Jethro Tullの1973年リリースの6枚目のアルバム。 ジェスロ・タルは1968年にイアン・アンダーソンを中心に結成されたイギリスのバンド。イアン・アンダーソンのワンマンバンドのため、現在まで何度もメンバーチェンジを繰り返しながら活動を続けている。 音楽的にもイアン・アンダーソンの多彩な才能によるところが大きく、パントマイムを導入した演劇的なステージングを始め独特な歌唱法やフラミンゴ奏法と呼ばれた片足でフルートを吹くスタイルは非常に印象的で、評価を受けた。 このアルバムは、前作“Thick As Brick”に続いて製作されたコンセプトアルバムで、組曲形式で大きく“A Passion Play”のPart1とPart2に分けられている。タイトルはキリスト教の受難劇を表しており、発売時には賛否両論を巻き起こした。文学的な寓話をテーマにした難解なコンセプトアルバムで、プログレッシブロックのスタイルとサイケデリックな要素、イギリスの伝統的なフォークミュージックと新しいロックを融合したそのスタイルは斬新かつ、非常に質の高いものであった。 なお、本作は近年enhanced CDとして“Story of the Hare Who Lost His Spectacles ”の映像が追加収録されて再発されている。イアン・アンダーソンがいかに本作について思い入れがあり、新しいメディアに対する貪欲な姿勢もまだ健在であることを証明している。 ジェスロ・タルは単に音楽的な構成など表面的な部分だけではなく、音の概念やコンセプトなどを広げて実験的な試みを行うという極めて本質的にプログレッシブにあり続けようとした。そしてそれそれのテーマに向かってあくまで自分なりの解釈を表現していく手法は群を抜いている。本作はそんなイアン・アンダーソンの作ったアルバムの中でも最高傑作とも言えるほど質の高いアルバムである。
ご存知カーペンターズの1973年のアルバム。 カーペンターズは、日本でもいまだにTV番組等のタイアップやCM曲に使われるほど人気の高いバンド。話題になるたびに何度もベスト版が編集されていて、シングル曲を中心に1曲ごとに知名度の高い曲は非常に多いが、カーペンターズのオリジナルアルバムというと意外と聞いたことのない人が多い気がする。 カーペンターズは1969年にデビューし、バカラックの“They Long to Be Close to You”のヒットでグラミー受賞し、一気にトップグループの地位を獲得する。このアルバムはそのカーペンターズの活動が最も調子の良かった頃に作られた5枚目にあたるアルバム。A面はこれまでのスタイルの質の高い曲を聴かせるが、B面はもはや知らない人はいないであろう名曲“Yesterday Once More”を中心にオールディーズ名曲がカバーされていて、曲間をDJのアナウンスが埋めるというスタイルで、トータルアルバム的な性格を持つアルバム。 “Yesterday Once More”に始まり、ビーチボーイズの“Fun Fun Fun”そしてDJが「この歌がヒットした頃、あなたはなにをしていましたか?」と問いかけ“End Of The World”、そして“ジョニーエンジェル”“燃ゆる瞳”へと流れていく構成は出来すぎとも言える見事な構成。私のようなこの時代とまったく縁のなかった世代のものが聴いてもぐっと感じさせるものがあるのだから、リアル世代にとってはたまらない構成なのだろう。 その他にもレオン・ラッセルの“マスカレード”やセサミストリートのテーマ“シング”などアメリカンポップスのスタンダードとも言える名曲揃いで、カーペンターズのベストアルバムに必ず収録される曲も多い。 熱いアメリカンドリームの名曲郡をカレンは冷めたクールな歌声で歌いこなす。このカレンの唯一無二の歌声は、アメリカ社会やポップミュージックが都会的で洗練された音楽に変わりつつあるこの時代の背景をうまく反映させた歌声であったと言える。カレンの歌と兄リチャードのつくる夢のようなサウンドの瑞々しさは、世代を超えて愛され続けている。ビートルズを嫌いだという偏屈な人間は時々いるが、私はカーペンターズを嫌いだという人間にはいまだに出会ったことがない。