特急「いなほ」の概要

特急「いなほ」は新潟から酒田・秋田を結ぶ特急列車です。

元々「いなほ」は上野から高崎線、上越線、信越本線、白新線、羽越本線経由で秋田を結ぶ特急列車でしたが、上越新幹線開業後は新潟が発着駅となっています。

ほぼ全区間日本海沿いを走っており、日本海縦貫線で最も長距離を走る特急列車となっています。

それゆえ風の被害を受けやすく、冬場は強風により運転が打ち切られることも珍しくありません。

 

 

特急「いなほ」の停車駅

※2024年3月現在

特急「いなほ」は7往復運行されていますが、そのうち秋田まで向かうのは2往復のみで、残りは酒田止まりとなっています。

停車駅は全列車統一されています。

 

 

特急「いなほ」の使用車両

2014年から「いなほ」ではE653系1000番台が使用されています。

E653系は元々常磐線特急「フレッシュひたち」で使用されていた車両で、「いなほ」への転用にあたりカラーリングの変更や寒冷地対策、グリーン車の新設などの改造が行われました。

7両編成で1号車がグリーン車となっています。

1日1往復だけ特急「しらゆき」で使用されている1100番台が「いなほ」の運用を担当することがあります。

▲E653系1000番台の基本カラー。

▲一面青色に塗られた「瑠璃色」塗装。このほか「ハマナス色」も存在します。

 

 

乗車レポート(2024/03/07)

この日は「いなほ7号」に乗って新潟から秋田まで全区間乗り通してみました。

約3時間40分の長旅となります。

「いなほ」は新潟駅の1番線に停車しますが、この1番線は新幹線のホームと平面乗換ができます。

▲新潟駅に停車中の特急「いなほ」。

「いなほ」に乗るなら是非とも利用したいのがグリーン車です。

E653系には元々グリーン車が連結されていませんでしたが、「いなほ」への転用にあたりグリーン車が新設されました。

その際「どうせグリーン車を新設するならとびきり豪華なグリーン車を作ってしまおう」と、JR東日本の車両としては異例の2+1列のグリーン車となりました。

シートピッチは1820mmという驚異的な広さとなっており、これは普通車の2席分に相当します。

乗車定員は半減しましたが、快適性は倍増しました。

各座席には仕切りが設けられており、後ろの人を気にせずリクライニングも倒し放題です。

しかし、この仕切り板が足を伸ばすときに邪魔と感じる人もいるかもしれません。

そんな時は最前列の席を確保しましょう。

この席だけはとてつもなくシートピッチが広くなっており、壁に設置されているテーブルはもはやお飾り状態となっています。グランクラスよりも広いかもしれません。

しかし、この最前列シートにも欠点がありとにかく寒いです。

デッキの真後ろにあるためか暖房の効きが非常に悪く、他の座席は暖房が効いているのに、最前列シートだけ冷房が効いているような状態でした。

なお、グリーン車両にはだれでも使用できるフリースペースが用意されています。

恐らくフレッシュひたち時代からあったものと思われます。

・新潟~村上

新潟から新発田までは白新線を走ります。

沿線は新潟市近郊のため駅の周辺には新興住宅などが沢山建っていますが、駅がない所には一面の田んぼが広がっています。

さすが日本一の米どころ新潟といった光景です。

新発田からは羽越本線に入りますが、相変わらず一面田んぼの中を突き進んでいきます。

速度は大体100~110km/hくらいは出ており、なかなか速かったです。

 

・村上~あつみ温泉

新潟から50分ほどで新潟県最北の都市、村上に到着します。

村上駅は越後平野の北限ともいえる場所に位置しており、ここから羽越本線は海岸線沿いを突き進んでいきます。

その前に見どころの一つとして、村上駅を過ぎると電線に流れる電気の流れ方が変わるデッドセクションを通過します。

村上より南は直流電気、北は交流電気が流れており、デッドセクションでは一時的に電気の供給がストップします。

この間列車は惰性で走行し、室内灯、空調の電源は切られます。

E653系は交直流対応の電車のため、デッドセクションを越えることが出来ます。

なお、普通列車は全て気動車で運行されているため、羽越本線のデッドセクションを体感できるのは特急「いなほ」だけです。

 

このデッドセクションを越えるといよいよ海の際を走るようになります。

新潟県と山形県の県境は急峻な山地となっており、羽越本線は仕方なく海岸線を通っているような区間です。

もし羽越新幹線が開業するなら確実に長大トンネルでショートカットされるでしょう。

村上から小波渡付近まで約60kmに渡り海岸線を走り続け、いくつかのトンネルをくぐりつつも基本的にずっと海を眺め続けることができます。

ここまで長時間海を眺められる路線もそう多くはありません。

▲「いなほ」から眺める日本海。奥に見える島は栗島。

そんな中特に絶景と言われているのが桑川から今川の間にある「笹川流れ」と呼ばれる景勝地です。

日本海の激しい波によって浸食された奇岩が無数に転がっており、「いなほ」の車内からも堪能することが出来ます。

 

・あつみ温泉~遊佐

あつみ温泉駅を発車した後しばらくすると列車は内陸部を進み、庄内平野に差し掛かります。

庄内平野も越後平野同様日本有数の米どころとして知られており、駅と駅の間には一面田んぼが広がっています。

また、この地方のシンボルともいえる鳥海山も見えてきます。

▲一面に田んぼが広がる庄内平野。

 

余目を過ぎると最上川を渡りますが、川を渡る直前に突風にあおられ車両が脱線・転覆するという大事故が発生しました。

死者も発生する大惨事となりましたが、乗務員にも対処のしようが無かった不慮の事故とされています。

現在最上川を渡る周辺の線路には防風柵が取り付けられています。

 

酒田を過ぎたあたりから右手に雄大な鳥海山を見ることが出来ます。

特に綺麗に見えるのは遊佐あたりで、車内にも遊佐周辺で撮影された鳥海山の写真が掲示してありました。

 

・遊佐~秋田

山形県最北の停車駅である遊佐を過ぎると、秋田県との県境部分に差し掛かります。

新潟県と山形県との県境区間同様、海岸沿いにしかまともな土地が無いため、再び海を眺めることが出来ます。

笹川流れ周辺に比べ海岸沿いギリギリを通る区間ではありませんが、高い所から海をながめることができます。

 

象潟駅を発車すると右側に景勝地である象潟を眺めることが出来ます。

象潟は江戸時代までは松島のように大小さまざまな島が浮かぶ景勝地でしたが、地震により土地が隆起し完全な陸地となりました。

現在は田んぼからかつての島がボコボコ出っ張っている珍しい光景が広がっています。

そんな光景も「いなほ」からは少しだけですが見ることが出来ます。

 

秋田県内はほぼほぼ海岸沿いを走っていますが、もう暗くなってしまったため景色はわかりませんでした。

18:30に終点秋田に到着しました。

 

 

総評

乗車時間: ★★★★

スピード感:★★★★

車窓:   ★★★★★

乗ってたのしい列車認定です。

最大の特徴はやはり景色が美しいことでしょう。

日本海が美しいことはもちろんですが、鳥海山や象潟、庄内平野や越後平野の田園風景など景色のバラエティに富んでいるところが素晴らしいです。

速度もそこそこ速く乗っていて非常に楽しかったです。

新潟から秋田を結ぶ列車は1日2往復しか運行されていませんが、日本海縦貫線を代表する在来線特急として末永く活躍してほしいものです。

お勧めの座席はAB席です。

車内チャイムはひたちチャイムが採用されています。

nosh(ナッシュ)