特急「いなほ」の概要
◆基本情報◆
- 運行区間:新潟~酒田・秋田
- 所要時間:3時間40分(新潟~秋田)
- 運行本数:7往復
- 使用車両:E653系
- 座席種類:自由席、指定席、グリーン席
- 車内設備:コンセント無し、Wi-Fi無し
- 車内販売:無し
特急「いなほ」は新潟から酒田・秋田を結ぶ特急列車です。
元々「いなほ」は上野から高崎線、上越線、信越本線、白新線、羽越本線経由で秋田を結ぶ特急列車でしたが、上越新幹線開業後は新潟が発着駅となっています。
ほぼ全区間日本海沿いを走っており、日本海縦貫線で最も長距離を走る特急列車となっています。
それゆえ風の被害を受けやすく、冬場は強風により運転が打ち切られることも珍しくありません。
特急「いなほ」の停車駅
※2024年3月現在
特急「いなほ」は7往復運行されていますが、そのうち秋田まで向かうのは2往復のみで、残りは酒田止まりとなっています。
停車駅は全列車統一されています。
特急「いなほ」の使用車両
▲E653系1000番台の基本カラー。
2014年から「いなほ」ではE653系1000番台が使用されています。
E653系は元々常磐線特急「フレッシュひたち」で使用されていた車両で、「いなほ」への転用にあたりカラーリングの変更や寒冷地対策、グリーン車の新設などの改造が行われました。
7両編成で1号車がグリーン車となっています。
1日1往復だけ特急「しらゆき」で使用されている1100番台が「いなほ」の運用を担当することがあります。
▲一面青色に塗られた「瑠璃色」塗装。このほか「ハマナス色」も存在します。
▲特急「しらゆき」で使用されている1100番台も「いなほ」に使用されることがあります。
特急「いなほ」の車内とお勧め座席
特急「いなほ」に使用されているE653系は一部の列車を除き、7両編成で運行されています。
JR東日本の特急列車では珍しく、2026年現在も自由席が設定されています。
海が見えるのはAB席となっており、CD席は基本逆光となるため席を選ぶならAB席一択でしょう。
・グリーン席【お勧め】
特急「いなほ」に乗るなら是非とも利用したいのがグリーン車です。
E653系には元々グリーン車が連結されていませんでしたが、「いなほ」への転用にあたりグリーン車が新設されました。
その際「どうせグリーン車を新設するならとびきり豪華なグリーン車を作ってしまおう」と、JR東日本の車両としては異例の2+1列のグリーン車となりました。
シートピッチは1820mmという驚異的な広さとなっており、これは普通車の2席分に相当します。
乗車定員は半減しましたが、快適性は倍増しました。
各座席には仕切りが設けられており、後ろの人を気にせずリクライニングも倒し放題ですが、仕切りのおかげで若干足を伸ばしづらいのが玉に瑕です。
しかし最前列のグリーン席をは事情が異なります。
この席だけはとてつもなくシートピッチが広くなっており、壁に設置されているテーブルはもはやお飾り状態となっており、下手すればグランクラスよりも広いかもしれません。
しかし、最前列シートはデッキの真後ろにあるためか暖房の効きが非常に悪く、他の座席に比べて異様に寒いです。冬に乗車する場合は注意が必要です。
グリーン車両にはだれでも使用できるフリースペースが用意されており、恐らくフレッシュひたち時代からあったものと思われます。
・普通席(指定席、自由席)
普通座席の様子。デッキと扉を仕切る扉が1枚ガラスになっているのが特徴的です。
座席はリクライニング、座席のスライドそれぞれにボタンが設けられた少し古いタイプのリクライニングシートです。
元々自由席主体の特急列車であった「フレッシュひたち」に使用されていた名残で、座席にはチケットホルダーが設置されています。
特急「いなほ」景色と見所紹介(新潟~秋田)
・新潟~村上【広大な越後平野を疾走】
新潟駅を出発すると、新潟市の都会的な風景を見ながら高架線を下りていきます。
新潟から隣の東新津までは広大な新潟貨物ターミナルの敷地が広がっており、大都市新潟の物流の拠点であることが伺えます。
新潟から新発田までは白新線を走ります。羽越本線の起点は新津となっているため新潟を経由しませんが、白新線は新潟と新発田をショートカットする路線として建設されました。
日本海縦貫線を走る貨物列車は羽越本線経由で運行される一方、特急列車は大都市新潟を経由する白新線ルートで運行されるのが一般的です。
白新線は新潟県を代表する主要ルートであるため、線路の規格は主要幹線並となっており、特急「いなほ」は110km/h~120km/hの速度で駆け抜けていきます。
豊栄辺りまでは新潟近郊の住宅地という雰囲気が強いですが、豊栄から先は景色が一気に開け広大な越後平野を走るようになります。
新発田からは羽越本線に入線します。羽越本線は新津から秋田を結ぶ路線で、日本海縦貫線の一翼を担う路線です。特急「いなほ」はここから羽越本線を走破する形で秋田を目指します。
羽越本線に入線してからも村上までは越後平野に敷かれた直線的な線路を走るため、特急「いなほ」は速度を落とすことなく進んでいきます。
新潟を出発して50分ほどで新潟県最北の主要駅である村上に到着します。
・村上~あつみ温泉【羽越本線屈指の絶景区間"笹川流れ"を堪能】
新潟から50分ほどで新潟県最北の都市、村上に到着します。
村上駅は越後平野の北限ともいえる場所に位置しており、ここから羽越本線は海岸線沿いの険しい地形を縫うようにして山形県を目指します。
その前に見どころの一つとして、村上駅を過ぎると電線に流れる電気の流れ方が変わるデッドセクションを通過します。
村上より南は直流電気、北は交流電気が流れておりその境目となっているのがデッドセクションです。
デッドセクション通過時は一時的に電気の供給がストップし、室内灯や空調の電源は切られます。
E653系は交直流電化区間に対応した車両であるためデッドセクションを越えることができ、少し古い車両であるためデッドセクション通過時に室内灯が消える光景を見ることができます。
この区間を走る羽越本線の普通列車は全て気動車で運行されているため、特急「いなほ」でなければデッドセクションの体験をすることはできません。
このデッドセクションを越えるといよいよ日本海の際を走るようになります。
新潟県と山形県の県境は急峻な山地となっており、羽越本線は仕方なく海岸線を通っているような区間です。
村上から小波渡付近まで約60kmに渡り海岸線を走り続け、いくつかのトンネルをくぐりつつも基本的にずっと海を眺め続けることができます。
ここまで長時間海を眺められる路線もそう多くはありません。
▲「いなほ」から眺める日本海。奥に見える島は栗島。
そんな中特に絶景と言われているのが桑川から今川の間にある「笹川流れ」と呼ばれる景勝地です。
日本海の激しい波によって浸食された奇岩が無数に転がっており、「いなほ」の車内からも堪能することが出来ます。
海だけでなく沿線の民家に目を向けると、瓦や壁の色が黒っぽいのが特徴的です。
これは日本海沿岸の強風や雪、塩害から家を守るために黒い塗料が使用されているようです。
府屋周辺になると羽越本線は海岸線より少し高い所を走るため、高い所から海を見下ろせるようになります。
このあたりの「いなほ」のスピードは決して速くありませんが、並走している国道7号線に比べると羽越本線の方が線形が良いため、自動車に完敗しているとは思えません。
羽越本線も開業以降、所々線路の付け替えが行われており、トンネルの外側に廃線跡らしき空き地が見受けられる所が多々あります。
東北三関の一つである鼠ヶ関を越えると、羽越本線は山形県に入ります。
・あつみ温泉~遊佐【米どころ庄内平野と名峰”月山”と"鳥海山"を望む】
あつみ温泉駅を発車した後、小波渡を通過すると羽越本線は内陸部に進むため海はしばらくお預けとなります。
ちょっとした山を越えて周囲の景色が開けると、庄内平野の中を走ります。
庄内平野は山形県の日本海側に広がる広大な平野で、越後平野同様日本有数の米どころとして知られており、平野には広大な田んぼが広がっています。
庄内平野からは美しい山を見ることができるのも特徴で、進行方向の右側には出羽三山の一つとして古来より信仰の対象とされてきた月山、左側には庄内平野のシンボルである鳥海山が見えてきます。
羽前大山の手前から大きくカーブして東側に向かうと、鶴岡に停車します。
鶴岡は庄内藩の拠点であった鶴岡城の城下町として発展した街で、現在も庄内地方一の人口を誇る都市です。
駅のすぐ裏手には巨大な農業用倉庫が何棟も建っており、米どころ庄内の力強うさを感じられます。
陸羽西線が分岐する余目から酒田の区間は、元々陸羽西線として開業した区間で、庄内平野で最も古い鉄道路線の一部となっています。
なぜ主要幹線の羽越本線より、陸羽西線が先に開業したかと言えば、最上川水運の代替として建設されたためです。
最上川は山形県中を経由した後日本海にそそぐ川で、その河口に作られた酒田の港は山形県内中の荷物と北前船で運ばれた荷物が集積する一大物流拠点として栄華を極めました。
明治時代以降近代化を進めていくうえで、山形県や庄内平野の経済成長のためには。最上川水運を鉄道に置き換えることが急務とされ庄内地方でいち早く陸羽西線の建設が進められました。
北余目を通過すると羽越本線は最上川を渡ります。最上川橋梁は今から110年前ほどに架けられた古い橋で、特に開業時に架けられた上り線の橋梁には、レンガ造りの橋脚が現在も残っています。
2005年に最上川を渡る直前に突風にあおられ車両が脱線・転覆するという大事故が発生しました。
死者も発生する大惨事となりましたが、乗務員にも対処のしようが無かった不慮の事故とされていますが、二度と同じ事項が起きないよう最上川を渡る周辺の線路には頑丈な防風柵が取り付けられています。
余目から酒田の区間で唯一路線開通時に開業した駅である砂越には、重厚な鉄製の柱が使われている跨線橋があります。
駅周辺には農業用倉庫と思われる巨大な建物が何棟か建っており、歴史を感じさせる光景が残っています。
砂越を通過して西側に大きくカーブすると酒田に到着します。
酒田は羽越本線屈指の主要駅であり、大半の特急「いなほ」は当駅を発着駅としています。
酒田市は北前船の寄港地であり、最上川の河口に設けられた酒田港を中心に発展した商業の街で、江戸時代には「西の堺、東の酒田」と呼ばれるほど賑わっていたようです。
豪商として名を馳せた本間家が収集した美術品や庭園を見学できる本間美術館や、木造の米蔵が何棟も並ぶ山居倉庫が市内の観光地として有名です。
酒田を過ぎたあたりから右手に雄大な鳥海山を見ることが出来ます。
特に綺麗に見えるのは遊佐あたりで、車内にも遊佐周辺で撮影された鳥海山の写真が掲示してありました。
・遊佐~秋田【陸の松島"象潟"を過ぎて終点秋田へ】
山形県最北の停車駅である遊佐を過ぎると、秋田県との県境部分に差し掛かります。
新潟県と山形県との県境区間同様、海岸沿いにしかまともな土地が無いため、再び海を眺めることが出来ます。
笹川流れ周辺に比べ海岸沿いギリギリを通る区間ではありませんが、高い所から海をながめることができます。
象潟駅を発車すると右側に景勝地である象潟を眺めることが出来ます。
象潟は江戸時代までは松島のように大小さまざまな島が浮かぶ景勝地でしたが、地震により土地が隆起し完全な陸地となりました。
現在は田んぼからかつての島がボコボコ出っ張っている珍しい光景が広がっています。
そんな光景も「いなほ」からは少しだけですが見ることが出来ます。
秋田県内はほぼほぼ海岸沿いを走っていますが、もう暗くなってしまったため景色はわかりませんでした。
18:30に終点秋田に到着しました。
車窓の動画はこちらから↓
総評
乗車時間: ★★★★
スピード感:★★★★
車窓: ★★★★★
非常に乗り応えがあり、乗ってて面白いと燃える列車でした。
日本海が美しいことはもちろんですが、月山に鳥海山や象潟、庄内平野や越後平野の田園風景など景色のバラエティに富んでいるところが素晴らしいです。
速度もそこそこ速く乗っていて非常に楽しかったです。
新潟から秋田を結ぶ列車は1日2往復しか運行されていませんが、日本海縦貫線を代表する在来線特急として末永く活躍してほしいものです。








































