声、語り、歌、ヴォイストレーニング1日1話 -3ページ目

声、語り、歌、ヴォイストレーニング1日1話

歌手、声優、俳優、芸人、ビジネス、一般、声に関心のある人に。
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○4フレーズを完成させる

 

喉に負担のかからない発声を覚えていくと、かなり大きな声で続けて歌っても、喉は疲れません。そういう声で、半オクターブくらいの声域で試みましょう。

歌うときに大変なのは、曲が1オクターブ半くらいの音域があるのに、日頃、そんなに幅広い声域で声を使っていないからです。

日本人の話声域は、3度くらい(ドレミ)ですが、外国人は1オクターブくらいあるようです。

 

ピアノのレッスンで、1曲を練習するなら、やさしいところから入って、難しいところはあとで集中的にやるのに、なぜ、いきなり1曲をマスターしようとするのでしょうか。

 

まず、曲のサビの部分、4~8フレーズばかり、これは大体、高音で盛り上がっているのですが、このキィを、あなたの中音域の高めから、まん中あたりに下げます。(Aメロ、Bメロでもかまいません)

 

無理のない発声でできるところで、メリハリをつけやすい音域にします。すると、声がていねいに扱えるところで歌えるわけです。音程、リズム、発音の問題が解決しやすくなります。

原曲のキィに影響されず、自分にとって、もっともよいテンポやキィで行うことです。これを見つけていくのは、案外と大変なことです。しかし、自分のオリジナリティ=勝負所を発見するのには、もっとも適した練習方法です。

 

フレージングは、曲の解釈の仕方や表現したいものによって異なってきます。わからないうちは、メリハリのある曲のその部分をコピーしてみるとよいでしょう。まずは、曲の大きな流れと、それぞれの部分の役割(味)をしっかりとつかむことです。

 

とにかく日本人の歌う歌や合唱では、音域が高めにシフトしすぎています。その結果、何十年続けても、ちっとも声が出てこないと思いませんか。自由になるべきはずの歌で、発声を固めている証拠です。テンポも速すぎることが多いようです。歌い手中心に決めていないからです。

 

[フレージングのトレーニング]

1.息を吐く(深く短く)

2.息を吐く(長く)

3.ミレドで「ラーラーラー」

 息の上に「ラ」ということばをおいていくような感じ、

「ラー」「ラー」の間が途切れないようにする

4、曲のなかのフレーズで応用してください。

 

 

○名曲で自分の持ち味を学ぼう

 

名曲というのは、多くのアーティストが自分の色を豊かに表現できる可能性のある曲です。

そのため、ゆっくりめのシンプルな曲で、メロディラインが美しく、音域もあまり広くない曲が多いのです。

 

このような名曲は、無地で淡々としているからこそ、その人の味で勝負が決まるのです。

それが出せず、歌えたつもりというのでは、曲に負けてしまうことになります。

それが、名曲たる所以です。

 

こういう曲では、「いったいどう歌えばよいのか」、「自分は誰のどういう歌い方を好むのか」、「何が人の心を魅きつけるのか」、「それを自分ならどう歌うのか」などがわかってくることが勉強です。

 

何曲もとりあげてみるとよいでしょう。

名曲は、年月とともに味わいが出てきます。

自分のレベルが高くなるにつれ、そこにこたえてくれるだけのものが、名曲のなかにはあるからです。

年に何回か繰り返し、何年にもわたって、育てていきましょう。

 

 

◯フレージング考

 

 歌舞伎の話を聞いて、思い当ることがありました。

 「忠臣蔵」「千本桜」は義太夫狂言といって、義太夫節という音曲を使って上演されるそうです。これは、歌舞伎のためでなく、義太夫節の人形芝居のために創られた劇曲だそうです。歌舞伎に、大阪で大流行していた義太夫節の人形芝居を移入したわけです。

 

 さて、この義太夫節、語りものの音曲ですから、音楽的に歌いあげられます。

ところが、高いところと低いところという指定があるだけなのです。

つまり、謡い手が自分の声域のなかで自由に高低を設定できるわけです。

しかも、小節の長さは決まっていても、個々の音符の長さは指定されていないのです。

 

「上方歌舞伎」で芸術選奨文部大臣新人賞を取った演劇評論家、水落潔氏は、

「春のうららの」を「ハールのうららの」と語っても

「ハルーのうららの」と語ってもよいと述べていました。

この自由さ柔軟さが日本の音楽の特徴です。

水落氏は、間と音との重要性を指摘しています。

間の巧拙によって、音楽が活きも死にもするということです。

 

 私が述べたフレージングの考えも、まさに、この考えの上にあるわけです。

どちらかというと、現代の日本人の声に批判的で、世界の一流のヴォーカルやヴォイス、発声に忠実にヴォイトレを構築してきた私に、このことは、いろんな示唆をもたらしてくれました。

日本の古来の音楽にもある感性を現代的に生かしていけばよいという確信も与えてくれました。

 

所詮、根のところに何もなければ、他の国のアートをいくら真似たり研究しても何にもなりません。しかし、ここに一つ、確かに日本の音楽をインターナショナル的に発展させていけるルーツがあったのです。

 

 

◯ことばと音の高低を処理するトレーニング

 

 声の器を大きくしていくと、声域や声量に余裕ができます。

せりふや歌詞もこなせるようになってきます。

「あおい」と「美しい」ということばでは、「あおい」の方が簡単です。

低いドドドと高いドドドでは、低いドドドの方が簡単です。

 

簡単なものを徹底的にトレーニングしていくと、

少しずつ、体、息、声が使えるようになってきます。

すると、しぜんに使える感覚がわかってくるのです。

声の器が大きくなると、結果としていろいろなことが自由にできるようになります。

 

これが実力の基本となるものです。

この力をつけるのが、私の考えるヴォイストレーニングの当初の目的なのです。

 

 

[ことばと音の高低を処理するトレーニング]

 

 ミレドレミ、ドレミレドのメロディで、次のことばを処理してみましょう。

キーを半音ずつ上げたり下げたりしてみてください。

ややゆっくりめに充分、伸ばしてやります。

 

1)あおいあお

2)そらとうみ

3)うつくしい

◯ことばを処理する力をつけるトレーニング

 

 「アエイオウ」という母音のそれぞれのトレーニングについても、

先に述べたことは当てはまります。

聞きやすいことばを発音で区分けするより、

パワーアップした声の器をもって処理します。

細かく発音の矯正をするよりも確実に処理できるようになります。

 

歌は表現する力を求められています。

それぞれの音が正しいとか、ことばがきちんと発音できているということは、その上に成り立つことなのです。

ですから、商品になる声、価値のある声を、

伝わるように磨いていくのです。鍛えて磨くのです。

地力のないのをいくら調整してブラッシュアップしても、

大して使いものにはなりません。

 

 

[ことばを処理する力をつけるトレーニング]

 

 ドドドドド ドド♯レレ♯ミ ドレミレド 

ドレミファソ ドミソミド ドシラシド ミレ♯レド♯ド

 

これらのメロディで、次のことばを処理してみましょう。

キーを半音ずつ上げたり下げたりしてみてください。

ゆっくりと充分に、伸ばしてやります。

 

1)アーエーイーオーウー

2)ガーゲーギーゴーグー

3)ゲーガーゴーガーゲー

4)アーカーサーターナー

5)バーベービーボーブー