特急「くろしお」の概要
特急「くろしお」は京都・新大阪から和歌山・白浜・新宮などを結ぶ特急列車です。
「くろしお」は元々天王寺から紀伊半島の海岸沿いを走り続け、名古屋へ向かう特急列車として運行されていました。
1978年に紀勢本線の和歌山~新宮の電化開業を期に新宮から西は「くろしお」、東は「南紀」と系統分離されました。
名前の由来は太平洋の暖流である黒潮から来ています。
特急「くろしお」の停車駅
「くろしお」は白浜を始めとする南紀地方への観光輸送と、大阪・和歌山との通学輸送に対応するダイヤが組まれています。
大半の列車は白浜止まりで、新宮まで向かう列車は1日5往復となっています。
朝夕には大阪方面へ通勤する和泉地方の府民、和歌山県民を運ぶための和歌山・海南発着の列車が設定されています。
一番長い距離を走る列車は「くろしお12号」で、所要時間は約5時間弱です。
特急「くろしお」の使用車両
特急「くろしお」では3形式の車両が使用されています。
特急列車に使われる車両は統一される傾向にあるため、3種類も使用されているのは珍しいです。
・283系
1996年にデビューした車両で、当時は「オーシャンアロー」として運行されていました。
振り子車両でイルカのような前面デザインが特徴的です。
・287系
2012年にデビューした車両です。
一部の編成にはアドベンチャーワールドのラッピングがされており、「パンダくろしお」と呼ばれています。
▲アドベンチャーワールドのラッピングが施された「パンダくろしお」編成。
・289系
2015年に北陸新幹線の金沢延伸で余剰となったしらさぎ用の683系を直流化改造した車両です。
この車両の投入により381系が引退しました。
乗車レポート(2023/06/19)
この日は和歌山から紀伊勝浦まで「くろしお1号」に乗車しました。
車両は「パンダくろしお」編成の287系でした。
この日は平日にもかかわらず車内には結構な人が乗っていました。
・和歌山~御坊
和歌山から海南まではずっと住宅地が続いており、和歌山県でもとりわけ人口の多い地域のようです。
海南から加茂郷あたりまでは海岸線沿いを走るため、和歌山湾を眺めることが出来ます。
海岸沿いを走ると言っても山が海岸線ぎりぎりに迫っているため、海を眺められる時間はあまり多くありません。
下り線の方が高い所を走っているため、海がよく見えます。
対岸には海南市の工業地帯が見えます。
加茂郷を過ぎると周りの景色はだいぶ長閑になりますが、山の斜面には一面のミカン畑が広がるようになります。
箕島からは有田川に沿うように走りますが、やはりミカン畑が目立ちます。
綺麗に整地されている山の斜面は全てミカン畑だと思われます。
藤並を過ぎると列車は山の中を走るようになります。
紀勢本線は海岸線をずっと走っているイメージがありますが、実際には日本有数の山岳路線となっています。
283系や381系など振り子式車両が導入されたのはそのためです。
しばらくすると主要駅の御坊に到着します。
・御坊~紀伊田辺
御坊を過ぎると再び山越えとなり、カーブも多くなります。
切目を通過すると紀勢本線有数の絶景ポイントに差し掛かります。
切目から南部にかけては千里海岸とも呼ばれる海沿いを走ります。
ここから雄大な太平洋を望むことができ、列車は少しスピードを落として走行しました。
車掌さんからのアナウンスもありました。
海岸沿いを過ぎ少し進むと主要駅の紀伊田辺に到着します。
紀伊田辺で複線区間は終わり、ここから紀勢本線は亀山まで単線となります。
・紀伊田辺~紀伊勝浦
紀伊田辺は大きい街なのでしばらく平地を走りますが、すぐ山越えの区間となり、山を越えると白浜に到着します。
白浜は関西圏の方にはお馴染みのリゾート地で、「くろしお」の大半の需要は白浜までです。
実際白浜で7割くらいの人が降りていきました。
白浜を過ぎると周参見あたりまで険しい山越え区間となります。
周参見を過ぎると海が見えるようになりますが、この辺りは海岸線のギリギリまで山が迫っており、紀勢本線は所々トンネルをくぐります。
本州最南端の地である串本を過ぎると車窓から紀伊大島と、景勝地である橋杭岩を少しだけ見ることが出来ます。
古座から先は山の中と海岸線沿いを繰り返しながら走ります。
Googleマップなどで海が見えそうなポイントを確認しながら乗ると楽しいと思います。
列車は森浦湾沿いを走り、山を越えると紀伊勝浦に到着します。
この日はこの後特急「南紀」に乗るため紀伊勝浦で降りました。
▲森浦湾の様子。荒々しい岩礁を列車から見ることが出来ます。
総評
乗車時間: ★★★★
スピード感:★★★
車窓: ★★★★
「くろしお」の一番の魅力はやはり海だと思います。
海が見える区間は意外と少ないですが、その分見える海は非常に綺麗です。
ここまで綺麗に海が見える特急列車もあまりないと思います。
列車のスピードはそこまで速いとは思いませんでした。
特に紀伊田辺以降の単線区間はあまり特急列車らしい走りを感じませんでしたが、その分綺麗な景色を眺めることが出来ます。
乗っただけで十分和歌山の観光をしたような気分になりました。