乳がん症例数日本一 がん研有明病院 乳房再建外科医のブログ -3ページ目

北海道乳房再建研究会に参加しました

皆様お久しぶりです。

なかなか更新ができず、早数ヶ月、、、

 

本日は北海道で行われた乳房再建研究会に参加してきました。

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北海道の大御所の先生方が一堂に会する勉強会です。

 

コーディネーターは北海道大学 形成外科教授の山本有平先生で、北海道の乳房再建事情について面白い発表がありました。

 

他都道府県に比べて北海道の再建件数の伸び率が異常に多いと。

 

関東近郊でも100-150%程度なのですが、前年度比で北海道のみ300%。

今後の伸びしろを予感させます。



乳腺外科からは釧路総合病院の飯村先生、旭川医大から北田先生、そして形成外科からは北海道大学の舟山先生、がんセンターの齋藤先生、道都病院からは江副先生、そして師匠である矢島先生が発表をされていました。


一部コーディネーターに師匠の師匠である蘇春堂形成外科の野平久仁彦先生が務められておりました。


先生方がそれぞれ乳房再建の基本的な手技や注意点についてのプレゼンを行い、最後にケースレポートとして、がん研有明病院の症例を提示し、ディスカッションをしてきました。

 

今後の北海道の乳房再建は必ず広く認知され、もっと多くの人が望む様になると思います。

 

その役割の一端を担えれば幸いです。

 

今月末にがん研有明に勉強に来られる斗南病院の川田先生ともご挨拶させていただきました。

当日はオペレーターを担当するので、頑張ります。

 

再建後に悩む患者さんがいるという事実

かなり久しぶりのブログになってしまいました。
完全に努力不足です。

3月下旬より4月の学会のシンポジウム準備に追われ、終わったと思いきや教育用の手術動画の作成、教科書作成、その他国内外への出張と中々手が回らず今日に至ってしまいました。。。
そうです、言い訳です汗

とまぁ毎日手術に明け暮れているのですが、当科では全身麻酔の自科手術枠が週に10枠あります。まさに月曜日から金曜日まで一日二件ずつ、、、そのほとんどが乳房再建。
月曜日は自家組織再建に使うので一日枠で手術をしています。
形成外科の手術枠だけで週10件、1年で50週として一日一件長い手術だけの日もあるので大体自科手術で年間全身麻酔で400件程度。これは医療者だと分かると思いますが結構な数です💧


さらに形成外科は他科の手術のお手伝いをするいわば

「外科医のための外科」

なので、他科の先生が腫瘍を取った後に創部が閉じないとなると、突然呼ばれて近くの組織から傷を閉じるために皮弁を挙げたり、創閉鎖の一助になる手術を加えるんです。そのため1年間にこの倍くらい800例以上の全身麻酔の手術をやってるんですね。。。

昨日は一日で9件の再建手術を担当しヘロヘロ、、、最後は外科の患者さんが臀部組織の広範切除で閉創できないということで臀筋皮弁を用いた被覆を行ったのですが、腫瘍切除が大変で、呼ばれたのは何と24時、、、それから一時間半程度で我々の担当を終え、さらにその後外科の先生方は仕上げの手術に向かうのであります。本当御苦労様です。
先に帰って申し訳ありません。終わるの朝方なんだろうなー、、、


とまぁ本題はここから。
先日他院からの要請で、修正困難症例のお手伝いに行ってきました。

とある有名クリニックで再建された患者さん、、、しかしこれ以上の修正はできないとのことで路頭に迷うところだったのですが、とある先生を頼って手術にこぎつけたと。
そのとある先生は当院の勉強会にも参加したことのある先生で、あまりに難しい症例のためお手伝いに来て欲しいと自分に声がかかりました。

患者さんにお会いしたところ、とても気さくな明るい方でした。色々お話をしていくと、下着が着けられなくて困ってます、温泉にも行きたいです、と少しずつその方の再建のマイナス面が見えてきました。
診察の中で、人工物には限界があること、下垂の程度は健康な側ほどできない、左右の差が少し出るかもしれない、と説明していくと、うんうんと一生懸命聞いてくれてます。
自分もそれに応えて、すごく大変なので時間がかかるんです。普段の僕の手術は三時間くらいかけて形を整えるので、と説明すると何時間かかっても満足できる形にしたい、と本音が聞けたのでトコトンまで手術に拘ってやらせてもらいました。

術中は主治医の先生と話し合いながら、メインは自分にさせてもらい、これ以上の修正はできないと思えるところまでやりきり、最後の閉創まで担当させてもらいました。ご配慮頂きありがとうございます。

終わったあと、自分は新幹線の時間もあったので早々に帰ったのですが、患者さんから預かっていたというお土産とお手紙を頂きました。

内容は、
「どうにもならないとずっと悩んでいましたが、この日を迎えられた事に感謝しております」との事でした。

自分はやはり考えさせられるものがありました。
再建というポジティブな内容の手術にも関わらず、その結果如何によってはさらなる悩みを生み出してしまうんだと。
先日コメントを頂いた方も、再建したタイミングや方法で、思っていたゴールと違う結果になってしまったという内容がありました。

乳房再建は患者さんの納得ありきの手術であり、これは美容手術に近い部分でもあります。
毎日のルーチンワークになっている乳房再建ですが、改めて患者さんの声はもちろんのこと、その奥にある本音を引き出せる医療を行わないと、もしかしたら自分も患者さんに悩みを与えてしまっている側になるんじゃないかと改めて考えさせられました。

現在当院では当院の乳腺外科医が手術した患者さんしか担当しないという原則があり、それでも10カ月待ちという状況です。

しかし全国にはこのような患者さんがたくさんいるんだろうなぁ、、、と考えると、いつかその様に悩んでいる方が手術できる場所を作れたらいいなぁと思いました。

乳房再建研究所を設立された武石明精先生も単一施設ではなく、ニーズがある施設で手術をされていると聞きましたが、まさに今後はその様なドクターが求められていくのだと思います。
保険診療をやっているドクターはなかなか派手な広告を打たないので認知されにくいですが、武石先生のような活動は一つの光になるのかもしれませんね。





温存にするか、全摘にするかの相談

乳がんの診断をされた患者さんが、われわれ形成外科医に乳房再建相談に来る場合、以下のパターンがあります。


1.全摘しか選択肢がないと言われたが再建可能だから相談したい。

2.温存でも全摘でもどちらでもいい。全摘なら再建可能だから相談したい。

3.ステージがすすんでいて、全摘と同時に再建はできない。しかし抗ガン剤治療や放射線治療が終わったら再建できると聞いたので相談したい。


患者さんが一番悩まれるのは2のパターン。
温存と全摘どちらにしようかと。

つい先日職場のスタッフから相談を受けました。
母が乳がんになったので相談させて頂きたいと。
温存がいいのか、全摘がいいのか決めて下さいと言われた様子。


切除する範囲が大きすぎると温存とは言っても変形が高度になります。

温存と言われて受けた手術。
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果たしてこの結果を満足して受け入れられるのでしょうか?


温存にはたくさんのメリットがありますが、無理やり温存するとこのように変形してしまいます。
これは全摘+再建の方が良い結果になったであろう症例ですね。

しかし人工物を用いる場合のデメリットもあるため、そこを理解して方法は検討すべきですね。