特急「ひたち」、「ときわ」の概要
特急「ひたち」、「ときわ」は常磐線を走る特急列車です。
「ひたち」は品川からいわき・仙台を走り、「ときわ」は品川・上野から土浦・勝田・高萩を走っています。
2015年のダイヤ改正で車両がE657系に統一されたため、現在の運行形態となりました。
それ以前は651系を使用した「スーパーひたち」とE653系を使用した「フレッシュひたち」で運行されていました。
「ひたち」の名前の由来は茨城県の旧国名「常陸」から、「ときわ」は茨城県と福島県を指す「常磐」の訓読みから来ています。
「ひたち」は福島まで乗り入れる一方、「ときわ」は茨城県内で完結するため、由来と実際の運行区間が逆転しています。
「ひたち」は1969年から運行されていますが、「ときわ」は1985年に一度消滅しています。
約30年ぶりに「ときわ」は復活したこととなります。
特急「ひたち」、「ときわ」の停車駅
※2024年現在 ー:ひたち ー:ときわ
「ひたち」、「ときわ」共に約1時間に1本の間隔で運行されています。
運行本数が非常に多く、停車パターンも多種多様です。
「ひたち」は上野から水戸までは基本ノンストップで走る一方、水戸から先はコンスタントに停車します。
仙台発着の「ひたち」は1日3往復走っており、所要時間は約4時間半です。
「ときわ」は茨城県民向けの列車となっており、「ひたち」が停車しない石岡、友部に全列車が停車します。
朝夕には通勤需要を拾うため龍ヶ崎市、牛久、ひたち野うしく、荒川沖、赤塚に停車します。
一部上野発着、土浦発着、高萩発着の列車も設定されています。
特急「ひたち」、「ときわ」の使用車両
特急「ひたち」、「ときわ」にはE657系が使用されています。
E657系は2012年に投入された特急型車両です。
2012年まで651系が「スーパーひたち」に、E653系が「フレッシュひたち」に使用されていましたが、常磐線特急は全てE657系に統一され、「ひたち」、「ときわ」体制での運行に変更されました。
それと同時に着席サービスも開始しました。
651系とE653系にはそれぞれ付属編成が用意され、利用客の少ない区間では付属編成のみでの運行も行われていましたが、E657系は全編成が10両編成となっています。
▲現在の常磐線特急に使用されているE657系。
▲「スーパーひたち」に使用されていた651系。
▲「フレッシュひたち」で使用されていたE653系。
乗車レポート(2023/08/02)
この日は品川発仙台行きの「ひたち13号」に乗車しました。
この仙台発着の「ひたち」は日本で2番目に走行距離が長い昼行定期在来線特急列車です。
今回は普通指定席を利用しました。
全席にコンセント、フリーWiFiが完備されているため、4時間半の長旅も苦にならないでしょう。
・上野~水戸
「ひたち」は全て品川発着ですが、上野東京ラインが開業する前は全て上野駅発着でした。
現在も基本的に毎時ちょうどの時間で発車するため上野から乗車しました。
「ひたち13号」は上野駅を13:00に発車します。
▲できれば地上ホームから乗車したかった。
しばらく東北本線らと並走した後、日暮里を過ぎて急カーブを曲がると常磐線に入ります。
「ひたち」はひたすら東に向かい、隅田川、荒川、中川、江戸川、利根川と川を渡り続けますが、川を渡るたびに建物が低くなり、田舎になっていくのが面白いです。
利根川を渡ると茨城県に入り畑など長閑な光景が広がるようになります。
▲「葛飾ラプソディー」でお馴染みの中川を渡る。
景色は平坦ですが、とにかく速いです。
「ひたち」は上野から水戸まで基本ノンストップのため、ほぼ最高速度の120km/hをずっとキープしながら走り続けていました。
常磐線は東北本線に比べて地形が平坦なため、東北本線と共に東京と東北地方を結ぶルートとして重宝されていました。
常磐線には取手から藤代の間に直流と交流が切り替わるデッドセクションがあります。
「ひたち」はここを通過する際は電気の供給が途切れますが、予備電源で車内灯は点いたままとなります。
モータ音や空調の音は途切れるので、そこでデッドセクションを体感しましょう。
猛スピードで茨城県内を爆走し、上野からわずか70分ほどで県庁所在地の水戸に到着します。
約110kmを70分で走り抜けるわけですから、「ひたち」がいかに速いかお判りいただけると思います。
・水戸~いわき
水戸を過ぎると一気に停車駅が増えるため、さっきのような疾走感を味わうことはできませんが、最高速度は130km/hに設定されています。
水戸の隣、勝田は車両基地が併設される常磐線有数の主要駅です。
「ひたち」の半分以上の需要は水戸・勝田のため、かつては特急列車の増解結が行われていました。
日立を過ぎるとこれまでずっと山とは無縁だった常磐線も少し山がちな地形を走るようになります。
茨城県最後の停車駅(この列車は通過)である磯原を過ぎると海が見えるようになります。
ずっと海岸沿いを走っているイメージがある常磐線ですが、常磐線で海が見える区間はごくわずかです。
茨城県最北の駅である大津港を通過すると福島県との県境区間に差し掛かります。
トンネルを越えて海が見えるようになると福島県に入り勿来に到着します。
▲勿来手前から望む太平洋。
勿来からはいわき市に入りますが、いわきまでほぼ各駅停車のような停まり方をします。
いわき市は勿来市(勿来駅周辺)、磐城市(泉駅周辺)、常磐市(湯本駅周辺)、内郷市(内郷駅周辺)、平市(いわき駅周辺)などの市町村が合併して誕生した巨大な市で、一つ一つの駅の規模が大きいため、「ひたち」も各駅に停車します。
各駅は山に阻まれており、駅と駅の間には必ずと言っていいほどトンネルがあります。
列車は泉、湯本と停車し、常磐線の一大主要駅であるいわきに到着します。
「ひたち」の大半の需要はいわきまでで、仙台行きの「ひたち」にはほとんど人が乗っていませんでした。
・いわき~仙台
先述した通り常磐線特急の需要の大半はいわきまでのため、いわきで特急列車の系統分離を行う計画がありました。
上野からの特急は全ていわき終着となり、いわきから仙台は別の特急列車を走らせる計画で列車名の公募も行われましたが、東日本大震災によって常磐線が寸断されたためこの計画は白紙になりました。
2020年に常磐線が全線復旧したと同時に「ひたち」はいわきで分断されることなく、3往復だけですが仙台行きが運行されるようになりました。
はっきり言っていわきから仙台に10両編成の特急列車を走らせるのは過剰としか言えませんが、東日本大震災さらには、福島第一原発事故で大打撃を受けた常磐線沿線地域の復興のシンボルとして走らせていると感じられます。
もちろん、全く需要が無いわけではなく震災復旧工事の関係者や、いわきから原ノ町、仙台へ向かう人に重宝されています。
四ツ倉を過ぎると再び太平洋が見えますが、広野を過ぎると太平洋はほとんど見えなくなります。
普段は穏やかな海ですが、東日本大震災の際には巨大な津波を引き起こし、甚大な被害を与えました。
この辺からは東日本大震災の爪痕を見ざるを得ない光景が続きます。
▲四ツ倉周辺からの太平洋。
富岡から浪江は福島第一原発事故の放射能汚染の影響で、最後まで不通状態が続いた区間です。
富岡は津波によって流出したようで、駅は少し移設されたそうです。
駅の周りには一面更地が広がっており、津波の爪痕が感じられます。
▲富岡駅周辺。一面の更地が広がっており、津波の痕跡は今も残っています。
大野から双葉の間は震災前複線化されていましたが、復旧時に単線化されました。
線路が敷いてあった敷地は道路に整備され、福島第一原発で何かあった時のための避難通路、修繕用通路として使用されています。
また、大野周辺は現在も帰宅困難区域に指定されている場所があり、震災後からずっと放置されているような民家などが見受けられました。
▲この道路には元々線路が敷いてありました。奥の山の向こうに福島第一原発があります。
浪江を過ぎると福島第一原発の影響も小さくなり、かつて「スーパーひたち」の終着駅にもなっていた主要駅の原ノ町に到着します。
相馬から亘理までは津波の被害をもろに受けた区間で、駒ヶ嶺から亘理までは内陸に線路が移設されました。
この辺りも一面の更地が広がっており、津波の跡が色濃く残っていました。
岩沼を通過すると、約330kmぶりに東北本線と合流し終点の仙台に向かいます。
仙台に近づくにつれマンションや商業施設などが多くなり、広瀬川を渡ると仙台の中心部に入ります。
大きなカーブをゆっくり通過して終点仙台に到着します。
▲広瀬川を渡り仙台の中心部へ。
車窓の動画はこちらから↓
総評
乗車時間: ★★★★★
スピード感:★★★★
車窓: ★★★
東京から仙台まで約4時間半の長旅となりましたが、乗っていて退屈にはなりませんでした。
正直際立って景色のいい区間はありませんでしたが、とにかく速いので流れ去る車窓を眺めるだけでも十分楽しめます。
いわき以降は東日本大震災の影響をもろに受けた区間であり、現在もその爪痕はくっきりと残っています。
常磐線は全線復旧を果たしましたが、沿線の復旧はまだまだ道半ばといった印象でした。
この光景を見れば色々思うことはあると思います。
東京から仙台に行く場合新幹線なら1時間半程の所要時間ですが、この仙台行き「ひたち」の場合は約4時間半かかり、料金もそこまで安くはなりません。
しかし、これだけ新幹線網が発達した現代で4時間を超えるようなロングラン特急が残っていることは大変貴重です。
わざわざ「ひたち」で東京から仙台を目指すのは非常にコスパが悪いですが、新幹線では味わえない非常に価値のある体験ができます。
乗り鉄なら是非とも乗り通したいものです。