Miles Davis - On The Corner | NOTRE MUSIQUE

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Elle est retrouvee.
Quoi? - L'Eternitee.
C'est la mer alleee
Avec le soleil.

On The CornerMiles Davisの1972年の問題作。
エレクトリックマイルスを代表する名盤であると同時に発売当時ジャズ愛好家を中心になにかと物議を醸した作品。
“Bitche's Brew”以降模索し続けてきたマイルスの広義でのブラックミュージック、アフリカンポリリズムを追求してきた到達点とも言えるアルバムである。メンバーはDave Liebman(sax),Carlos Garnett(sax),Bennie Maupin(bcl),Chick Corea(key),Herbie hancock(synth&elp),Harold williams(org&synth),John McLaughlin(gt),Michael Henderson(b),Al Foster(ds),Jack Dejohnette(ds),Billy Hert(ds)という強力なメンバー編成にバダル・ロイのタブラ他シタールなどインド系ミュージシャンが多数参加している。なお“Bitchs Brew”からのメンバーとこれ以後“Agharta”までともにするメンバーが重複しており、メンバー編成的にもエレクトリック・マイルスの集大成とも言える。
収録曲のクレジットは全8曲となっているが、実際には1曲目から4曲目までは同じ曲を便宜的に4つのタイトルにわけたもので、CDではインデックスがつくがアナログではそのまま1曲としてしか認識できない。それに“Black Satin”のVersion違いが4パターン収録(それぞれ曲名は違っている)という現代的な解釈ではアルバムというよりMaxi Singleに近い。マイルスはこの当時、スライやJBといったファンクサウンドに惹かれていく一方で、カールハインツ・シュトックハウゼンの現代音楽にも惹かれていたようだ。このあたりのトータル的なコンセプトやアルバム構造はシュトックハウゼンからの影響が強い。
アルバム冒頭の最初からして唐突に一拍目の8部音符の裏拍から入るという、複雑な構成がされていて、決して踊るための音楽とは言えない。タブラの音色が響く中をリーブマンとカルロスガーネットのサックスが浮遊し、ギターとドラムでポリリズムをたたき出す。シタールなどインドの楽器を使ってはいるが、リズムはアフリカン・ポリリズムを基調としたアフロ・ファンクである。
この時代のマイルスの音楽の作り方は、ひたすらジャムを繰り返したものを録音し、それをテオマセロが編集して商品化(アルバム化)するというスタイル。
そしてマイルスのアルバムではあるが、トランペッターとしてのマイルスの露出は極めて少ない。スタジオで怖い顔しているだけで、メンバー全員が出すサウンドをマイルスのサウンドに変えてしまう魔力を持っている。抑圧することによりメンバーの能力を最大限に引き出すというマイルスにしか出来ない手法である。
マイルスが書く譜面自体も高度で難易度の高いリズムが書かれていたようだが、それに輪をかけてテオマセロが複雑な編集をしている。この二人の相乗効果が確信犯的なわかりにくさを作っているのである。ここが同世代やマイルスの元を離れて自己のフュージョンを確立していったミュージシャンのサウンドと根本的に異なる要素でもある。
このアルバムは現代のクラブ世代にも受けが良いアルバムのようだが、突然裏拍から入るタイミングとかBMPをずらせていくようなポリリズム的手法は所詮踊ることを目的としたクラブサウンドとしてサンプリングした場合に最大限の魅力を発揮できるとは決して思えない。そういったDJたちにも安易にメスを入れることをゆるさないほど完成度の高いサウンドとも言える。
ストリート・ミュージックではあるが、決してダンスミュージックではない。ファンキーなアルバムジャケットが有名になっているが、このジャケットに惹かれて踊れるファンクを期待して聴くと痛い目を見るアルバムである。
ファンクとジャズというストラクティブな音楽を脱構築し、現代音楽とインド楽器とアフリカンビートによって再構築したこのサウンドはマイルスが生涯を通して作ってきたサウンドの中でも一,二を争うほど芸術性の高い作品である。