カヒミカリィの2003年のアルバム。通算4枚目のアルバムで、レコード会社を移籍後初のアルバム。これまで同様カトリーヌとの共作の他にJazzや現代音楽を取り入れた意欲作である。ジャズテイストの強い曲は菊地成孔がプロデュースしている。これまでフレンチポップを独特なウイスパーボイスで歌ってきた彼女ではあるが、この作品ではそのフランス観やサウンド観を全てオープンにし、内面的で私的な世界を叙情的に表現している。彼女の内面にある夢の世界をテーマにしたコンセプトアルバムで、フレンチポップな要素やアバンギャルドなジャズ、ミュージックコンクリート的な日常的な雑音まで含まれており完成度は驚くほど高い。動と静の対比、躍動するリズムと生活音、アバンギャルドなノイズと整合性のあるジャズを同胞する不思議な世界を描いている。
もとは90年代の渋谷系ブームの中で現れたカヒミであるが、パリに移り住み着実に感性を磨き、決してフレンチの物真似に終わらないオリジナリティと他の邦楽とは一線を画すクオリティを身に着けた。全体的なコンセプトや音楽的な感触はブリジット・フォンティーヌの名作“ラジオのように”を彷彿させるが、これは明らかに彼女自身のオリジナルだと言える。彼女のこれまでのキャリアを総括するかのような充実した作品である。
カヒミはこの作品で、自分自身のサウンドの持つあらゆる要素を再構築することに成功している。また日本人でありながらミュージックコンクリートとフランス語の相性の良さを証明するという偉業を成し遂げた。その姿勢はフランス人でありながらあえて日本を経由させ、日本人の持つフランス贔屓を上手く利用したClementineとは対象的であり、控えめに表現してカヒミの音楽はクレモンティーヌの数十倍はフランス度が高い。