防止のカバーが付いており、そこに切った爪が溜まるようになっていますね。
これも、「汚れないしくみ」なのです。

工場の中で言いますと、切削などで出る屑を飛散させないようにカバーをしたり、一か所に溜まるように工夫したりしています。
このカバーが無いと、毎日大量の屑が床に落ち、掃除も大変になるのです。

こう言うと、あなたの身の回りにも、そういった「汚れない工夫」をしている物や場所があるはずです。

「清潔」という言葉は、対策をして汚れないようにする行動のことなのです。

そのお手本とも言える話しをします。

トヨタグループの中で、有名な工場があります。
通称「お座敷工場」と呼ばれています。
工場のド真ん中に、畳を敷いた大きな休憩所があります。
その工場の6Sの取り組みが徹底しており、今でも語り草になっています。

その工場では、大きな設備が何台もあり、床は油でまみれ、通路は入り組んでおり、怪我する作業者もたびたびいるような工場でした。
その状態をなんとかしないといけないと、工場の有志で6Sプロジェクトを結成し、取り組みました。

まずは、油まみれを何とかすることです。
工場全員に協力してもらい、土曜と日曜に出勤をして、徹底的に油を洗浄して取り除きました。 床も、ピカピカになりました。
次に、月曜日に稼働を始めると、色々な設備から油が滲み出て来ました。 その油の滲み出ている箇所に、赤い札を徹底的に貼り付けていきました。
設備が真っ赤になるほど、札を沢山貼り付けました。
次は、設備保全課の仕事です。 その赤札を貼り付けた箇所の穴や隙間を徹底的に埋めていったのです。 どうしても油が出る箇所には、受け皿を設置し、床に落ちないようにしました。
すると、油が一滴も落ちていない現場となり、それを維持できるようになったのです。

次にプロジェクトが取り組んだのが、「整理」です。
プロジェクトメンバーが不要と判断した物を、徹底的に捨てたのです。
その中には、試作品マスターという物があり、完成品と比較するために、製造初期の物を並べて置いている所がありました。
プロジェクトメンバーは、それを全部廃却品置き場に持っていきました。
現場長が慌てて飛んで来ました。 「それは、いるんだっ!!」と大きな声を出し、廃却品置き場から試作品を元に戻しました。
あくる日、プロジェクトメンバーは再び廃却品置き場に持って行きました。
その、捨てる、戻すを何度か繰り返すうちに、現場長がとうとう音を上げたのです。
「元に戻しても捨てられるから、試作品が無くても仕事が出来るようなことを考えてくれ。」と部下に命じたのです。
結果的に、設計図面を現場に置き、図面と比較することで仕事は出来ることになったのです。

こういった、大胆な捨てる行為を繰り返していると、工場の中に広い空き地が出来たのです。
その空き地を見ていた総務の人間が、「どうせなら、ここに畳を敷きましょう。 そして、工場見学をする人に真っ白い足袋を履いてもらって、歩いてもらいましょう。 油が一滴もついていないことを見てもらいましょうよ。」
そのアイデアは通り、実際に白足袋を履いて工場見学をして頂いたのです。

現在では、お座敷工場は無くなり、そのような工場見学をしていないのですが、当時は衝撃的な事であったため、大変有名になりました。


このように、清潔とは「汚れないしくみを作る」行為なのです。
皆さんの職場も、そういった考えで見て下さい。
一所懸命掃除をしても、汚れる箇所が無いですか?
汚れない対策やしくみを考えないと、ムダな掃除を毎日していることになりますよ。


もう一つ、「清潔」の意味で、「その人の行い、身持ちに疑いをはさむ余地がなく、清らかなこと。」というのがあります。
皆さんの普段の行いは、清潔ですか?
汚れるような事をして、あとから掃除をしても、やった事は消えません。
普段から、「汚れない事」を意識しなければなりません。
皆さんの頭の中も、清潔にして下さい。
後悔先に立たずです。